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第07話 黒蟲討伐

 

 ゲーム4日目の夜。俺とアレンは黒蟲の大群からの逃走に成功して、借りた空き家に着いていた。

 村長にはとりあえず一匹だけ討伐してきたと伝えた。そしたら「は、はあ。わかりました」って微妙な顔をされてしまった。何やら「ん? あれ? こいつら儂の知ってる黒蟲討伐の方法とは違うやりかたをしているのか?」みたいな顔をされていたが、きっと気のせいだろう。


 アレンとも少し相談したが明日から毎日あの洞窟へ向かい少しずつ倒していくことにした。不幸中の幸いといっていいのか今日倒したあの黒蟲が群れのリーダーだったらしく他の黒蟲はそれほど大きくはなかった。それでも15メートルくらいはあった気がしたので本当に怖かったが。

 どれくらいの数がいるのかはわからない。20匹はいない気がする。それでも10匹以上は確実にいると思うので明日からは大変な日々になるかもしれない。

 8日以内に帰らないと宿の部屋の予約が切れてしまうが…それはしょうがないか。依頼自体に達成期間というものが存在しないので、少しずつ倒していこうかと俺は考えている。

 その間に繁殖して増えるのではといった心配はしていない。ギルドの話では成体になるまで年単位の時間が掛かるらしいからな。

 さて、昨日はベルフェゴールとの話に夢中になって風呂に入るのを忘れていたし、風呂にでも入ろうかな。どうやらこの空き家の風呂はちょっとした銭湯くらい大きいらしいからな。少し楽しみだ。










 

 どうも皆さん、アレン・ウルスダッツっす。今日の黒蟲討伐は失敗に終わってしまったっす。正直言ってCランクの依頼を甘く見てたっす。

 あんなムカデの化け物の大群に勝てなきゃ、達成できないような依頼だったってことっす。この世界の冒険者はあんなレベル高いんすね。俺の世界の冒険者としての依頼はもう少し簡単だって聞いたっす。それにあの強さの魔物は俺の世界ではC+~B-レベルの扱いをされるっす。

 薄々は感づいていたっすけど、どうやらこの世界の魔物は俺の世界の魔物より一段階強力みたいっす。もしかすると俺の世界の魔物が特別弱かったのかもしれないっすね。

 他の世界の使徒とはまだ会った事はないっすけど、もし俺より何倍も強いようなら、俺が襲われた時にミキュアさんを巻き込んでしまうかもしれないっすね。

 あー、でも、できればミキュアさんの傍を離れたくないっすし……はあ、悩んでいてもしかたないっす。一旦風呂にでも入って忘れるっす。悩んだときは風呂に入ってゆっくり考えれば解決できるよと妹に諭された事があるっす。あれはたしか……幼馴染の魔法訓練が嫌で嫌で少し病んでいた頃のことっすかね。


 俺は廊下を歩いて風呂に向かっているっす。この空き家は元々は宿屋みたいな扱いだったらしいんすけど、村を訪れる人もそんないないし、村人は自分の家があるから泊まる人もいないしで……営業が始まってから一月で潰れたらしいっす。馬鹿なんすかね…。

 そのせいもあって部屋の多さと風呂の大きさは自慢できるって村長さんは言ってたっす。定期的に掃除もしてるらしいっすからなかも結構綺麗だし快適っす。

 明日から何日かに渡って黒蟲に戦いを挑まないといけない身としては、疲れを癒すためにも大きな風呂ってのは有難いっすよね。

 ん? 脱衣所に脱ぎ散らかした男物の服が落ちてるっす。あれ、昨日の俺ってばその辺に脱ぎ散らかしたままにしてたんすかね。危ない危ない、こんな所をミキュアさんに見られたらだらしのない男かと思われるっす。

 俺は床に落ちている服を拾ってアイテムボックスに入れたっす。これで次に取り出した時は綺麗な状態で出てくるはずっす。便利っすよね。

 俺は服を脱いでアイテムボックスに仕舞ってから、風呂に入ろうとドアを開けたっす。

 そしたら、一瞬だけ視界が紫色に染まったっす! え、なんすかこれ! その光が収まるとそこには…………ミキュアさんが入ってたっす!?

 え、ええ!? なんでミキュアさん男湯の方に入ってるっすか!? 男湯って大きく書いてあったの見てないっすか!?

 


 「み、みみみミキュアさん!? なんで風呂はいってるっすか!?」

 「ッッ! 危ねえ、セーーーフ。」


 「セーフってなんすか!?」

 「ああ? さっきっから五月蠅せえな。俺だって風呂くらい入るわ。良いだろ別に!」


 「良いんすか!? ま、まあミキュアさんが良いんなら俺も五月蠅く言わないっすけど(風呂沸すの面倒だったんすかね? っていうかまじで良いんすか!それなんてエロゲっすか!? あれ、エロゲってなんすか?)」

 

 「あ? ああ。(なんでアレンはこんなに叫ぶんだ? 修学旅行とかで一人で風呂に入りたがるあのタイプか?)」



 と、とにかく、ミキュアさんと一緒に風呂に入る事になったっす! 浴槽の中の湯は白く濁ってるっすから、ミキュアさんの体が直接見えるわけじゃないっすけど、なんていうか…体温が上がって少し赤くなってる顔が、エロいというかなんというか、少しだけ見える肩が艶めかしいというか……幸せっす! 朝の俺に教えてあげたいっす!


