第19話 視察 その2
前回のあらすじ
視察に向かおう
道中、俺はすることがなく手持ち無沙汰だった。
エンデは今回視察する村の状況が書かれた書類を読み直している。
本当にすることがないから、これからの復讐の計画を頭の中で組み立てる。
あの三人の中で一番楽なのは、グランだろう。
側室との仲もあまりよろしくはない様子だし、彼女達を取り込めればアリバイ作りも容易になる。
何なら、本妻のルミナに全ての罪を押し付ければいいだけの話だ。
あとは何時殺すか、何処で実行するかという問題が残っているが……これは追々詰めていけばいいだろう。
その次に楽なのが、消去法でギルの方だろう。
ルナセールは仮にも『勇者』だから、自然とそうなる。
ギルは後妻との夫婦仲は良いらしく、そこから付け入るのはほぼ不可能だろう。
それに、ギルは今はほとんど自分の領地から出ないらしいので、街の外で殺すことも出来ない。
だから必然、復讐はヤツの本拠地でもあるデネブの街で行わなければならない。
どうするか……船で沖合いにでも連れ出すか?
いや、そんな事をしたら同行者の俺が真っ先に疑われる。
出来れば、足が付くのはルナセールを殺した後の方が望ましい。
いやまあ、復讐は俺の影をちらつかせることなく完遂するつもりではあるが……万が一にも失敗した時のリスクも考えておかなければいけない。
まあいい。
殺害方法はその時になったら考えよう。
最後がルナセールだが……ヤツが一番厄介だ。
まず前提条件として、俺の腕ではヤツとの近接戦闘は圧倒的に不利だった。
俺のは単なる付け焼き刃に対して、ルナセールの剣術は幼少期から鍛えられたモノであるからだ。単純に、年季が違う。
なら魔法戦闘だが……これは俺の方に分がある。だが楽観視も出来ない。
ルナセールの魔法の腕は、当時の勇者パーティーの中で俺の次に高かったからだ。
あれから時が経っていることも考えたら、ヤツの魔法の腕も上がっていると考えた方がいいだろう。
「……厄介だな」
「……? 何か言いましたか?」
俺の呟きが聞こえたようで、エンデが顔を上げて聞き返してくる。
俺はそれに答えるように、首を左右に振る。
「いや、何でもない。精が出るなと思っただけだ」
「これも領主の務めですから。手を抜くなんて考えられないですよ」
エンデはそう言うと、再び書類の方に目を移した。
俺は馬車の窓から外を眺めつつ、再び思考する。
ルナセールの戦闘能力は厄介極まりないが……手がないわけじゃない。
だけど……俺に残っている最後の良心が、ソレを取らせることを阻んでいる。
「まあ……おめでたいですね」
「うん? どうかしたか?」
すると突然エンデが声を上げたので、俺は思わず聞き返していた。
それに彼女はニコニコと微笑みつつ答える。
「今回視察する五つの村全てで、お子さんが産まれたらしいんです」
「それがめでたいのか?」
「当然です。子供は宝なんですよ? それに子供が産まれるということは、夫婦同士が愛し合っているということの証明ですから。ほら、昔から言うでしょう? 『子供は夫婦の愛の結晶』だって」
「……!」
エンデのその何気無い言葉を聞き、俺はハッと目を見開く。
何で俺は今まで気付かなかったのか?
俺にはもう一人、復讐しなければならない相手がいたことに。
恐らく、俺の最後の良心がソレを考えないようにしていたのだろう。
だけど冷静に、冷酷に考えれば、俺との将来の約束―結婚しようという約束を交わしていたにも関わらず、他の男と結婚したのは俺への重大な裏切り行為なのではないか?
さらに言えば、その男との間に子供を設けているのも問題だ。
子供は天からの授かり物だとしても、エンデの言う通り愛がなければ産まれはしない。
つまり――俺への気持ちはその程度だったということになる。
ならもう、俺に未練は一欠片も、微塵も残ってはいない。
俺はこの手で――メルシアをも、殺す―――。
タイトル回収。
クリス/エドには修羅の道を歩んでもらう(ゲス顔)。
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