第18話 視察 その1
前回のあらすじ
リアが地上に出てきた
「そう言えば……そろそろ視察の時期でしたか」
「視察?」
俺が聞き返すと、エンデは頷く。
「はい。領内の村を回って、農作物の収穫状況や発展具合を確認するんです。一度に全てを見て回ることは出来ないので、何年かに一度の周期で回ることになってるんですよ。今年は確か……南部の方の村三つですね」
「奥様。新興した村が前回の視察から二つ増えているので、今年は五つの村を回ることになります」
「ああ……そうでした。最近立て続けに色々と起きたので、新興村のことをすっかり忘れてました」
ベルの指摘に、エンデはポンと手を叩く。
俺はさらに、エンデに尋ねる。
「視察はどれくらい掛かるんだ?」
「いつもなら長くて一ヶ月ですが……今回は新興村の発展具合も確認しないといけないので、二ヶ月ほど掛かってしまうでしょうか?」
「……それには当然……」
「はい。クリスさんにもついてきてもらいます。一応わたしの旦那様でもあるので」
「そうか」
「それと、ベルにもわたしの世話役としてついてきてもらいます。……ああ。服装は別にメイド服でなくても構いません。世話役とは言っても、わたしの護衛がメインですから」
「……俺には護衛を付けないのか?」
「クリスさんに必要ですか?」
「別にいらないな」
意地悪気味に一応言ってみただけだが、エンデは「何を言ってるんでしょう、このヒト?」みたいな表情で首を傾げる。
昔ならともかく、今の俺には護衛は必要無い。
「まあ、それとは別に護衛の冒険者は雇いますけどね。道中の危険もあることなので」
「野盗とか魔物とかか」
「はい。……だからベル。後で冒険者ギルドに行って、依頼書を出しておいてくれないかしら? 依頼書は机の上にあるわ」
「畏まりました。今すぐ行ってきます」
ベルはそう返事をし、机の上の依頼書を丸めて魔法袋の中に仕舞う。
そして足早に部屋を出て行った―――。
◇◇◇◇◇
それから一週間後。
俺達は視察に向かうことになった。
今回、護衛として雇った冒険者は二人。
Aランク以上の冒険者という条件を設けていたから、そんなにヒトは集まらなかった。
まあ、見ず知らずのニンゲンを雇うワケだから、そんなにヒトは多くない方がいいと判断したのだろう。
ちなみに、冒険者のランクはE〜SSの七段階に分けられている。
高ランクになればなるほど、不祥事を起こした際のペナルティが大きくなるので、自然と高ランク冒険者は素行の良い者が集う。
そういう面で見ても、エンデが設けた条件は理に適っていた。
雇った内の一人は魔法剣士のジョブのフレディ。オオカミの獣魔族らしく獣耳とシッポが生えている青年だった。
もう一人がパンジー。狩人のジョブで、エルフ族の女性だった。
二人は日頃からパーティーを組んでいるらしい。
だから戦闘時の連携もお手の物だろう。
「今回の護衛、よろしくお願いいたしますね」
「お任せを」
「任せて下さい」
エンデがそう言うと、二人共礼儀正しく返事をする。
俺の目から見ても、二人には護衛を任せられるだけの実力はあると思う。
これはあの勇者パーティーにいたせいで他の冒険者と交流する機会が多かったから、自然と身に着いた冒険者限定の観察眼から来る評価だった。
「では出発しましょう。……ベル。御者をお願いね」
「畏まりました、奥様」
そう言って頭を下げるベルの服装は、いつぞやの暗殺者装束だった。
でも前と多少異なる点もあり、ケープを羽織っている点と、左腕に青いスカーフを巻いている点だった。
エンデに確認すると、青いスカーフはモンテーロ家の者だということを表す合図みたいなモノらしい。
ケープの方は、少しでも女の子らしくと、エンデが半ば強制的に羽織らせたモノらしかった。
俺が先に馬車の中に乗り込み、エンデの手を引いて彼女が乗り込むのをサポートする。
俺達が乗り込んだのを確認したベルは、手綱を引いて馬車を発進させた。
最初に向かうのは、ここから比較的近くにあるスカーレットの村だった―――。
先に言っておきます。
今回出てきた新キャラ二人はクリス/エドを裏切りません。
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