第42話 緊急事態
前回のあらすじ
メルシアとルナシアが屋敷に滞在することに
メルシアとルナシアが屋敷に滞在するようになってから三日。
いつも通りエンデの仕事を手伝っていると、エミールが一人の女性を伴って執務室に入ってきた。
女性は走ってきたのか、肩で息をしている。
「……? エミール、どうかしたの? それにそちらの女性は?」
「彼女はこの街にある冒険者ギルド支部の受付嬢です。詳しい話は彼女からしてもらった方がいいでしょう。……落ち着きましたか? まだであれば私の方から説明しますが」
「……いえ、大丈夫です」
受付嬢はそう言うと、一歩前に出る。
「領主様に至急、お伝えしなければならないことがあります」
「聞きましょう」
「実は先程、冒険者の方々が魔物の大量発生の兆候を察知したのです。魔物の群れは真っ直ぐにプロキオンの街に向かってきています」
「……あとどれくらいでこの街にやって来るか分かりますか?」
「最短で一時間ほどと予測しています。それから、ギルドはすでに迎撃のための準備を始めています。動ける冒険者は総動員してはいますが……」
「戦力は多い方が良いというわけですね。分かりました。騎士団にはこちらから協力を要請しておきます。それと緊急時マニュアルに則り、全体の指揮はわたしが執ります」
「お願いします」
受付嬢は頭を下げると、足早に執務室を出て行った。
「エミール、聞いての通りよ。騎士団に協力を要請して」
「畏まりました。……すぐに動ける使用人を数人連れても?」
「許可します」
「ベルも連れていくといい。役に立つ」
「ありがたく。では」
エミールは恭しくお辞儀をすると、彼も執務室から出て行く。
それを見送り、エンデは立ち上がる。
「さて……忙しくなりますね」
「純粋な疑問なんだが……エンデは戦えるのか?」
そう尋ねると、エンデは胸を張りながら答える。
「これでも貴族に産まれたニンゲンですよ? 領民のために血を流せずにどうします? それにわたしも幼い頃剣を習っていたので、それなりに戦えますよ」
「なら俺は後衛に徹する」
「……クリスさんの過去からすればそれが普通では?」
「何かあれば前衛に切り替えるから、そのつもりでいてくれ」
「無視ですか……はい、分かりました。わたしは少し準備があるので、先に行っててください」
「分かった」
俺はそう言い、エンデと一旦別れる。
廊下に出るとすぐに、メルシアとばったりと出くわした。
「何だか騒がしいようだけど……何かあったの?」
「ええ。実は……」
そうして俺は、魔物の群れが街に向かってきていることを告げる。
それを聞き、俺は半ば予想はしていたメルシアの答えを彼女の口から告げられる。
「だったら、あたしも協力するわ」
「……失礼ながら、メルシア殿は回復魔法に長けているだけで、戦闘はそんなに得意ではないと聞きましたが?」
「だからこそよ。怪我人を治す役割のヒトも必要でしょ? 馬車を直してもらってるんだもの、少しくらいは恩を返させて。それに……あたしが戦闘が得意じゃないって何処情報?」
メルシアは『聖女』という異名のためか、世間的には戦闘はそんなに得意ではないというイメージが強い。
しかしそこは腐っても勇者パーティーの一人。
魔法の腕は俺には劣るものの、後衛として戦力の一人に数えられるくらいには戦闘力もきちんと持っている。
何なら、そこら辺の下手な魔法使いよりよっぽど魔法使いしている。
「……分かりました。客人にはゆっくりしていてもらいたかったのですが、そう言われては断れませんね。協力感謝します。エンデの方には後程私の方から伝えておきます」
「お願いね。……ルナシアは屋敷に置いていってもいい?」
「ええ。外より中の方が安全でしょうから」
「ありがとう」
そうお礼を言うと、メルシアは俺の前から去って行った―――。
◇◇◇◇◇
「……というわけだ。メルシア殿も協力してくれることになった」
「事情は分かりましたけど……」
それから三十分後。
魔物の群れがやって来ると予測されている街の南方に、俺とエンデは向かっていた。
エンデは鎧を身に着け、腰には長剣を提げている。
俺はあるギミックを搭載した、冒険者を始めてからずっと使っている、レティシア姉さんから贈ってもらった杖だけ装備していた。
ちなみにこの杖はルナセール達に殺された時には魔法袋の中にあったから、俺の手から離れた杖とは別物だった。
まあ姉さんからもらったこの杖も、姉さんが面白いという理由だけで俺に贈ってくれた物だったけど……今は姉さんに感謝の念しかない。
閑話休題。
エンデはそっと、俺に耳打ちしてくる。
「……くれぐれも、魔法の使用で正体がバレないように気を付けてくださいね? かつてのお仲間もいるんですから」
「分かっている。細心の注意を払うさ。……それとエンデに相談があるんだが、いいか?」
「いいですよ、任せます」
「そうか、任せる……って、詳しい内容を聞かないのか?」
思わずそう聞き返すと、エンデは肩を竦める。
「クリスさんはわたしと違って経験豊富ですからね。きっとクリスさんがやろうとしていることは間違ってないですし、素人のわたしが口出しすることでもないと思うので」
「それでも一応伝えておく。後衛職の全体指揮権は俺がもらう。いいよな?」
「はい、任せます」
そんなことを話している内に、南方の門が見えてきた―――。
魔物がいる世界なんだもの。
大量発生くらい起こるさ(偏見)。
ちょっとした雑談。
エンディングの構想はもうあって、今のところ二つのパターンがあります。
でも、マーーージでどっちのエンディングにするのか迷っています。
どっちでもある程度は納得出来る終わり方なので。
その辺り、エンディングに差し掛かるまでには決まってると思うので、どんなエンディングを迎えるのかお楽しみにしていただければ幸いです。
「待て。しかして希望せよ」ですよ、皆さん。
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




