表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/69

第12話 夜会 中編

前回のあらすじ

ギルが現れた

 

 ギルが姿を現すと、ホール内には大きなどよめきが沸き起こる。

 しかしそのどよめきは驚きというよりかは、有名人と出会えた喜びの方が大きい気がする。


 そんなギルの後ろには、赤茶色の髪をした女性がいた。

 もしや、あの女性がギルの?


「エンデ。あの方々は?」

「ギルフォード・アイギス卿とその後妻のルイス様ですよ。……ああ、クリスさんは初めてお会いになるんでしたっけ」

「そうなるな」


 本当はギルとは顔見知り以上の関係だけど、『クリス』としては初めて会うんだからあながち間違いじゃない。

 するとあちらも俺達に気付いたようで、こちらに近付いてくる。


「こんばんは、ファリナさん」

「ようこそお越し下さいました、ギルフォードさん、ルイスさん」

「久しぶりね、ファリナさん」

「ええ、そうですね」

「グランはまだ?」

「はい。もうじきやって来るとは思いますが……」

「そう……それで、こちらは?」


 ギルが俺達の方を向いたので、俺とエンデは揃ってお辞儀をする。


「私はエンデ・フォン・モンテーロと申します。そしてこちらが……」

「エンデの夫となったクリスと申します。以後お見知りおきを、『絶壁』殿」


 俺がそう言うと、ギルは少し目を見開く。


「驚いた……その二つ名を知っているなんてね」

「ご謙遜を。勇者パーティーの方々を知らない者など、この国では一人もいないでしょう」

「ルナセールやグランはともかく、ボクはあまり存在感はない方でしょ?」

「そんなことはございませんよ。鉄壁の防御を誇るギルフォード殿がいるから、前衛のお二方が全力を出せるのでは?」

「ふむ……そう言われると悪い気はしないね。……ああ、挨拶が遅れたね。ボクはギルフォード。そしてこっちがボクの今の妻のルイスだ」

「ルイスです。以後お見知りおきを、モンテーロ伯爵夫妻」

「こちらこそ」


 そう言葉を交わすと、またダンスホールの扉が開かれる。

 今度は誰だ、と思いそちらに目を向けると――俺は頭が真っ白になった。


 何故ならそこにはルナセールと、彼と腕を組んでいるメルシアの姿、それと彼女に手を引かれている子供の姿があったからだった―――。




 ◇◇◇◇◇




『勇者』の肩書きを持つアポロニア卿と、その妻となった『聖女』メルシア様がダンスホールに姿を現した瞬間、隣にいるクリスさんが動揺した雰囲気を感じ取った。


 クリスさんはメルシア様と恋仲だったらしいから、彼女が他の男性と結婚していることは覚悟はしていても、実際に目の当たりにするのには理解が追い付いていないのだろう。


 そんな彼に追い打ちを掛けるのが、あの二人のお子さんの存在だろう。

 子供がいるということは、すなわち……そういうことだからだ。


 アポロニア卿はアイギス卿の近くまでやって来ると、彼と気さくに挨拶を交わす。


「やあ、ギル。来ていたのか」

「うん。グラン直々の招待だったからね」

「そうか。……ところで、こちらは?」


 アポロニア卿が私達の方に視線を向けてきたので、私はお辞儀と自己紹介をする。


「初めまして。私はエンデ・フォン・モンテーロと申します。以後お見知りおきを、アポロニア卿」

「……その夫となったクリスと申します。『勇者』殿にお会い出来て光栄に思います」


 クリスさんは毅然とした態度で自己紹介するけど、私は内心気が気じゃなかった。

 ショックを受けているであろうクリスさんが、どんな行動に出るのか予測出来ないからだ。


「モンテーロ卿の噂は聞いている。よもや結婚するとは思いもしなかったな」

「そうですか?」

「うむ。……ああ、いや。貴殿の結婚を否定しているわけではない。意外に思っただけだ」

「そうですか。家の者にも早く結婚するようにと催促されていたので、一安心しているところですよ」

「あとは跡取りを……いや。これはそちらの事情だな。私が口出しするほどのことでもないな」

「そのお心遣いには感謝致します。気持ちだけ受け取っておきますね」

「それがいい。……貴殿に改めて紹介しよう。私の妻のメルシアと、娘のルナシアだ」


 アポロニア卿がそう紹介すると、よく似た顔立ちの母娘はお辞儀をする。


「ルナセールの妻のメルシアです」

「ルナシアです。初めまして!」


 メルシア様は落ち着いた雰囲気で、ルナシアさんは子供らしく元気一杯に挨拶をする。

 だけどメルシア様は顔を上げると、クリスさんの顔をまじまじと見つめる。


「あの……私の顔に何か?」

「いえ……クリスさん、と仰いましたか? 何処かで出会ったことがありますか?」


 鋭い。

 出会ったどころの話ではなく、貴女と同じパーティーにいた人物ですよ……と言うべきではない。絶対に。

 それをクリスさんも理解しているのか、彼はすっとぼける。


「気のせいでは? 私が『聖女』様とお会いになるのは、今日が初めてですし」

「そうですか……いえ、ごめんなさい。昔の知り合いに似ていたものだったから……」

「……その、知り合いというのは?」

「エ――」

「メルシア」


 すると、アポロニア卿が険のある声音でメルシア様の言葉を遮る。

 それを受けて、メルシア様も黙り込む。


「突然すまなかったな。私達の中でも、あの事件は消化しきれていないのだ」

「『虹の魔法使い』様の件ですか……心中お察しします」


 その事件の当事者である当の本人がそう言うものだから、私は思わず吹き出しそうになった。

 でもこれまでの教育の影響か、寸でのところで堪えられた。


 すると、ダンスホールの扉が開かれる音が響く。

 そちらに目を向けると、この夜会の主催者であるダール卿の姿があった―――。






クリス/エドの復讐対象が一堂に会しました。




評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