第48話 復讐/メルシア 後編
前回のあらすじ
メルシアに復讐中
「んんんんんんーーーーーーっっっ!!!」
「ああああああああああああっっっ!!!」
爪を剥がれたルナシアは激しく身悶え、メルシアにはその痛みが伝わり大きな悲鳴を上げる。
「まだ一枚目だぞ。少しは我慢しろ」
俺はそう言い、ルナシアの右人差し指の爪も剥ぐ。
ルナシアは更に激しく身悶え、メルシアの悲鳴も大きくなる。
それから右手の残りの爪も剥いでいく。
五枚全部剥ぎ終わった後、ルナシアの右手の指先は真っ赤に染まっていた。
「い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……もう止めて、止めてよぉ……痛いのはイヤなのぉ……」
「何を言ってるんだ、メルシア。これからが本番だぞ?」
文字通り泣き声を言うメルシアに対してそう告げると、メルシアの顔は絶望に染まる。
……ああ、その表情が見たかった。
そう思いながら、ルナシアの肘を逆方向に折った―――。
◇◇◇◇◇
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して。
あたしの頭の中は、そんな思いでいっぱいだった。
どういう理屈か知らないけど、エドがルナシアを傷付ける度にあたしにもその痛みが伝わってくる。
骨を折られ、爪も剥がれ、短剣で斬り刻まれた感覚は鮮明に感じるにも関わらず、あたしの身体には両手が剣で床と縫い付けられている傷しかなかった。
そのチグハグな感覚に、頭がどうにかなりそうだった。
「《フルリペア》、《パーフェクトヒール》」
すると突然、エドがルナシアに二種類の回復を掛けた。
みるみる内にルナシアの変な方向に曲がった指や腕は元通りになり、両腕の斬り傷もキレイサッパリ無くなった。
《フルリペア》は骨折などの損傷や欠損を完全に回復させ、《パーフェクトヒール》はどんなに重傷でも傷一つ無く完璧に回復させる、高難度の回復魔法だった。
そんな魔法を発動した意図が分からず、首を傾げる。
「な、何で……?」
「何で? 分からないのか。繰り返しメルシアには地獄のような苦しみを味わってもらうためさ」
「や……止めて止めて止めて!! それだけは……ルナシアを傷付ける事だけはもう――」
「断る」
止めて、と言い切る前に、エドにキッパリと強い口調で拒絶されてしまった。
そしてエドは短剣を片手に、ルナシアに接近する。
ルナシアは助けを求めるような視線をあたしに向けてくるけど、今のあたしにはどうする事も出来ない。
すると左耳に鋭い痛みが走り、ベチャッという湿っぽい音が響く。
音のした方を見ると、そこには人間の耳が落ち、て……。
「っっっ!!!??? んんんんんんんんんんんんんんんんんんーーーーーーーーーっっっ!!! んんんーーー、んんんんんんーーーっっっ!!!」
ルナシアが今までよりも一際大きな声にならない悲鳴を上げる。
床に落ちた実物と、あたしの左耳に走る激痛から、ルナシアの左耳が斬り飛ばされた事をようやく理解する。
「ふむ……せっかくだ。母親に助けを求めたらどうだ?」
エドはそう言うと、ルナシアの猿ぐつわを外す。
「お母さん、助けて! 怖いの! 痛いの!! 苦しいの!!! ねえ、お母さあああああああああんっ!!!」
「ル、ルナシア……」
「娘がこう言ってるんだ、助けてやったらどうだ……ああ、助けられないか。そんな状態だとか言う以前に、望んで産んだ子供じゃないからな」
「ち、違っ……!」
「違わない。……ルナシア。キミは望まれて産まれてきたわけじゃない。メルシアは好きでもない男との子供を産んだんだ。流石にその子供が誰で、父親は誰だかくらい分かるよな?」
「ウソ……お母さん、お父さんの事が好きじゃないの……?」
そう問い掛けてくるルナシアに対して、あたしは何の答えも返せなかった。
だけどそれは悪手だった。
「ほら、メルシアは答えなかった。好きなら答えられたハズだ。という事はつまり……ルナシア、キミは産まれてきてはいけない子供だった」
「ち、違っ……!」
「違わない。ルナセールの事を欠片でも好きなら、愛していたのなら答えられたハズだ。……さっきも言った通り、キミがこんな非道い目に遭っているのはメルシアのせいだ。だから恨むのなら、自分を産んだ母親の事を恨みなよ?」
