第38話 独白:ルイス
前回のあらすじ
鎌を掛けた
カッコウ。
何故、クリスさんがその単語を知っているの!?
屋敷へと戻る私の頭の中は、そんな思いだけで一杯だった。
カッコウという単語は、私とネメラねえさんとの間でだけ通じる隠語のハズだった。
ねえさんがギルフォードさんと結婚した後もグランさんのことを好きだったことは私も知っていたし、一夜の過ちでバニラを妊娠したことも知っていた。
その時はまだ私はグランさんの愛人をしていたけど、今となってはねえさんがグランさんと過ちを犯した理由も理解出来る。同じ女として。
ギルフォードさんは確かに良い夫で心から愛しているけど、それだけだった。
男性として見たら、私はグランさんの方が良かった。恐らく、ねえさんも私と同意見だろう。
と言うのも、ギルフォードさんは夫婦の営みに関してはとても淡白だった。月に一度あれば良い方なくらいに。
反対に、グランさんは一度の逢瀬で最低でも三回はする。夜通しなんてのもザラだった。
グランさんが女として私を求めてきてくれていることを文字通り身体で感じていたから、女としての悦びを十二分に感じられ、心も身体も満たされていた。
だから、ねえさんが亡くなって計画通りにギルフォードさんの後妻に収まった後でも、度々理由を付けてグランさんとの逢瀬と身体を重ねていた。
それがいけなかったのか、明らかにギルフォードさんと営んでいない時期に初めての妊娠をした。
父親が誰かなのか言うまでもない。
ちなみに、今妊娠している子供はギルフォードさんと営んだ時期のであるとは思うけど、同時期にグランさんとも身体を重ねていたから父親がどちらかなのかは私でも分からない。
でも、グランさんの胤だろうなぁ……とは漠然と感じていた。
私は自分の不倫が露呈するのを恐れ、実家の手伝いをするという名目でギルフォードさんと距離を取った。
私の実家はアイギス家の別荘がある避暑地の管理人をしていて、私が実家に帰った時期は丁度閑散期だったから、人目につくことも無かった。
だからひっそりと出産までして――殺した。
我が子に情が湧かなかったと言えば嘘になるけど、産んだ子の父親が誰かなのかギルフォードさんに問い詰められる恐怖心の方が勝った。
だから産まれた直後の産湯で溺死させ、人目につかないであろう雑木林の奥の奥に穴を掘って埋めた。
両親にも共犯者になってもらったけど、口封じに大金を握らせたから口を割ることは無いだろう。
気付くと、いつの間にか屋敷まで戻ってきていた。
私はそのまま一直線に自分の部屋へと入り、ベッドの上に横向きで転がる。
ちなみに夫婦の部屋は別にある。
埋めたのに、誰にも見付からないように埋めたのに、クリスさんが見付けてしまった!
……いや、まだ確定したわけじゃない。
クリスさんは「人骨を見付けた」とは言ったけど、「乳児くらいの大きさの人骨」とは言わなかった。
だから、クリスさんが見付けた人骨が私の埋めた人骨と同じ可能性は肯定出来ないけど、同時に否定も出来ない。
問い詰めたら問い詰めたらで、何故人骨の事を知っているのかという話になってくる。
肉体関係でも結んで弱みを握ろうとも、今の私じゃあそれも出来ない。
「……ネメラねえさん、教えてよ。私はどうしたらいいの……?」
小声でポツリとそう呟くけど、その声に答えてくれるヒトはもうこの世には存在しない。
その時、ねえさんにはルミナさんという友人がいることを思い出した。
ルミナさんはすでに処刑されてこの世にはいないけれど、彼女の遺品はドーラさん達グランさんの側室だったヒト達が管理しているらしい。
そしてねえさんは生前、ルミナさんに自分の日記帳を託していた。
ルミナさんもグランさんとねえさんの関係を黙認していたから、ある意味共犯者なのだろう。
私もねえさんの死後、産まれたばかりの我が子を殺した後にルミナさんの下を訪れた事があった。
その時に日記帳を借り、独白に近い形でねえさんの日記帳にその事を書き記した。
そして今ドーラさん達の後見人として、クリスさんが収まっているらしい。
だからもしかしたら、ドーラさん達からクリスさんにねえさんの日記帳が渡った可能性も十分に考えられる。
そこまで考え、天は私に味方していると思った。
ここは海沿いの街。
漁業も盛んで、毒を持った魚もそれなりの頻度で獲れる。
その魚を捌いて食卓に出したとしても、事故として処理される。
だから……事故に見せ掛けて、口封じとしてクリスさんを毒殺する―――。
なかなかのクズっぷりになってると思います、ルイス。
作者が想像する悪女エキスを現段階でたっぷりと詰め込みました。
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クリス/エド相手に毒殺かぁ……(遠い目)。
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