学校 1
あれから一週間がたった。
未だに電池は届かず。
とは言えCIAもSVRもあの後からは全く姿を見せなくなったのでそれなりに平穏な日々を過ごしている。
ただ胸についたカラータイマーもどきを見られると厄介なので、部活を休部しているのが不満といえば不満か。
まあ、あそこはサッカー部という名の陸上部なので実のところそこまで残念ではない。
「荒川。今日こそナンパにいこうぜ」
「だから行きたければ一人で行けよ」
「なんでだよ!? お前も彼女欲しいだろ? ! もしかしてお前そっち系なのか!?」
「違う」
「あ、そういえば今日、転校生が来るらしいぞ」
「へー、こんな時期に珍しいな」
ちなみに今は6月下旬。
転校生が来るには中途半端な気がする。
「女かな? 女かな?」
「たとえ女でもお前には何の関係も無いだろうけどな」
「……もしかして荒川、俺のこと嫌い?」
「別に嫌いじゃねえ。俺はただ事実を言ったまでだ」
「……ツンデレ?」
「辞書を引け!」
載っているかは知らんがな。
「皆―、席についてー」
担任の久遠えり先生が教室に入ってきた。
「早速だけど転校生を紹介します。それじゃ入ってきてー」
転校生が入ってきたとたん、教室中がどよめいた。
肩くらいまでの赤に近い茶色の髪を後ろで束ね、目は綺麗なマリンブルー。
薄い小麦色の健康そうな肌。
そして明らかに日本人ではないプロポーション。
「この子はアメリカから引っ越してきたフィアリス・バーンズさん。それじゃ自己紹介をお願いね」
「フィアリス・バーンズです。フィアと呼んでください」
おお日本語うめえ。
「おい荒川……」
来栖が小刻みに震えている。
「おれは天使を見つけてしまった……」
良かったな来栖。
だが残念、天使はお前とは違う世界にいるんだぞ。
「それじゃフィアさんの席は……」
「それは決まっています」
そういうとフィアは真っ直ぐ俺に向かってきて、右横の席に座っている男子にいきなりこう言った。
「どいてください」
「え? なんで?」
呆気にとられている男子を尻目に、フィアはスカートの中からいきなり拳銃を取り出して眉間に押し当てた。
「どけ」
「喜んで!」
哀れな主を失った椅子にフィアがふわりと座る。
そして俺のほうを向いてやたら無表情のまま言い放った。
「さて荒川裕樹。私と結婚しろ」
「えええええええええええええええええー」
クラスメイト全員の声が見事にハモる。
「死ね、荒川!」
来栖がマジで泣きながら俺の首を絞めてきやがった。
「どういうこと? どういうこと?」
くるみまで軽く錯乱しながら俺の頭をぽかぽか叩いてくる。
「え? え? どうしたら? まずは婚姻届? でも国際結婚だとなにか違うのかしら?」
先生、お前も落ち着け!
なんだこれ? 初対面のアメリカ人にいきなり求婚される覚えは全くないはず……
いや、あった……アメリカ人、不自然な転校、なんの脈絡も無いプロポーズ……どう考えてもあのクソオリバーの仕業に違いねえ!
「ちょっと来い!」
俺はフィアの手を掴んで教室から飛び出した。