エドはルナシアに向かってそう言うと、自然な動作でルナシアの右手の親指以外の指を全て一気に折った。
ボキボキボキボキッという衝撃があたしの右手に伝わり、ルナシアは大きな悲鳴を上げる。
「いやあああああああああっ!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
「ほら。大事な大事な娘が泣き叫んでるぞ? 母親が助けなくていいのか?」
「ならこの剣を抜いてよ!」
「断る。それくらい自分でどうにかしろ」
そう言われ、あたしは自分でどうにかしようと試みる。
だけど少しどころか、ほんのちょっと動かすだけで、手全体に激しい痛みが駆け巡る。
とてもじゃないけど、自分だけではどうする事も出来ない。
「お……お願い、エド。この剣を引き抜いて」
「……誠意が見えないな」
「お……お願いします。この剣を引き抜いて下さい。どんな理由があろうと、ルナシアはあたしのたった一人の娘なんです。愛しているんです。だからどうか、助けさせて下さい」
床に手が縫い付けられているせいで、頭を下げても額がすぐに床に着いてしまった。
エドが無言だから恐る恐る顔を上げると、エドは汚物でも見るような眼差しであたしの事を見つめていた。
「たったそれだけの言葉で俺が止めるとでも思ったのか? 甘いな、甘過ぎる。せいぜい自力で剣が抜けるまで、娘の悲鳴と苦痛を感じている事だな」
「……っ! 止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて、本当に止めて!! あたしが悪かったのなら謝る……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
前腕に何度も刃が突き刺さる感覚が身体を駆け巡る。
それに合わせて、ルナシアも悲鳴を上げる。
それから何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度もエドはルナシアが死ぬ一歩手前で《フルリペア》と《パーフェクトヒール》を掛け、また傷付けていく。
そんな事が何度も繰り返された後、ルナシアは大粒の涙を流しながら、これまで一度も向けて来なかった、恨みの籠った視線をあたしに向けてくる。
「ゆ……許さない! 助けてくれないお母さんなんて、大っ嫌い! 絶対に許さないいいいぃぃぃぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
何度も傷付けられるルナシアの姿を何度も目の当たりにして、そしてルナシアの今の言葉がきっかけとなって、あたしの心は完全に折れた。
「ご……ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
何に対して謝っているのか自分でも理解しないまま、繰り返し繰り返し謝罪の言葉を口にする。
するとようやく、あたしの両手から剣が引き抜かれた。
顔を上げると、白髪の死神が昔みたいな笑顔であたしの目の前に立っていた。
「ようやく謝れたね。だから最後は一瞬で楽にしてあげるよ」
なんて優しいんだろう。
もうこんな苦しみを味わう必要が無いなんて……。
そう思った次の瞬間、首を斬られた感覚があった。
痛む手で確認するけど、首はちゃんと繋がっている。
それじゃあこの感覚は……。
その答えはすぐに分かった。
ゴロゴロと、ルナシアの頭があたしの目の前まで転がってきたからだ。
「あ、あああ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
それを見た瞬間、あたしの辛うじて保っていた精神はバラバラに崩壊した―――。
詳しい描写はしてないですけど、あの手この手でクリス/エドはルナシアを傷付けさせてます。
その辺りを描写すると運営様にBANされかねないので自主規制しました。
一例を挙げると、内臓掻き回しとか眼球を抉ったりとかですね。
まあその辺り、読者の皆さんのご想像にお任せします。
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