第27話 死神部隊
前回のあらすじ
グランを殺してルミナに全ての罪を押し付けた
『勇者パーティーの一員、『戦神』グラン・ダール子爵殺害。
犯人は正妻のルミナ夫人か』
そんな衝撃的なニュースが、王国内に駆け巡る。
突然の出来事に、グランとルミナの不仲を噂する者や、陰謀論を語る者まで出てきた。
そんな世間の喧騒を無視するかのように、クリスはいつも通りの生活を送っていた―――。
◇◇◇◇◇
「む……これは……」
「……? どうした?」
グラン殺害から一週間後。
ある書類に目を通していたエンデが難しい顔をしている。
それが気になり、俺は思わず尋ねていた。
ちなみに、エンデはグランを殺したのが俺だということを知っている。
知っていながら、誰にも話していない。
「ルミナ夫人が逮捕されたことはすでに知っていますよね?」
「ああ」
「領主殺害、しかもそれが自身の伴侶ともなれば、裁判することもなく即有罪確定なんですよ。事が事なので、処刑は免れませんね」
「そうか。気の毒だな」
「……」
どの口が、とでも言いたげな微妙な表情をエンデは浮かべる。
俺はそれをあえて無視し、先を促す。
「それが、エンデが読んでいた書類と何の関係が?」
「王都から、『グリムリーパー』が来るんですよ。ルミナさんの処刑を、この街で行うために」
『グリムリーパー』という名前は聞いたことがある。
凶悪犯罪者を処刑するためだけに結成された組織、それが『グリムリーパー』だ。
その性質から、『死神部隊』なんて呼ばれることもある。
「『グリムリーパー』が来ることは分かった。だが、何故ルミナの処刑をこの街で行う? ベガの街でいいんじゃないのか?」
「あの街には今、領主がいませんから。処刑は領主の立ち会いの下でしか行えない決まりがあるので、ベガの街に一番近いこの街が選ばれたんですよ」
「そうか。領主がいないのも困り事だな。まあ、ルミナ自身が殺してしまったからな。仕方ない部分でもあるか」
「……そういう事にしておきましょうね」
グランを殺した張本人が何を言っているんだろう? と、エンデは何とも言えないすごく微妙な表情を浮かべる。
「それで……『グリムリーパー』はいつ頃来るんだ?」
「一週間後の予定ですね。ルミナさんの処刑は、彼らがこの街に到着してから一週間以内に実行されるかと」
「なるほど……」
「それとおそらく、処刑を見に他の街からヒトが大勢来ることが予想されますから、警備計画も今から練らないと……」
「大変そうだな」
「ええ、本当に。何処かの誰かさんのせいですかね?」
エンデは意味ありげな視線を俺に向けてくるが、俺はすっとぼける。
「それはルミナのせいだろう。……それと、例の件、問題はないか?」
「はい。わたしも異存は今のところ無いですね」
「それじゃあ今の形で進める」
「そちらはクリスさんにお任せします」
「ああ」
そう返事し、俺は俺の、エンデはエンデの仕事を再開した―――。
◇◇◇◇◇
それから一週間後。
予定通り、『グリムリーパー』がプロキオンの街にやって来た。人数は三人。
その中のリーダーが、この街の領主であるエンデに挨拶にやって来た。
「お初にお目に掛かります。私はシャルル・アンリーソン。今回の処刑を任された処刑執行人です」
シャルルは黒髪黒目の若い男で、黒いロングコートを羽織っている。
十人中十人に、死神みたいだという印象を与える見た目だった。
「遠路はるばるようこそお越しくださいました。わたしがプロキオンの街の領主、エンデ・フォン・モンテーロです。そしてこちらにいるのが……」
「エンデの夫のクリスです。以後お見知りおきを」
「これは丁寧にどうも。……それで早速で申し訳ないのですが、処刑についての話をしても?」
「はい」
「では……今回処刑を執り行うルミナ・ダールですが、処刑執行は五日後を予定しております。それに合わせて、広場に処刑台を設置したいのですが……人手をお借りしても?」
「ええ。後程、我が家が懇意にしている大工を紹介します」
「助かります。それで当日ですが、エンデ伯爵には立ち会いをお願いいたします。クリスさんはご自由にどうぞ」
「せっかくなので、私も立ち会わせていただきます」
「ではそのように。……話は以上ですね」
「では大工を紹介しますね。……ベル。案内は任せたわ」
「はい。……それではどうぞこちらに」
ずっと部屋の隅に待機していたベルが、シャルルを案内する。
シャルルは俺達に一礼してから、部屋を出て行った―――。
やっぱり処刑人は黒づくめじゃないと(偏見)。
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