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第65話 復讐/ルナセール 中編

前回のあらすじ

ルナセールへの復讐開始

 

 俺は『魔神』となってから『イフの大迷宮』を出るまでの十年間で、何度も何度も瀕死の重傷に近い傷を負っていた。

 だからなのか、痛覚がとても鈍くなっていた。

 しかし今の場合、その特性がプラスに働いている。


 ルナセールが振るう星剣が俺の肌を浅く斬るが、痛みはほぼ無い。

 むしろそのダメージが、痛覚を共有化しているルナセール自身に反射している。


「ぐっ……!」

「どうしたルナセール! 『勇者』の名が泣くぞ!」


 挑発するようにそう言い、『ファーライド』でルナセールの右上腕部を傷付ける。

『ファーライド』本来の能力で痛みを永続的に与え、その痛みは同時に俺にも返ってくるが……それほど痛くはない。


「ぐっ……痛覚を共有化しているのなら、何故お前はそこまで動ける!?」

「ルナセールとは身体の作りが違うんだよ! 《サンダーボルト》!」


 俺の言葉は何の比喩でも無かった。

 しかし種明かしをする気は更々無く、ルナセールに雷撃を喰らわせる。

 防御が間に合わなかったルナセールは、そのままゴロゴロと地面を転がっていく。


 俺達が表通りで戦闘を始めてから、通りにいたヒト達は我先にとその場から逃げ去っていた。

 だから俺達の周囲には、人影が無い。


 ルナセールが起き上がるより前に、俺は『ファーライド』を『サタナス』へと変化させる。

 ……実はこの『サタナス』、リアが持っていた時は戦斧の形だったのだが、俺自身が使いづらいという理由で弓の形へと変えていた。


 そんな『サタナス』は弦の無い弓だが、弓としての機能も存在する。

 弦に当たる部分を引っ張り、そして離す。

 空気を圧縮して放たれた不可視の矢が、ルナセールの左肩に突き刺さる。

 その衝撃は俺の左肩にも返ってきている。


「ぐあっ……!」

「とっとと立てよ、ルナセール。簡単には死ぬなよ!」

「……ほざけええええええっ!!」


 ルナセールは怒りを隠そうともせずに、一直線に突っ込んでくる。

 俺は再び弦を引き、今度は左脇腹目掛けて放つ。


 不可視の矢は俺の狙い通りに突き刺さり、ルナセールの勢いが一瞬だけ落ちる。

 その隙を逃さず、俺は『サタナス』を『グラゼブブ』へと変化させる。


 そして俺の方からルナセールへと接近し、『グラゼブブ』の刃で左脇腹に追撃を加える。

 その際、手始めとしてルナセールから嗅覚を奪った。


「ぐっ……このぉ!!」


 ルナセールはそのまま星剣を横薙ぎに振るう。

 俺は防御が一瞬だけ遅れ、左脇腹を斬られる。

 その衝撃はルナセールにも伝わっているハズだが……ルナセールは攻撃を止めようとはしなかった。


「死ねぇ、エドオオオオオオ!!」


 ルナセールが振り下ろしてきた星剣を、『グラゼブブ』の柄の部分で受け流す。

 そして《ウインドブラスト》で強制的にお互いの距離を引き離す。


 俺は『グラゼブブ』を『スロウベル』へと変化させ、ルナセールを煽るように言う。


「どうした、ルナセール? 俺を殺すんだろう? もっと本気で掛かって来いよ」

「……っ! お前はあああああああああっ!!」


 俺の挑発に乗り、ルナセールは一直線に突っ込んでくる。

 そんなルナセール相手に《アイシクルパイル》を放ち、多少の足止めを試みる。


 しかし俺の予想通り、ルナセールは星剣を振って氷の杭を粉々に粉砕していた。

 それだけの時間が稼げれば十分だった。


 俺は近くの建物の屋根に飛び乗り、ルナセールを見下ろす。

 そして俺は、冒険者時代から愛用していた、()()レティシア姉さんですらも反則と宣った、切り札とも言うべき魔法を発動させる。


「《トールハンマー》!」


『スロウベル』を高々と掲げ、そう唱える。

 詠唱を言い終わるのと同時に、極太の稲妻がルナセールを直撃し、遅れて空気を引き裂くような破裂音が轟く。


 この魔法は雷属性の魔法で最上位に位置する魔法で、発動速度は全魔法中で一番、威力の方も十番以内に入る魔法だった。

 その分発動難易度も非常に高く、王国内でこの魔法を使えるのは俺一人だけだった。


 そんな魔法を受けてもなお、ルナセールはまだ辛うじて二本の足で立っていた。

 しかし度重なるダメージのせいか、フラフラと身体が揺れていた。


「く、そ……」

「まだ息があるのか、しぶといな……《トール――》」

「《エクスプロージョン》!!」


 二発目を叩き込んで止めを刺そうとしたその時、ルナセールが魔法を放ってきた。

 その魔法の発動には俺も度肝を抜かれた。


 俺はその場を離れようと全力で走ったが、遅かった。

 ルナセールの放った魔法が俺が立っていた場所に着弾し、盛大な爆発を巻き起こす。

 その爆発に巻き込まれ、俺は吹き飛ばされた―――。






主人公には雷属性の魔法を切り札にして欲しいという作者の癖。




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