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第63話 堕ちた『勇者』

前回のあらすじ

ギルフォードが一家心中を図った

 

 アイギス子爵の屋敷が燃え、家族全員と使用人の大多数が焼死体として発見されるというニュースが王国内を駆け巡る。

 そのニュースはカストールの街にも届いていたが、ルナセールはあまり関心を持たなかった。

 というのも、ルナセールはある使命感に駆られていたからだ。


 白昼堂々、路地裏で浮浪者を殺害したルナセールは、その足でこの街の領主が住む屋敷へと向かう。

 カストールの街は、ルナセールの伯父が領主を務めていた。

 だから顔パスで、領主の屋敷のがある敷地内へと足を踏み入れる事が可能だった。


 使用人の案内で、ルナセールは伯父がいる執務室へと向かう。

 そして数回ドアをノックした後、部屋の中へと入る。


「おお、ルナセールか。その……気の毒だった。メルシアとルナシアの事は……」

「いいのですよ、伯父上。私もようやく現実を受け止められるようになりましたから」

「そうか……それで、今日はいったい何の用だ?」

「ええ……伯父上には、死んで頂こうと思いまして」


 ルナセールはそう言うと、腰に提げた星剣を引き抜き一息で伯父との距離を詰める。

 そして彼の胸元に、星剣を深々と突き刺す。


「ご、はっ……! ルナセール、何を……」

「伯父上が悪いのですよ。私のメルシアとルナシアに手を出したのですから。貴方なのでしょう? メルシアの精神を崩壊させ、ルナシアを殺した主犯格は?」

「し……知らんぞ、私はそんな事……!」

「言い逃れですか? 見苦しいですよ、伯父上」

「妻と娘が死んで乱心したか、ルナセール!」

「二人に危害を加えたヒトが何を言ってるんですか?」

「本当に知ら……!」

「もういいですよ、伯父上」


 ルナセールは突き刺していた星剣を引き抜くと、流れるような動作で伯父の首をはねる。

 伯父は信じられないといった風に目を見開き、頭部がゴロゴロと床を転がっていく。

 栓を失った胴体の方も、赤い噴水を巻き上げながらドサリと床に倒れ込む。


 ルナセールは星剣を軽く振り、血を払う。

 それから執務室を後にし、屋敷にいる使用人達の口を封じるために一人一人丁寧に殺して回った―――。




 ◇◇◇◇◇




 ギルが一家心中という名の自殺をしてから一週間後。

 俺はカストールの街にたどり着いていた。

 街に着いて早々、街の雰囲気が何だか物々しい事に気付いた。

 その理由が分からず、俺は近くにあった屋台の店主に尋ねる。


「いらっしゃい」

「店主殿。街の雰囲気が何だか物々しい気がするのですが、何かあったのですか?」

「あったなんてもんじゃないよ。昨日、領主様が無惨に殺されたらしいんだよ。それで騎士団の連中が、犯人を探して回ってるのさ」

「そうですか……」


 店主の話を聞き、俺は笑いそうになるのを必死で堪える。

 ルナセールは俺の洗脳通り、この街の領主がメルシアをあんな目に遭わせたと思い込んだようだ。

 堕ちる所まで堕ちていっているようで嬉しい限りだ。


「犯人の特徴などは分からないんですか?」

「分かってないらしい。犯人は用心深かったのか、屋敷にいた使用人達全員も殺しちまったらしい」

「そんな凶悪犯が未だに捕まっていないとは……恐ろしい限りですね」

「ああ。だから騎士団の連中も、普段にも増して街の巡回を行っているんだ。一刻でも早く犯人を捕らえるためにな」

「なるほど。街の雰囲気が物々しかった理由はソレですか……貴重な意見、ありがとうございました」


 情報提供の礼代わりに屋台に並んでいた品物を幾つか購入した後、俺はリンが宿泊している宿屋へと向かった―――。




 ◇◇◇◇◇




「そうか……死者数は五十を超えるか」

「はい……ぅん……はぁ、はぁ……」

「領主殺しの犯人はやはりルナセールか?」

「はうっ! ……はい、そうで……あはんっ!」


 リンは口を開く度に、嬌声を上げる。

 その理由は――リンの身体は縄で緊縛され、痛覚が全て快楽に変わっていたからだった。


 これは完全に俺のミスだが、あの時からリンの痛覚が快楽に変わるのを元に戻していなかった。

 そしてリン自身もあの時の快楽が身体に刻まれてしまった結果、普通の事では快楽を得られない身体になっていた。


 だから再会早々、リンに頼まれて彼女の身体を縄できつく縛り上げてベッドの上に放置していた。身動ぎするだけでも縄が身体に食い込み、快楽に変わるのだろう。

 決して、俺の性癖などではない。


 そんな事(?)より……ルナセールは俺の想像以上に堕ちる所まで堕ちていっているようだ。

 ここまで大量に殺人をしていれば、稀代の大量殺人者として歴史に名を刻む事だろう。

『勇者』として歴史に名を残す事は、俺が許さない。


「……そろそろ仕上げといくか……」

「はぁはぁ……こ、これ以上の快楽を与えてくれるんんん! ……ですか? 望む所で……あああっ!」

「……どうしてこうなった?」


 被虐快楽者(マゾヒスト)全開のリンの言葉に、俺は何の比喩でも無く頭が痛くなってきた―――。






とうとう最後の一人であるルナセールに復讐を仕掛けます。




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