第28話 処刑
前回のあらすじ
処刑人がやって来た
そして五日後、ルミナの処刑の日当日。
広場には大勢の人だかりが出来ていた。
そしてその中央には処刑台とギロチンが設置されていた。
俺とエンデは立ち会い人として、処刑台の脇に控えていた。
すると、俺の視界の隅にギルと彼の妻のルイスの姿を捉えた。
俺はエンデに一言離れることを告げ、二人に近付く。
「ギルフォード殿。それにルイス夫人も。今日が如何なさいましたか?」
「うん? ああ……クリスさんか。いや何、ルミナさんが処刑されると聞いてね」
「今でも信じられませんよ。ルミナさんがグランさんを殺すだなんて……」
「何でも、ちょっとした口論からカッとなって殺害してしまったらしいんですよ」
「……それ、本当?」
ギルが聞き返してくるので、俺は頷く。
「はい。実際に本人がそう供述してましたから」
「いくらグランでも、素人に簡単に殺されるとは思えないけど……」
「最愛の妻に殺されるなんて、本人であっても予想出来ないことでは?」
「それもそうか」
ギルが納得したように頷いたと同時に、広場のざわめきが水を打ったようにシン……と静まり返る。
処刑台の方を見ると、シャルルがちょうど登場したところだった。
「ではギルフォード殿。私は失礼します」
「うん、それじゃあ」
そう言葉を交わし、俺はエンデの下へと戻る。
処刑台の上では、他の二人の処刑人に連れられたルミナが姿を現す。
ルミナは質素なドレスを着せられ、手首には手錠が嵌められている。
シャルルは民衆の方を向き、ルミナの罪を告発していく。
「これからルミナ・ダールの処刑を執り行う。被告は自身の夫でもありベガの街の領主でもあったグラン・ダール子爵を殺害するという罪を犯した。領主殺しは重罪に値し、また伴侶殺しも重罪の対象となる。よって被告には、国王陛下から直々に死刑を言い渡された。この判決に異義を唱える者は?」
民衆に向かってそう尋ねるが、誰一人として手を挙げなかった。ギルやルイスであってもだ。
異義を唱えるには、その判決を覆せるだけの証拠を集めなければならない。
感情論で異義を唱えたところで、「なら確かな証拠を出せ」と言われ一蹴される。
そしてこの場には、その判決を覆せる証拠を持っている者は――いる。
だけど異義を唱える気はさらさら無い。
せいぜいスケープゴートとして大勢の目を欺いてくれとしか思わない。
「……無いようだな。それではこれより刑の執行に移る」
「い……イヤ。イヤイヤイヤイヤイヤイヤ……死にたくない。死にたくないの……」
ルミナは涙を流し抵抗するが、処刑人二人に無理矢理ギロチン台に固定される。
首を拘束され、ルミナの命を絶つ刃が徐々に上がっていく。
それが頂点に達したその時、俺は隠し持っていた『スロウベル』のもう一つの能力を発動させて、ルミナの書き換えた記憶を取り除いて本来の記憶に戻してやる。
それに気付いたらしいルミナはビクッと身体を揺らすと、首を限界まで動かして俺の方を見てくる。
「あな――」
「執行」
ルミナが何か言う前に、ギロチンの刃が落とされる。
そしてザシュッという音と、ゴトンという重々しい音が処刑台から響き渡る。
死人に口無しとは、こういうことだ―――。
◇◇◇◇◇
ギロチン台に首を拘束されたその時、私の脳内に突然記憶が溢れ出す。
それは走馬灯ではなく、何故今まで思い出せていなかったのか不思議なくらい、忘れるハズもない記憶だった。
あの日。
私は誰かに襲われて意識を失った。
そして次に目覚めた時、目の前には白髪の男性――クリスさんが私の四肢を押さえつける形で現れていた。
犯される、と思ったけど、そうはならなかった。
「ルミナ。お前には俺の身代わりになってもらう」
そう告げられると、私の意識は再び闇の中に沈んだ。
その後に目覚めた時にはもう、私の手には血塗れの剣と、目の前に広がるグランの変わり果てた姿しかなかった。
その時何で、私はグランを自分が殺してしまったと思ったのだろう?
理由は一つしかない。
クリスさんが私の記憶に何か小細工を施したに違いない。
首を限界まで動かして、処刑台の脇に目を向ける。
するとそこには、不敵そうに口角を吊り上げている白髪の悪魔の姿がそこにあった。
記憶が戻った理由はどうだっていい。
今は彼を糾弾したい気持ちで一杯だった。
「あな――」
「執行」
だけど、ザシュッという音が響いたと思った次の瞬間、ゴトンと鈍い音が響く。
……あれ? 何で私、ギロチんだいをみあげてるの? それにあのあたまのないくび、いったいだれの……。
そこでわたしのいしきはえいえんにとだえた―――。
人間首を切断されても、極短時間であれば意識が残っているとか(頭に残っている血液とかの関係で)。
なので最後の方のルミナの台詞は、別に変換ミスとかじゃないです。
意識が遠退いていく様子を文章的に表現しただけです。
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