学校 2
授業中なので誰もいない屋上。
ここなら話を盗み聞きされる心配も無い。
「お前CIAだな?」
すげー不服そうな顔をしているフィアに問いただす。
「そうよ」
「どういうつもりだ? もう手を出すなと警告したはずだぞ?」
「知らないわよ。私はあんたと結婚するようにって任務を受けただけだもん」
「任務で結婚って…… おかしいと思わないのか?」
「任務だから仕方ないじゃない! 私だってあんたみたいなサルとなんか死ぬほどイヤよ! ……あ、今のはナシで」
いやナシでって……
まあいいけどさ。
「お前の上司、オリバーか?」
「お前じゃなくてフィア! 一応日本に入ってからはオリバー支部長の指揮下に入ってるわよ」
「オリバーと連絡取れるか?」
「……ちょっと待って」
そういうとフィアはスマホを取り出して操作し始めた。
「腕時計型の通信機とかじゃないんだ」
「映画の見すぎ。時計になんて話しかけてたら一気に怪しまれるわよ。……はい」
フィアからスマホを受け取る。
『もしもし?』
「オリバー! てめえどういうつもりだ!?」
『そこの声は荒川様。なにか御用ですか?』
「だからどういうつもりなんだよ? 手を出すなっていったよな?」
『だから手なんて出していませんよ。むしろ荒川様に手を出していただきたい次第でして』
「うまく言ったつもりかよ!?」
『実際悪い話ではないでしょう? バーンズ捜査官は見ての通りかなりの美人さんですよ?』
「なにを企んでいる?」
『いやね回収不能ならいっその事、荒川様をこちら側に抱きこんでしまえ、という事になりまして。という訳でバーンズ捜査官と結婚してアメリカ人になってください』
「あほか! そんな政略結婚みたいな真似が出来るか! しかも当のフィアも嫌がってるじゃないか」
『そんなはずは? この任務にはバーンズ捜査官が自ら志願したと聞いていますよ』
横目でフィアを見る。
心此処にあらずって感じでぼーっと校庭を見つめていた。
「とにかく迷惑なんだよ」
『いいじゃないですか。綺麗な女の子が結婚を迫ってくるなんて、普通ありませんよ? それではバーンズ捜査官をひとつよろしくお願いします』
そういうとオリバーは一方的に通話を切りやがった。
「話は終わり?」
「終わってないけど切りやがった」
フィアにスマホを返す。
「なあフィア。いくら任務だからって好きでもない奴と結婚するなんておかしいだろ?」
「任務のためなら命を投げ出す事もあるのよ? それに比べたらこんな任務楽勝よ」
「そうは言ってもなー そもそも俺、結婚する気なんて全く無いぞ?」
「だったら私に惚れなさい」
「どんな命令だよ……つうかさっきイヤって言ってたよな? それなのになんで志願なんかしたんだ?」
「ナシでって言ったでしょ?」
「そんな都合よく忘れられるか!」
「別に良いでしょ理由なんて! とにかく私と結婚させる。どんな手を使ってもね。覚悟しておきなさい!」
そう言ってフィアは教室に帰っていった。
「……まさかこういう方向で話がややこしくなるとは思ってなかったな……」
「よっ! 鬼畜変態結婚詐欺師!」
「だまってろ悪役」
次の日、事態はもっと悪化した。
「えーと、何故か今日も転校生がいます。それじゃ入ってきてー」
またもや教室がざわめく。
入ってきたのはかなり小柄な女の子。
腰くらいまではありそうな綺麗な銀の髪を二つに束ねている。
そして透き通るような白い肌に綺麗なグレーの瞳。
「この子はロシアから来たリーリヤ・カルナウフさん。……ていうか何で私のクラスにばっかりくるの?…… あっ、自己紹介してね」
「……リーリヤ・カルナウフ……よろしくです……」
この子も日本語うめえな。
てか、このパターンってもしかしなくてもあれだよな?
「……おい荒川。お前まさかあの天使にも手を出してねーよな?」
「俺がいつ誰に手を出した! とりあえずシャーペンを逆手に持つのは止めろ」
「それじゃリーリヤさんの席なんだけど……」
「……おかまいなく」
そう言うとリーリヤは真っ直ぐ俺に向かって進んでくる。
そして今度は左横の男子に向かって言った。
「……そこ私の席」
「今度は俺?! 一番後ろが空いてるじゃないか」
するとリーリヤが男子の耳元で何かを囁いた。
「! なんで知ってるの!?」
「……企業秘密……この席は誰の物?」
「リーリヤさんのです! いやーうっかりしてた。俺の席は一番後ろだったよ。すぐに移動するねー」
主の突然の引越しで空席になった椅子にリーリヤがゆっくりと座った。




