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第31話 埋葬

前回のあらすじ

人骨を見つけた

 

 骨を全て回収した後、一旦別荘へと戻る。

 そして夜明けと共に、この名も無き赤ん坊のための墓を作ってやる。


 別荘の裏手の隅の方の地面を掘り起こし、それなりの深さになったところで骨を埋める。

 そして土を被せ、そこら辺にあった大きな石を墓標変わりに立てる。


 すると、俺の背後から足音が聞こえてきた。

 振り向くと、そこにはエンデの姿があった。


「クリスさん。いったい何をなさっているのですか?」

「ああ。実はな……」


 それから俺は、夜の散歩での出来事を話す。

 それを聞き、エンデはショックを受けたような顔をする。


「では、そのお墓は……」

「ああ。あんな所に放置するのも忍びないからな。骨を出来る限り全て回収して、きちんと埋葬し直したところだ。流石に名前までは分からないから、無名の墓標だけどな」

「そうですか……」


 エンデはそう言うと、俺の隣にやって来る。

 そして両手を組み、目を閉じて名無しの赤ん坊の死後の安寧に祈りを捧げていた。

 俺も彼女に倣い、祈りを捧げる。


 しばらくして、祈りを捧げ終わったエンデがポツリと呟く。


「……クリスさんは優しいですね」

「優しい? 俺がか?」

「ええ。見ず知らずの方のためにお墓を立てるなんて、そうそう出来ることではないですから」

「俺は別に優しくはない。本当に優しかったら、俺は復讐しようだなんて考えない」

「クリスさんが自分でそう思っていても、わたしはクリスさんは優しいヒトだと思いますよ」

「認識の相違だな。だがエンデの考えは否定しない。エンデがそう思うのは自由だ」

「はい。勝手にそう思っておきますね」


 そう答えるエンデの笑みは、朝陽に照らされてる影響からなのか、とても輝いていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 ちょっとしたハプニングがありながらも、避暑地での休暇を終えた俺達はプロキオンの街へと戻ってきていた。

 それから程無くして、一通の手紙がエンデの下へと届く。


「ああ……もうそんな時期ですか」

「どうかしたか?」


 今日も今日とてエンデの仕事を手伝っていた俺がそう尋ねると、エンデは答える。


「もうすぐ王女殿下のお誕生日なんですよ。なので二週間後に、王城で王女殿下生誕パーティーを開くという招待状ですね」

「そうか」


 王女殿下―リリーナはレティシア姉さんの娘だから、俺から見れば姪に当たる。

 俺も一度だけ会ったことがある。と言っても、リリーナが産まれてすぐ後くらいだったから、あっちは俺のことは知らないが……。


「当然、クリスさんにも付いてきてもらいますからね?」

「……? それは当然だろう。俺は仮とは言え、エンデの夫なんだからな」

「それはそうですけど……レティシア王妃殿下とエド様はご姉弟だと言うのは有名ですから、その……」


 そういうことか。

 エンデはきっと、俺がレティシア姉さんと顔を合わせづらいと思っているのだろう。

 それは余計な心遣いだ。


「問題ない。姉さんが……王妃殿下が今の俺に気付くハズがない。いや……気付いたとしても、知らんぷりを決め込むさ」

「……姉弟仲はよろしくなかったので?」

「世間一般から見れば、姉弟仲は良い方だったと思うぞ?」

「では何故……」

「姉さんは呑気そうに見えて、カンは鋭いからな。俺が自分からエドだと名乗らない限り、俺に話を合わせてくれるさ」

「信用しているんですね、お姉さんのこと」

「ああ。世界でたった一人の俺の姉だからな」


 もう他人を信じないと決めている俺だけど、その中での唯一の例外はレティシア姉さんただ一人だけだ。

 血を分けた姉弟だけは、俺も信用出来ないと思うことが出来なかった。


 そんな姉さんの夫である義兄さんも、ほぼほぼ信用出来る。

 エンデは五分五分だ。共犯者という立場ではあるが、これからの俺の行いによって彼女が手の平を返すとも限らない。

 ベルは何時でも切り捨てられる駒だから対象外。


「では生誕パーティーに出席することに異議はないということで?」

「ああ」

「それではわたしとクリスさんで出席するという返事を送っておきますね」


 エンデはそう言い、引き出しの中から真新しい紙を取り出す。

 俺も自分の仕事に戻っていった―――。






たぶん次回、姉の登場です。




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