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第66話 復讐/ルナセール 後編

前回のあらすじ

ルナセールと交戦中

 

「ぐっ……」


 なんとか起き上がると、パラパラと破片が俺の身体から落ちていく。

 ルナセールの放った《エクスプロージョン》の影響で俺は吹き飛ばされ、周囲の建物も崩壊していた。

 もうもうと立ち込める土煙のせいで、ルナセールの姿が見当たらなかった。


「くそっ……街中であんな魔法使うなよ……」


 自分の事を棚に上げてそう毒づき、改めて周囲の状況を確認する。

 ルナセールの魔法に街の住人も巻き込まれたらしく、あちこちから悲鳴や助けを呼ぶ声、子供の泣き声などが聞こえてきていた。


 そんな状況にも関わらず、ルナセールが土煙の向こう側から姿を現した。

 ルナセールは一直線に俺に接近すると、星剣を無闇矢鱈に振り回してくる。

 それを俺は『スロウベル』で捌きつつ、ルナセールに言う。


「ルナセール! 俺達と何の関係も無い住人が巻き込まれたんだぞ! それが『勇者』のやる事か! 『勇者』は無辜の民の味方だろう!」

「貴様の勝手な『勇者』像を私に押し付けるな! それにお前を倒すためならば、街一つを犠牲にしても良いくらいだ! そうでなければ、メルシアとルナシアが浮かばれない!」

「……っ! お前はっ!」


 あまりにも自分勝手な物言いに、俺は激昂しかける。

 しかし何とか冷静さを取り戻し、至近距離から《サンダーボルト》を喰らわせて膝を着かせる。


「ぐっ……」

「終わりにするぞ、ルナセール。お前の人生も、俺の復讐も……」

「終わるのは貴様の方だ、エド!」


 ルナセールがそう言うと、星剣が眩く光輝く。

 この輝きは同じパーティーメンバーとして見てきたから分かる。この一撃だけは受けてはいけない。


 そう思った直後、ルナセールは星剣をおもいっきり振り上げる。

 その軌跡をなぞるように、一条の光の津波が直線状に空間を引き裂いた―――。




 ◇◇◇◇◇




「は、はは……ははは、はは、ははははははははははははははは……」


 星剣を振り切ったルナセールは、自然と笑い声が零れていた。


 無理も無い。

 今の一撃は、冒険者時代から勝負を決める時に使用していた、相手を消滅させるほどの威力を放つ、星剣に搭載されていた能力だった。


 この威力は使用者の魔力量に左右され、歴代『勇者』の中でも随一の魔力量を誇るルナセールのこの一撃もまた、歴代最高の威力を誇る。


 だからこそ、この一撃でエドを消し炭になるほどに消滅出来たと確信していた。

 威力としては申し分無く、実際に『魔神』であるエドでさえも一瞬で消滅するほどの威力だった。


 しかし……。


「ははははははははは……は?」


 ルナセールの笑い声が、困惑する声に変わる。

 今の星剣の一撃を受けて立っていた者はいない。


 それなのに――エドが、無傷で立っていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 流石の俺も、今のは肝が冷えた。

 しかし、ある物を犠牲にして防ぐ事は出来た。

 その物とは――『クライムシン』だった。


『クライムシン』の七つある形態の()()()にして最後の切り札。

 それが、『オリジナルシン』だった。形状は盾だ。


 この『オリジナルシン』は使ったら最後、『クライムシン』は跡形も無く消滅するとリアに教わっていた。

 だから存在は知っていても、実際に使うのは今回が最初で最後だった。


 そんな『オリジナルシン』の能力は、あらゆる攻撃を防御・無効化、そしてその攻撃を行ったモノの能力を未来永劫封じるといった、諸刃の剣的な能力だった。盾なのに剣とはこれ如何に……。


 実際、ルナセールの手に握られている星剣からは眩いほどの輝きは失われており、なまくらと化していた。

 それと、『クライムシン』が消滅した影響で、『マリード』での俺とルナセールの痛覚の共有化や、他の形態で与えていた影響なども強制的に解除されていた。


 俺が無傷だったのが予想外だったのだろう。

 ルナセールは見るからに狼狽していた。


「な……何故だ! 何故今の攻撃を受けて生きていられる!?」

「……種明かしをする気は無い」


 俺はそう答えつつ、魔法袋の中から仕込み杖を取り出し、刀身を露出させる。

 そして一息にルナセールに接近し、掬い上げるような形で剣を振り抜く。

 無防備なルナセールの身体から右腕が肩の辺りで切断され、くるくると弧を描いていく。


「な、あ……私の、私の腕がああああああああああああっ!!」


 遅れて痛みがやって来たらしく、ルナセールは右肩を押さえながら蹲る。

 肩を押さえる左手からは、止めどなく血が溢れている。


 そんなルナセールに向かって、俺は左手を向ける。


「……お前は楽には殺さない。《サンダーボルト》、《ファイアボール》」


 二つの魔法でルナセールの意識を刈り取り、傷口を焼く事で強制的に止血した。


 俺は仕込み杖を魔法袋の中に仕舞い、ルナセールの右腕の方へと向かう。戦利品として星剣は頂いて行く。何かに使えるかもしれないからだ。


 それからルナセールの身体を担ぎ、その場を後にした―――。




 ◇◇◇◇◇




 ドサッと、騎士団の詰所の前で物音がする。

 それに気付いた騎士が何人か外に出ると、そこには縄で縛られたルナセールが投げ捨ててあった。

 その縄には、一枚の紙が貼られていた。


『この者、カストールの街で起きていた連続殺人事件の犯人。厳正なる法の処罰を求む』


 そう書かれていた紙を読んだ騎士達は、ルナセールを詰所内に運び込み、上司に報告する。

 そしてその報せは、王城にも届いていた―――。






大罪があるのなら原罪も必要だろうと思い、出しました。

当初の設定では無かったんですけどねぇ……(遠い目)。




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