第22話 下準備Ⅰ
前回のあらすじ
横転した馬車の中にファリナ達がいた
もみくちゃになっているファリナ達を馬車から一人ずつ救出し、どうしてこんな所にいたのか事情聴取する。
フレディとパンジーには、横転した馬車を元に戻し、異常がないかの確認をしてもらっていた。
「クリスさん。助けていただき、誠にありがとうございます」
「いえ、それほどでも。……それで、ファリナ夫人達はどうしてこんな所に? ここはモンテーロ家の領内のハズですが?」
「私達はドーラさん達と小旅行に向かう途中だったんです」
「側室方だけでですか?」
「それはあたしが説明しよう」
すると、ドーラが俺とファリナの会話に割って入ってくる。
「クリス殿も知っての通り、あたしらはグランの妻だ。身内話になってしまうけど、妻同士はあまり仲が良くないとはよく言われている。だけど本当は、本妻であるルミナがファリナに事あるごとに嫌がらせを仕掛けていて、あたし達にも従わないとファリナと同じ目に合わせると脅迫を受けているんだ」
「なのでたまに、小旅行中の自分達の身の回りの世話役という体で私を連れ出してくれているんですよ。私の気分転換も兼ねて」
「ファリナはあたし達の中で一番若い妻だからな。妹のように可愛がりたい気持ちもある」
ドーラがそう言うと、レイラとミーナも彼女に同意するように頷く。
側室達の間では、確かな絆が育まれているようだ。
「それなのにルミナは、自分が正妻だからとその立場を振りかざして傍若無人に振る舞っている。あたしもそろそろ堪忍袋の緒が切れる」
「グラン殿はルミナ殿を宥めたりしないのですか?」
「アイツはそんなことはしないさ。妻達の間で起きている事は全て放任するヤツなんだよ。それにルミナとの間にも子供もいるからな」
「なるほど……」
「可能なら、わたし達の手でグランさんとルミナさんを亡き者にしたいけど……」
「十中八九、わたくし達が真っ先に疑われてしまいますものね……」
レイラとミーナがそう愚痴を零したのを、俺は聞き逃さなかった。
これは利用出来るかもしれない。
そう思いつつ、これから話をする内容は部外者には聞かせられないから人払いが必要になる。
だからフレディとパンジーの二人を、理由を付けてこの場から退けさせる。
「フレディ、パンジー。馬車の方はどうだ?」
「車体自体はほとんど無事ですけど、車輪と車軸がダメになってますね。走行は無理かと」
「そうか……なら、エンデ達の所に戻って二人を呼んできてくれ。ファリナ夫人達を街まで送るとも伝えておいてくれ。あまり急がなくて構わない」
「分かりました」
「では」
そう言うと、二人共エンデとベルがいる方へと戻って行った。
二人の姿が見えなくなったのを確認し、俺はファリナ達の方に向き直る。
「ありがとうございます。私達を街まで送って下さるよう手配してくれて」
「いえ、それほどでも。……それで、先程の話、私にも一枚噛ませていただきたい」
「……? 先程……?」
「グラン殿とルミナ夫人を亡き者にするという話です」
俺がそう言うと、ファリナ達はビクッと肩を大きく揺らす。
「クリスさん……貴方、ご自身が何を仰っているか理解していて?」
「ええ。理解していますよ」
ここがグランへの復讐が成功するかどうかの分水嶺だと判断し、俺は魔法袋の中から万能兵装『クライムシン』を取り出す。
そして形状を槍―色槍『ラストデウス』に変化させる。
万能兵装にはそれぞれの形状に、特殊な力が宿っている。
俺が今変化させた色槍には、術者が指定した異性の倫理観を極限まで低下させ、術者に対して情欲を抱かせるという特殊能力が宿っている。
その力を使い、ファリナ達四人の倫理観を崩壊させる。
そして俺は、心にも思っていない口説き文句を口から垂れ流す。
「私は一目見た時からファリナ夫人達……いや、ドーラ、レイラ、ミーナ、ファリナに心を奪われた。こんな胸の高まり、エンデ相手では一度も抱かなかった。つまり……一目惚れだ」
「クリスさんのお気持ちは嬉しいですが、私もクリスさんも互いに伴侶がいる身。その気持ちは心の裡に仕舞って……」
「いや、もう抑えられない。グランがファリナ達を必要としていないのなら、私が貰い受ける」
そう言い、俺はファリナの唇を強引に奪う。
ファリナは最初は抵抗するような仕草をしていたけど、『ラストデウス』の影響でその抵抗も弱まってくる。
逆に、俺の唇を貪るような情熱的なキスを返してくる。
しばらくしてから唇を離すと、ファリナの瞳は熱病にうなされたように潤んでいた。
「これで私の気持ちは伝わったか?」
「はい……」
「クリス殿。あたしにも……ファリナとのやり取りを見て、疼きが止まらないんだ……」
そうねだってくるドーラの唇も、俺は奪う。
それに続くようにレイラとミーナも俺にすがり、彼女達の相手をする。
ミーナが俺から離れると、ファリナが俺に抱き着いてくる。
「クリスさん。私も身体の疼きが止まりません。私を……」
「おっと。それ以上はいけない。それ以上の関係を望むのなら、グランとルミナをこの世から消してからだ。その為に……俺に、協力してくれるな?」
「「「「はい」」」」
俺がそう言うと、ファリナだけでなくドーラ、レイラ、ミーナも紅潮した頬と虚ろな瞳でそう答えた―――。
手駒を得るにはやはり色仕掛け(偏見)。
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