第30話 笑えない現実
前回のあらすじ
避暑地でギルと遭遇した
ギルの別荘は本当にすぐ近くで、五分も掛からない内に着いた。
別荘は大きく、モンテーロ家の別荘と同じくらいだった。
それに庭も、結構な広さを誇っている。
「大きいですね」
「そう? でも、数ある別荘の中でここが一番小さいんだ」
「そうなのですか?」
「うん。中でも一番大きいのは、ポルックスの街にある屋敷だね。デネブの街にある本邸に勝るとも劣らないくらいの大きさがある」
「ほう……」
十中八九、俺から奪った屋敷だ。
ポルックスの街は俺と姉さんの故郷であると同時に、あの事件が無ければ『イフの大迷宮』攻略後に俺が領主に就く予定だった街だ。
街の領主は基本的に貴族しかなれないが、多大な功績を挙げることで平民でもその地位に就くことが出来る。その時に爵位も貰う。
だから平民である勇者パーティーでも、数々の難関ダンジョンを踏破したという功績から、街の領主に就くことが出来ていた。
「それは少し気になりますね。是非とも一度は伺ってみたいモノです」
「機会があれば招待するよ。……さあ、どうぞ」
広い庭を通り抜け、ギルに招かれる形で屋敷の中へと足を踏み入れる。
中は綺麗に整備されており、調度品の類は最低限しかないが、そのどれもが一級品だった。
ギルは近くにいた使用人に声を掛け、お茶を持ってくるようお願いする。
そして俺とエンデは、応接室に案内された。
屋内だからか、それとも開け放たれた窓から入る風が原因だからか、外よりは涼しく感じられた。
俺達はソファーに並んで腰掛け、エンデは帽子を取ってふぅ……と息を吐く。
「やはり屋内は涼しいですね」
「外はそんなに暑かったか? なら無理をさせたな」
「いえいえ、そんな……楽しかったですし、無理はしてないですよ」
「そうか」
エンデから視線を切り、向かいに座るギルに目を向ける。
「ギルフォード殿は毎年こちらに来られるのですか?」
「そうだね。海水浴シーズンが始まる前に、ちょっとした休暇としてね」
「海水浴……ああ。デネブの街は海に面していましたね。やはり大勢の観光客で賑わうのですか?」
「そうだね。それに一年で一番の掻き入れ時だから、街全体が活気付くんだ」
「そうなのですか」
「もしよかったら、ボクの家が所有するプライベートビーチに招待するけど?」
「それは……」
「ええ、是非」
エンデの意見を聞こうとしたその時、エンデはやや食い気味に即答していた。
そのことに、俺はほんの少しだけ驚く。
「……即答過ぎないか?」
「せっかくご厚意で招待させていただいてるのに、それを受けないなんて失礼ですから。それに、『貰えるモノは貰っておけ』というのが我が家の家訓ですから」
「そうか……」
初めて聞いたが、エンデの目を見る限り本当のことのようだ。嘘を吐いている様子はない。
「それじゃあ後で招待状を送っておくよ」
「ええ。楽しみにしてます」
エンデがそう答えると同時に、ノックが響く。
使用人が入ってきて、俺達にお茶を配る。
それから、他愛もない話をした後、一時間くらいでギルの別荘を後にした―――。
◇◇◇◇◇
「…………………………」
その日は珍しく、寝付きが悪かった。
隣を見ると、エンデはすやすやとあどけない表情で眠っている。
そんな彼女を起こさないようにゆっくりとベッドから抜け出し、ラフな格好に着替えてから別荘を出て夜の散歩に向かう。
少し身体を動かせば、眠くはなるだろう。
幸いにも使用人の誰にも見つからずに、裏口から外に出ることが出来た。
そして俺は、昼間ギルが話していた雑木林に向かってみることにした。
その時、ルイスがピクッと身体を揺らしていたが……きっと気のせいだろう。
この辺りは魔物が棲息していないから、こうして夜の散歩に興じることが出来ていた。
流石の俺も、魔物が棲息していたら夜の散歩なんてしない。
しばらく歩くと、件の雑木林が見えた。
そこに躊躇無く足を踏み入れる。
ヒト一人分くらい通れる道はあるが、整備はされていない。
どんどんと奥へと進み、目の前に分かれ道が現れる。
俺は迷うことなく、道端が狭くなっている方の道を選ぶ。
こういう時は、寄り道かもしれない方の道を選べば、意外な発見があると相場は決まっている。
そしてその予想は当たっていた。
「……? 何だ?」
何かに躓き、俺は地面に目を向ける。
地面からは、白い石か何かの表面が顔を出していた。
それにしては、丸みを帯びているような……。
俺はまさかなと思いつつ、その白い石を掘り返す。
そして俺の予想は当たっていた。それも悪い方向に。
「これは……マジかよ……」
白い石だと思っていたモノは、白骨化したヒトの頭蓋骨だった。
しかもまだ小さい、乳幼児くらいの大きさしかない。
俺はさらに掘り起こし、背骨や肋骨、骨盤などのヒトの骨を掘り出す。
そしてそれらを大まかに並べ、全容を把握する。
『魔神』の力を得た俺だけども、コレは流石に笑えなかった。
人骨は大きさからして、生後間もない赤ん坊のモノだった―――。
やっぱり人骨は雑木林の中で見つけないと(偏見)。
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