第24話 実行
前回のあらすじ
グランを殺そう
シェリアクの街にある、ダール家の別荘。
そこにはグランと、彼の正妻であるルミナの姿があった。
二人は王家が主催の晩餐会に出席する予定だった。
その道中、別荘のあるこの街で一晩泊まることになっていた。
「それにしても……まさかドーラ達が旅先で亡くなるとは……」
「不幸としか思えないな。こんな形で亡くすとは、とても哀しく思う」
二人の耳には、ドーラ達側室の四人は旅行先に向かう途中、馬車が魔物に襲われて亡くなったという情報が届いていた。
その証拠を示すように、四人が着ていた血塗れとなったドレスの切れ端が遺品として現場に残っていた。
これらは当然、クリスが行った偽装工作ではあるが……それをこの二人が知るよしはない。
そしてグランは口から言うほど、四人の死を哀しんではいない。
興味を失った側室達のことなど、グランにとっては心の底からどうでもいいことだったからだ。
対するルミナも、四人の死を悼む気持ちはあるが、それはストレスの捌け口が無くなったことに対してだった。
つまり、ある意味では似た者夫婦であった。
「ドーラ達のことは仕方ない。オレ達はオレ達でやることがある」
「そうですね」
二人のやることとは即ち、二人の子供である息子のユージンを、まだ幼い王女殿下の許嫁候補に名を連なせることだった。
今回の晩餐会に出席するのも、王家の関係者との繋がりを作り、少しでも王家に近付くことが目的だった。
この計画は二人が……と言うより、グラン、ギルフォード、そしてルナセールの三人が画策した、王国を乗っ取る壮大な計画だった。
本来はルナセールが王家との繋がりを作る役割であったが、三人の中で唯一第一子が男児であったグランが代わりを担うことになった。
そして、自らの子供が王女殿下と婚姻を交わした後には、不幸な事故に見せかけて王家のニンゲンを根絶やしにし、自分達が国のトップになることを最終目標としていた。
今でも散発的に、王家の関係者の暗殺などは行っていた。
その時に障害となる人物が一人いた。それがエドだった。
彼自身に王家との直接的な関わりはない。
しかし彼の姉が現国王の正妻として嫁いでいるので、彼女を通じて王家側に付くことを確信に近い予想をしていた。
ちなみに件の王女殿下は、エドの姉の娘に当たる。
だから十年前のあの時、本当の理由付きでエドを不幸な事故に見せかけて殺害した。
ダンジョンで冒険者が命を落とすことは日常茶飯事、しかもそれが『イフの大迷宮』ともあれば、グラン達に疑いの目を向ける者は誰一人いなかった。
当時、エドと恋仲の関係であったメルシアでさえもだ。
エドを首尾良く排除したグラン達三人は、計画を進めることにした。
進行状況はまだ序盤だが、今の所順調そのものだった。
そして三人は知らない。
その計画を破滅に追いやる、色彩を失った白い復讐者が地獄の底から蘇っていたことに―――。
◇◇◇◇◇
月明かりも、星明かりもない、本当の暗闇が支配する夜。
人知れず、命が次々と刈り取られていく。
風が凪いだのかと錯覚するほどに自然で、そう思った時にはすでに命を落としている。
そうして、ダール家の別荘の警備を行っていた守衛は一人残らず、文字通り無力化される。
その屍の中央に立っていたのは、黒いローブのフードを目深に被ったクリスだった―――。
◇◇◇◇◇
今日が新月の夜で、しかも曇りで良かった。
これだけの自然の暗闇なら、俺の顔を見られることは無い。
まあ、用心に用心を重ねて、黒いローブを着てはいたが……。
あの後、ファリナ達からルナセール達三人が行おうとしている、王国乗っ取り計画を聞かされた時は驚いた。
まさか冗談だと思っていたことを本当に実行するとは思っていなかった。
しかも、最終的には王家のニンゲンは全て抹殺するらしい。
その中には王家に嫁いだ俺の姉、レティシア姉さんも含まれている。
俺は姉さんが結婚後に一度だけ、姉さんと国王陛下―俺から見れば血縁上は義理の兄に当たるヒト―と会ったことがある。
陛下……義兄さんは温厚なヒトで、そして優しかった。
このヒトになら姉さんを任せられると本気で思ったし、だからこそ二人の幸せを心の底から願っていた。
その二人を……さらに言えば、二人との間に産まれた、俺から見れば姪に当たる王女殿下をも物理的に排除するらしい。
殿下はしばらくは生かされるらしいが、最終的には殺される。
それを聞かされた時、俺はある決心をした。
勇者パーティー全員を殺すことが俺の復讐で、目標だ。
それと同時に、姉さん達の家族に害を成そうとする人物は何人たりとも生かしては置けない。それがたとえ勇者パーティーであろうとも。
だから俺は、自身の復讐と、姉さん達の幸せの為に――勇者パーティーを、潰す―――。
復讐の始まりだ!
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