第45話 届け物
前回のあらすじ
クリス/エドがリアに感謝を述べた
魔物の群れの撃退から十日後。
ようやくメルシア達が乗っていた馬車の修理が終わったので、メルシア達はプロキオンの街を去ることとなった。
馬車の窓を開け、メルシアはエンデと別れの挨拶を交わしている。
「娘共々、お世話になったわね。感謝するわ」
「いえ、それほどでも」
「今度はこんな形じゃなくて、ちゃんとした形で訪れたいわ」
「その時を楽しみにしていますね」
エンデと挨拶を交わした後、メルシアは俺の方に目を向ける。
「また会えることを楽しみにしていますね」
「……ええ」
そう返事すると、メルシアが小さく手招きしていた。
警戒しつつ近付くと、メルシアがそっと耳打ちしてくる。
「……あたし達この街にしばらくいるから、もし来れたら来てね。出来ればエンデさんに気付かれないように」
そう言い、俺の胸ポケットに一枚の紙切れを忍ばせてきた。
これはチャンスか? と内心ほくそ笑みながら、俺も小声で返す。
「……分かりました。それっぽい理由を付けて会いに行きます」
「……待ってるわ。……出して頂戴」
メルシアが御者台の方にそう声を掛ける。
そしてメルシアとルナシアの母娘は、俺達の前から去って行った。
それを見送った後、俺はさっき渡された紙切れを取り出す。
「……? 何ですか、ソレ?」
「メルシア達の滞在先らしい」
エンデの質問にそう答えつつ、紙切れに目を落とす。
そこにはカストールという街の名前と、メルシア達の滞在する場所の大まかな地図が記されていた。
「でもどうしてソレをクリスさんに?」
「なんか俺と会いたいらしい。エンデに気付かれないようにとも言っていたな」
「……ソレ、わたしの前で言っても良かったんですか?」
「秘密にするとは一言も言ってないからな」
そう言うと、エンデは肩を竦める。
「はぁ〜……きっとメルシアさんは、わたしに言ってないと信じてますよ?」
「簡単に他人を信じる方が悪い。それにメルシアの行動は、世間一般からすれば褒められた行動じゃないと思うぞ?」
「でしょうね。妻のいる男性をお誘いしているんですからね。それも自身もご結婚されている身で」
「ああ」
だが逆にこれはチャンスでもあった。メルシアに復讐する、最大の。
だから俺は、この誘いにあえて乗ることにした。
「エンデ。俺はメルシアに会ってくる」
「それはいいですけど……昔の想いが再燃した、とかは無いようにしてくださいね?」
「それは無いな。メルシアへの愛情はもう、一欠片も残っちゃいない。それとベルも連れていく、いいな?」
「はい。……あ。ではこうしましょう」
そしてエンデから、ある提案がされる。
それなら俺がカストールの街に行く理由付けにもなるし、エンデの傍を離れる理由にもなっていた。
さらに言えば、ちゃんとした理由でメルシアと会うことの口実にもなっていた。
だからその提案を受け入れた―――。
◇◇◇◇◇
三日後。
俺とベルはカストールの街に着いていた。
プロキオンの街からは、二日ほどの時間が掛かるくらいに離れている。
カストールの街はポルックスの街のすぐ隣にある街で、川を挟んでいるだけの近距離にある。
だからか、街並みが似通っている部分が多い。
そんなカストールの街に、ルナセールが所有する別荘がある。
そこにメルシア達が滞在している。
ちなみに、カストールの街の領主はルナセールの親戚に当たる人物が務めている。
別荘に着き、馬車を降りて玄関のドアをノックする。
するとすぐに中から、メイドが姿を現した。
「はい。当屋敷に何かご用ですか?」
「メルシア殿はいらっしゃいますか? 忘れ物を届けに来たのです。直接渡したいのですが……」
「それはありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「クリス・フォン・モンテーロです」
「少々お待ちください」
そう言い、メイドは一旦俺の前から立ち去る。
エンデの提案。
それは、メルシアの忘れ物を届けると言ったモノだった。
これは嘘でも何でもなく、本当にメルシアはワンピースを数着忘れていっていた。
提案した当初は嘘の理由で、エンデがメルシアに渡そうと思っていたモノを届けるといったモノだった。
だけど後で客室の掃除をしていたメイドから、ワンピースが忘れられていたという報告があった。
だから予定を変更して、本当の理由でメルシアの下を訪れることになった。
閑話休題。
しばらく待っていると、さっきのメイドが戻ってきた。
「お待たせしました。奥様が応接室に通すようにとの仰せですので、案内させていただきます」
「ではお願いします」
そう答え、俺はメイドの後についていった―――。
そろそろ復讐のお時間です。
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




