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学校 3

 なんの感情も読めない表情を浮かべて前をじーっと見ているリーリヤにだけ聞こえる声で話しかける。

「お前あいつに何を言ったんだ?」

「……昨日、彼が参考書に挟んで買った本のタイトル……」


 鬼か! へたすりゃ一生物のトラウマだぞ。


「……そんな事より荒川裕樹……これにハンコ……」


 そういうとリーリヤが何かの書類を手渡してきた。


「? これって婚姻届!?」

「ええええええええええええええー」


 またもやクラスメイト全員の声がハモった。


「荒川。今日俺は人を殺したいと思う奴の気持ちがはっきり理解できたよ」


 来栖が両手にありったけの文房具を装備していた。


「どういうこと? どういうこと?」


 くるみが俺のシャツをやたら引っ張りながら昨日と同じ台詞を繰り返す。


 ボキャブラリの少ない奴だ。


「学級崩壊? これが学級崩壊なの!?」

 違うと思うぞ先生。


 しかしなんだこれ? 

 リーリヤの持ってきた婚姻届は必要事項が全て記載してあって後は俺のハンコだけになってるって、どんだけ準備してんだよ。

 つーか、リーリヤ字きたねえな。

 妻のところなんてりーりやって平仮名になってるし。


 いやそういう問題じゃない。


「ちょっと来い!」


 俺はリーリヤの手を掴んで教室を飛び出した。


 あれ? これ昨日と同じ台詞だな。

 どうやら俺もボキャブラリが少ないらしい。


 そして昨日ぶりの屋上。

 すっかり常連になってしまった。


「リーリヤ。おまえSVRの人間か?」

「……そう」


「やっぱり。じゃお前もフィアと同じで俺をロシア人にして取り込もうって作戦か?」

「……それは裏の目的」


「裏?」

「……あくまでも表向きは私が一目ぼれした設定」


「本人目の前にして設定とか言うなよ!」

 一目惚れの設定ねえ。


 しかし記載済みの婚姻届を常備してるとか重いどころか怖えーよ。

 設定を練り直せ。


「やっぱりそう言う事だったのね」


 屋上に出るドアの影からフィアが出てきた。


「でも残念。荒川裕樹とは私が結婚することで話がついてるの」

 何時つけた!


「……趣味わるいのね」

「はあ? 私だって任務じゃなかったらこんなカスなんて真っ平よ。あんたこそ趣味悪いんじゃないの!?」

「……私だって吐き気がするくらい嫌」


「ちょっと待て! いくらなんでもひどくね!? なんで結婚を迫られている俺のほうがそこまで罵倒されなきゃならないの!?」


「うるさい、黙れカス!」

「……豚は死ね」


 俺がなにをしたって言うんだ。

 ひどい、ひどすぎる。

 軽く死にたくなっている俺をよそ目に二人の言い争いが続いている。

 内容は相変わらず俺の奪い合いと俺のけなしあい。


「……なあ。そんなに俺と結婚するのが嫌なら止めたらいいだけじゃねえか?」


 二人が同時に俺をすげえきつい目で睨み付けてきた。


「こっちにだって事情があるのよ! 黙っててクズ!」

「……豚は死ね」


 もう止めて! 

 俺のライフはゼロよ!


「これ以上言い争っても無駄のようね。それじゃどっちが獲物をしとめるか実力で勝負よ!」

「……負けない」


「ちょっと待て。俺の意思は? 俺はどっちとも結婚するつもりなんてないぞ?」


 俺の意見など完全に無視してフィアとリーリヤはとさっさと教室に戻っていってしまった。


「……なんで俺、こんな目にあってるんだろう」

「私のせいじゃないことは確かね!」


「最初から最後までお前のせいだよ!!」


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