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第14話 晩餐会への招待

前回のあらすじ

メルシアに正体を看破された

 

 夜会から一ヶ月後。

 俺達は再び、ベガの街にあるグランの屋敷へと招待されていた。

 というのも、夜会での出来事が原因だった―――。




 ◇◇◇◇◇




 夜会は滞りなく行われ、そろそろお開きになるかと思ったその時、事件は起きた。


「グラン・ダール! 覚悟!」


 ナイフを持った男が、グランに向かって突撃して行った。

 周りのヒト達は突然の事態に動けないでいた。


 このまま見過ごすことは可能だけど、俺は打算からその男の前に躍り出る。

 そして男を床に押さえ付ける形で取り押さえる。


「ぐっ……離せ!」

「大人しくしろ」

「ぐあっ!」


 腕を捻ると、男はくぐもった声を漏らす。


「助かった、クリス殿。……衛兵。この男を拘束しろ」


 するとグランがやって来て、素早く指示を出す。

 ほどなく衛兵がやって来て、彼等に男の身柄を引き渡す。


「改めて礼を言う。助かった」

「いえ。それにしても……あの男はダール卿に恨みがあった様子。心当たりは?」

「……無いな」


 本当に心当たりが無いといった様子で、グランはそう答える。


 こんな多少のハプニングはありつつも、夜会は無事に終了した。

 帰り際、グランが俺達が乗る馬車までやって来る。


「クリス殿。今夜の出来事に関しては本当に感謝している。なのでそちらの都合が良ければ、後日個人的に晩餐会に招きたいが如何か?」

「ええ、是非」


 俺が無言でエンデの方を向くと、エンデが俺の代わりに答える。


「では後日、詳しい日程の書かれた手紙を届ける。晩餐会で再び会えることを楽しみにしている」

「私もです」


 そんな言葉を交わし、俺達はグランの屋敷を後にした―――。




 ◇◇◇◇◇




 グランの屋敷へと向かう途中、馬車の中でエンデが尋ねてくる。


「クリスさん。今回の晩餐会で事を起こすつもりですか?」

「いや。今はまだその時じゃない」

「前から思ってましたけど、随分と慎重なんですね?」

「たった一度でも失敗は許されないからな。慎重過ぎるくらいで丁度良いくらいだ。その代わり、決めると思ったら一瞬で決着を着ける」

「そうですか……、っ!?」


 すると急に、馬車が止まった。

 距離的にまだ、ベガの街にすら着いていないハズだ。

 なら……。


「旦那様、奥様。野盗です。始末してきますので、どうか馬車からは降りないで下さい」


 御者を務めていたベルがそう言うと、周りから激しい戦闘音が聞こえてきた。


「野盗ですか……こんなところでも出るのですね」

「……随分と冷静だな」


 こんな状況でも落ち着き払っている様子のエンデが意外に思えて、俺は思わずそう零す。

 するとエンデは、フッと微笑む。


「貴族が野盗に襲われることなど珍しくもないですから。それに今は、ベルとクリスさんというとても頼りになるお二人がいますから」

「そうか」


 すると突然、馬車の扉が荒々しく開かれる。

 ベルならノックしてから開けるので、彼女ではないことはすぐに分かった。


 見ると、如何にも野盗です、といった身形の男が馬車の中に踏み込もうとしていたところだった。

 男は俺を一瞥し、エンデには下卑た視線を向けつつ口を開く。


「へへへ……貴族の夫婦か。おい、旦那。嫁の命が惜しくなかったら――」

「《アイシクルランス》」


 魔法で氷の槍を生み出し、問答無用で野盗の男へと放つ。

 男は腹を槍で貫かれ、その勢いのまま馬車の外へと転がっていく。


「ベル。こっちにまで来たぞ。何やってる?」

「すみません!」


 馬車から少しだけ身を乗り出してそう文句を言うと、ベルは水流のような滑らかな動きで野盗達の頭と胴を切り離しつつ謝ってくる。

 仮にも元は暗殺者だったから、その動きはとても洗練されていた。


「まったく……《エアロカッター》」


 音もなく俺の背後に忍び寄ろうとしていた野盗を風の刃で斬り刻みつつ、俺は馬車の中へと戻る。

 見ると、エンデは驚いたように目を見開いている。


「どうかしたか?」

「いえ……後ろも見ずに魔法を放っていたものですから……流石は勇者パーティーの一員というところでしょうか?」

「元だ、元。それに足音は無くても、殺気が駄々漏れだったからな。それなりの腕を持つ冒険者なら、俺と似たようなことは出来るさ」


 俺がそう答えた後、ザシュッという音を最後に戦闘音は聞こえなくなっていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 辛うじてまだ息があった、クリスに氷の槍で腹を貫かれた野盗は首を傾げる。


「勇者パーティー?」

「貴方が知る必要は無いですよ」


 その声と、黒衣の死神を視認したのが最期だった。

 ザシュッという音と共に、野盗の意識は永遠の闇に閉ざされた。

 死んだと思われていた勇者パーティーの一人の正体に、思い至ることもなく―――。






復讐は蛇のように音もなく、静かに、狡猾に。




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