第56話 暗殺者組織の壊滅 中編
前回のあらすじ
暗殺者組織の拠点に乗り込んだ
「ケイト! 何処にいるの!?」
旦那様から離れ、私は妹の名前を呼びながら探す。
任務にでも行っていない限り、ここにいるハズだ。
とその時殺気を感じ、私はその場から飛び退く。
その一瞬後に、私がいた場所に短剣が突き刺さった。
私は短剣を構え、出所の方へと目を向ける。
するとそこには、黒髪の美女がいた。
「久しぶりね、ベル」
「師匠……」
黒髪の美女―アヤメさんは、私やケイトに暗殺術を教え込んだヒトだった。
その実力も高く、リーダーに次いで二番目の実力を有していた。
そしてそんな彼女に、私は一度も勝てた事が――無い。
ある意味では窮地に陥ってるけど、それを顔に出さずに師匠に尋ねる。
「……何故突然襲ってきたんですか?」
「師父からのお達しなのよ。ベルを見付けたら殺せってね」
師父というのは、リーダーの事だ。
それよりも、そんな命令が出てた事に驚きだった。
「何故そんな命令が?」
「ベルも知らないわけじゃないでしょう? 直談判した者はみんな消されるのよ」
「でも私は、直談判を取り下げました!」
「だけど直談判したという事実は残ってるわ。それが気に入らなかったんでしょうね、師父は」
「……」
あまりにも理不尽過ぎて、何の言葉も出なかった。
その、一瞬よりも短い刹那の間隙を縫って、師匠が私に接近してきた。
そして短剣が繰り出され、それを自分の短剣で受け止める。
「師匠!」
「せめてもの慈悲よ。ベルの師匠であるわたし自らの手で、ベルを殺してあげるわ! ありがたく思いなさい!」
「お断りします!」
師匠の短剣を弾き、一度距離を取る。
そして今度は私の方から攻撃を仕掛ける。
今までの私では敵わない相手と知りながら―――。
◇◇◇◇◇
目に見える範囲での敵を一掃した後、俺は古代都市の中心部へと足を進める。
辺りには、土の杭で磔にされたり、黒い蔦で曲がってはいけない方向に関節が曲がったり、身元や元の性別が判明出来ないほどに炭化した死体等、変わり果てた暗殺者達の姿があった。
すると物陰から、短剣が飛んできた。
それを『グラゼブブ』で無力化・吸収し短剣の出所を見やる。
そこから一人の暗殺者が出て来るが……その姿に見覚えがあった。
その暗殺者はアッシュブロンドの髪を肩口で綺麗に切り揃え、エメラルドのような瞳をしている。
機能性を極限まで追求したかのような黒い装束に身を包むその顔は、ベルに似ている……いや、そっくりだった。
唯一異なる点は、ベルよりやや目付きが鋭い事くらいか。
ベルそっくりの暗殺者の近接攻撃を受け止め、誰何する。
「お前はベル……じゃないな? いったい誰だ?」
「……っ!? ベルを知ってるの!?」
「知ってるも何も、ベルの雇い主だ」
「その雇い主が、どうしてこんな所にいるの!?」
「それよりも俺の質問が先だ。お前はいったい誰だ? ベルと関係があるのか?」
「……あたしはケイト。ベルの双子の妹よ」
なるほど、どうりで。
双子ならば、ベルとそっくりなのも納得がいく。
ベルがこの場にいない今、彼女の代わりにケイトと名乗った少女に対して説得を試みる。
「ケイト、と言ったか? 一つ提案だ。俺の下に来る気はあるか?」
「……ベルがいるのなら行きたいのは山々だけど……でも、あたしが勝手な事をするとベルの命は無いってリーダーに脅されてるから……」
「……なるほど」
つまりリーダーとやらは、ベルとケイトに、互いに片割れの命に危害を及ぼす可能性を示し、恐怖によって縛り上げているらしい。
大した外道っぷりだ。
「心配する必要は無い。俺は元々、ここの暗殺者組織を壊滅させるために来た」
「出来るの、貴方に?」
「出来る出来ないじゃない。やるんだよ。これは決定事項だ。俺がそう決めた」
「――それは困るな」
すると突然第三者の声が響き、俺は正体を確かめもせずに《サンダーボルト》を叩き込む。
だけど、手応えは無かった。
「いきなりな挨拶だな。それでも貴族に名を連ねる者なのか?」
声のする方に目をやると、茶色い髪をボブカットにした、中性的な見た目の人物がいた。
その人物からはルナセール達勇者パーティーのメンバーほどではないが、只者ではない雰囲気を肌で感じ取っていた。
恐らく、この人物が暗殺者組織のリーダーだろう。
「俺が貴族だろうとなかろうと、外道に情けを掛けるほど甘くは無い」
「外道、外道か……その外道を組織させたのは、他ならぬこの国の国王――」
「嘘だな。あの王は清廉潔白を体現したような方だ。お前達のような者を組織するわけがない」
リーダーの言葉を一蹴すると、面食らったように僅かに目を見開く。
「……まるで見てきたように言うのだな?」
「王のこれまでの行動を見ていれば分かる」
「なるほど……納得は出来ないが、理解はしよう。……それで、貴殿には大人しく引き返して欲しいのだがね?」
「引き返すとでも思っているのか?」
「最終勧告のつもりだったが……仕方ない。実力で排除させてもらう」
そう言った次の瞬間、リーダーは俺の目の前にいた。
そして短剣を俺の胸目掛けて繰り出してくるが……俺の方が速かった。
ケイトを軽く押し返し、『グラゼブブ』を『ファーライド』に変化させて片手で受け止める。
そして空いたもう片方の手で、リーダーの頭を鷲掴みする。
「《サンダーボルト》」
「がっ……!?」
身体に直接雷属性の魔法を撃ち込むが、流石に一撃じゃあ倒れなかった。
だから何度も撃ち込んだ。
そして十発目くらいで、ようやくリーダーは仰向けの形で地面へと倒れ込む。
そこですかさず、《バインド》でリーダーの四肢を拘束して、無力化した―――。
◇◇◇◇◇
「ハァ……ハァ……」
師匠と一旦距離を取り、呼吸を整える。
今の私は控えめに言っても満身創痍だった。
身体の至るところを斬り刻まれ、無事な部分は無い。
それでも何とか致命傷だけは免れてきたけど……それもいつまで続くか分からない。
「そろそろ終わりにしましょう、ベル。最後は苦しむ間も無く殺してあげるわ。それが師匠であるわたしからの、せめてもの慈悲よ」
そう言って師匠が、目にも止まらぬ速さで私に接近してくる。
ここまでか……と諦めかけた瞬間、信じられない事が起きた。
突然現れた影に横から飛び蹴りを喰らい、師匠はゴロゴロと転がっていく。
その影の正体があられもない姿のリーダーで、余計に私の頭が混乱する。
それに更に拍車を掛けるように、リーダーが現れた方向から旦那様とケイトが連れ立って姿を現した―――。
リーダーの様変わりはウス=異本案件か?
読者の皆様のご想像にお任せします。
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