第60話 誕生
二日前に累計2万PV突破してました。やっぱり自作品最速記録。
前回のあらすじ
メルシアが死んだ
『聖女』メルシア様が亡くなってから二ヶ月後。
ある報せが届き、私は奥様がいる執務室へと向かう。
ケイトはメイドとしての経験は浅いものの、一日でも早く一人前になろうとしている努力が他人から見ても分かるのか、先輩メイド達に毎日のように指導され可愛がられていた。
妹を取られた気にもなる反面、ケイトがこの屋敷に馴染めている事をとても嬉しく思う。
コンコンと執務室のドアを軽くノックすると、中から返事が返ってくる。
それを受けてから中に入る。
一ヶ月半前の『聖女』様の葬儀に出席して帰って来てから、奥様の雰囲気は前と変わっていた。
具体的に何処が、と聞かれたら言葉にするのは難しいけど……なんとなく前よりも落ち着いた雰囲気が出ていた。
まるで少女から女性に変わったような、そんな落ち着き方だった。
「どうかしたの、ベル?」
「はい。デネブの街から報せが届きました。アイギス子爵に関する事です」
「……何? 聞かせろ、ベル」
いつものように奥様の仕事を手伝っていた旦那様がそう仰るので、私はデネブの街にいる師匠から届いた報せを伝える。
「アイギス子爵の奥様であるルイス様が、男女の双子をご出産なされたようです。予定日を少しズレた出産だったとか」
「それはおめでたいですね。後で出産祝いでも贈りましょう」
「それは良い案だとは思いますが……まだ続きがあるのです」
「何だ?」
旦那様がそう先を促してくる。
私も最初、師匠から届いたその報せが書かれた手紙を見て、自分の目を疑った。
それだけ信じられない情報だった。
「はい。双子の男児の方はアイギス子爵譲りの青髪なのですが……双子の女児の方が、両親とは似ても似つかない、燃え盛るような赤い髪を持って産まれてきたらしいのです」
◇◇◇◇◇
俺の賭けは半分当たり、半分外れた。
まさかそんな事態が起こるとは……現実は空想よりも奇なり、というヤツだ。
それだけ、ベルが言った内容は異常だった。
エンデも驚いているようで、ベルに聞き返していた。
「えっ? どういう事ですか?」
「それが私にも何とも……デネブの街にいる師匠からも、この異常事態を前にアイギス子爵邸もてんやわんやの大騒ぎらしいです。詳しい情報は今の所は……」
「そう……続報が届いたら教えて下さいね?」
「はい。では」
ベルは一礼すると、部屋から出て行った。
その後、エンデが俺に尋ねてくる。
「どう思いますか、クリスさん?」
「十中八九、その女児はグランの胤だろう。しかし……そんな事があり得るのか? 父親が違う双子なんて?」
「わたしに聞かれても……わたしもそんな事初耳ですし」
「そうか……」
予定は多少狂ったが、ギルに復讐するには今このタイミングしかないと思う。
騒ぎになっているこの時こそ、全ての罪をギルに擦り付けるチャンスでもあった。
それとルナセールの方もだ。
メルシアが死んでからというもの、昼夜問わず殺人を犯しているらしい。
騎士団にシッポを掴まれるのも時間の問題だ。
そうなる前に、ルナセールへも復讐を果たさなければならない。
「……エンデ。俺はこれからデネブの街に向かう」
「……分かりました」
「それとそのままカストールの街にも行って、ルナセールへの復讐も果たしてくる」
「……戻ってきますよね?」
エンデは不安そうな顔でそう尋ねてくる。
エンデとの関係も復讐のためだから、復讐が終わった後はそのまま姿を消すつもりだった。それをエンデも薄々は感じていたのだろう。
でも今では、エンデと共に人生を歩むのも悪くはないという気持ちも僅かながらに芽生えていた。
別れるか、それとも共に歩むか。
その答えを告げるためにも、一度ここに戻ってくる必要があった。
「……ああ。一度ここに戻ってくる」
「では帰りを待ってますね。なので必ず、生きて帰って来て下さい」
「その心配は無用だ。なんたって俺は『魔神』だぞ? 早々死ぬ事なんて無い。だが……その心遣いは感謝する」
「いってらっしゃいませ、クリスさん」
「ああ、行ってくる」
俺はそう言い、執務室を後にする。
向かう先は、ギルがいるデネブの街だ―――。
現実世界でも極稀に誕生するらしいですね、父親が違う双子。
男女の双子は二卵性でしか産まれないので、悪魔合体的に組み合わせてみました。
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