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第33話 姉、襲来

前回のあらすじ

生誕パーティーに出席した

 

「さあ、話してもらうわよ、エド」


 足を組み、ソファーの肘掛けに肘を着いてそう問い掛けてくる姉さんは、とても一国の妃には見えなかった。

 その証拠に、隣に座るエンデは姉さんの態度に呆気に取られている。


 生誕パーティーの翌日。

 せっかくだから王都の観光でも、とエンデに連れ出されそうになったその時、レティシア姉さんが何の前触れもなくモンテーロ家のマナーハウスにやって来た。


 玄関先でばったり出くわしてしまった俺とエンデは、そのまま姉さんに連れられてリビングへとやって来る。

 そして姉さんがソファーに座り、視線だけで対面に座れと促されたので大人しくその指示に従う。弟は姉という強者に逆らえない存在なのだ。


 それで開口一番が、冒頭に当たる。


 回想終了。

 まだ言い逃れは出来ると思い、俺はすっとぼける。


「はて? 私の名はクリスですが。エドという名前では……」

「あたしが気付かないとでも思ってるの? 変な芝居は止めなさい。さもなくば……」

「さもなくば?」

「今この場で叩っ斬る」


 姉さんの目は完全に据わっていた。

 有言実行が姉さんのモットーだから、本当に斬られかねない。


 俺は溜め息を吐き、ソファーの背もたれに身体を預ける。


「はぁ〜……姉さんには敵わないな。そうだよ、()はエドだ」

「認めたわね。じゃあ、クリスなんて偽名を使ってるのは……」

「復讐のためだよ」


 それから俺は、勇者パーティーに裏切られてから今日までの出来事を包み隠さず姉さんに話した。

 それを聞いても、姉さんは顔色の一つも変えなかった。


「……とまあ、ここまでが今日までの出来事だけど……」

「ぷっ……ざまあ……」

「うん?」


 ……聞き間違いかなぁ? 今、「ざまあ」って言ったような……。


 まさかと思いつつ、俺は姉さんに聞き返す。


「姉さん。今、「ざまあ」って言わなかった?」

「言ったわよ? それが何?」

「聞き間違いであって欲しかったよ……」

「だってそうでしょ? メルシアとアンタはともかく、他の三人はあたしより弱いクセして、勇者パーティーだからって煽てられていい気になってるクソガキ共なんだもの。その内の一人が死んで、清々してるくらいよ」


 言い方はアレ過ぎるが、姉さんの言葉は間違いじゃなく、『剣聖』と呼ばれるくらいには剣術を極めていた。


 どれくらいの腕前なのかと言うと、たった一人でステラ王国所属の騎士団の精鋭の集まりである近衛師団を一方的に壊滅寸前までに追いやり、勇者パーティー全員で掛かっても勝てる確率はほぼゼロに等しかった。

 しかも剣一本だけでソレだ。


 反対に、魔法の腕はからっきしだった。

 俺とメルシアはともかくと言ったのは、ソレが理由だった。

 姉さんに魔法の腕が少しでもあったと思うと……ゾッとする。


 そんな姉さんの剣の腕と、容姿と、性格に一目惚れした義兄さんも義兄さんとしか言えなかった。

 仮にも一国の王―当時は王太子―が、一目惚れを理由に妻を娶るとか、俺でも聞いたことがなかった。


 それに姉さんも姉さんだった。

 まさかの返事が、「あたしに掠り傷の一つでも負わせられたら妻になってあげる」って言うんだから、当時の俺は何の比喩でもなく頭を抱えた。


 姉さんにボコされて終わり、という予想は良い意味で裏切られた。

 義兄さんは姉さんと互角以上に渡り合い、何度も傷を負わせられる場面があったにも関わらずそのチャンスを悉くフイにした。


 その理由を姉さんが尋ねると、「仮にも自分の妻となる女性に掠り傷の一つでも負わせたら男が廃る」と義兄さんは言ってのけた。……衆人環視の中で。


 その強さからまともな告白など受けたことは無かった姉さんは、その一言で堕ちた……らしい。

 それからあれよあれよという間に、二人は結婚した。


「それで? なんで僕の正体が分かったの? エドだってバレないようにしてたハズなんだけど?」

「アンタ昨日、リリーナを見て「とてもあたしの娘とは思えない」とか思ったんじゃないの?」

「否定はしないよ」

「いや、少しは否定しなさいよ。……まあ、それが理由ね」


 やっぱりカンの鋭さは相変わらずらしい。


「とりあえず僕の正体が分かった理由は分かったよ」

「どうせアンタのことだから、復讐が終わるまで黙っててって言うつもりでしょ? 分かってるわよ、誰にも言わないでおくわ」

「助かるよ」

「いいわよ、これくらい。あたしはエドのたった一人の姉なんだから」


 姉さんはそう言うと、ソファーから立ち上がる。


「それじゃああたしはこれでお暇するわね。……ああ、言い忘れるところだったわ。エンデさん。あの青いドレスとても似合っていたわよ。それじゃあね」


 姉さんは手をヒラヒラと振りながら、リビングから出て行った。

 まるで嵐のようだった―――。






それなりに愉快なキャラに仕上がってると思います、レティシア。




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