 「じゃ、じゃあ俺、体洗ってるっすね」

 「お、おう。(なんで一々報告してくるんだろう…つーかベルフェの姿見られてないよな?なんで急に入ってくるんだよ。怖ええよ。気配なさすぎだろ。さすが獣人だな。てかさっきっから青白い獣尻尾がぶんぶん振れてるんだが…そんなに風呂が好きなのか?)」


 

 な、なんか視線を感じるっす。ミキュアさんも俺に少しは興味があるんすかね。もしかして、両想いとかっすか!

 俺は体と髪を洗い終えると…あ、浴槽に浸かろうか迷うっす。 これって一緒に入ってもいいんすかね?


 「ミキュアさん、 俺も入っていいっすか!」

 「勝手に入れよ。一々俺に許可求めるなよ。(え、まじでなんなんだ? やっぱり動物の習性で群れのリーダーとかに許可とか求めたくなるんだろうか? つーか筋肉質だな。羨ましい……イケメンだしマッチョだし背高いし…こいつ死なねーかな)」



 よし、言質は取ったっす! 俺は大きな浴槽に浸かり始めたっす。混浴なんて初めての経験っす。

 な、なんか不思議な気持ちっす。俺が湯船に入ると、すぐにミキュアさんが立ち上がったっす!? わ、わわわ、タオルで前は見えないっすけど、腰に巻かれた濡れたタオルが張りついて小さなおしりががががが、や、やばいっす!

 ミキュアさんは浴槽から出ると、髪を洗い始めたっす。じろじろ見てるときっと嫌われるっすから、視線を下に向けてできるだけ見ないように心掛けるっす。

 けど…けど…ああ、これどういう状況っすか!※同性と銭湯に入ってるという状況

 ミキュアさんは頭を洗い終えると次は体を洗い始めたっす。ま、まだ体洗ってなかったんすね。ってことは、今俺が浸かっている浴槽には、ミキュアさん成分が! あ、まずいまずい、思考が変態だったっす。 でも、なんか昨日入った風呂より体が癒される気がするっす。

 すると突然、体を洗っているミキュアさんが立ち上がったっす!? な、なんすか!? 立ち上がってこっちに向かって歩いてきたっす! ああ、腰に巻いたタオルと胸に着いた泡で色々と見えない!


 「なあアレン! 思いついたんだが、奴らの巣に殺虫剤かなんか投げ込むってのはどうだろうか! 確か、俺の記憶に虫系統の魔物に防御低下の状態異常を高確率で発動させる煙幕を撒くアイテムが合ったはずだが!」


 って興奮したように捲し立ててきたっす! ああ、泡が少しだけ吹き飛んだっす! やっぱり胸小さいんすね! そんな所も可愛いっす!でも、でも、お湯掛けてもいいっすかね!



 「なあアレン! 名案だと思わないか!」

 「はいっす! 最高っす!」



 俺の言葉に満足したのか、ミキュアさんは体を洗うためにむこうに戻っていったっす。背中も綺麗っす。

  ああ、なんかのぼせてきたっす。なんかして嫌われる前に風呂を出ることにするっす。少しもったいないっすけど、これ以上はなんかまずい気がするっす。


 「ミキュアさん! お、俺、先にでるっす! 失礼するっす!」

 「おう。りょうかーい(我ながら名案すぎだろ。まるで正解案を引き当てたかのようだ…お、アレンがいなくなるんだったらベルフェゴール召喚してやらなきゃな。さっきっから念話で文句言い続けてるし)」



 あれ、なんか背後が紫色に光ってる気がするっすけど…気のせいっすかね。俺はそのまま脱衣所に出てアイテムボックスからさっき脱いだ着物を装備するっす。

 今日の戦闘で汚れていた服は綺麗な状態になっていたっす。これは俺の一張羅っすから、この世界で買った他の服よりも元の世界で母さんに作って貰ったこの服の方が格好良いし好きっすね。

 俺は風呂を出た後に調理場へ向かうっす。昨日は一人で食べた夕食と朝食だったっすけど、なんか今日は一緒に食べてくれる気がするっす。なんせ一緒に風呂に入った仲っすしね。

 俺は村で作られた野菜を中心に色々な料理を作ったっす。料理は得意っす。家族で料理を作れるのは俺だけだったっすから。母さんの料理下手にうんざりした俺は幼馴染とそのお母さんに料理を教えて貰ったっす。だから一通りはできるっす。

 俺は料理を完成させて丁度浴場から出てきたミキュアさんに「夕食作ったっす。食堂に来てくださいっす」と直接言ったっす。するとミキュアさんは「うーい」と返事をして食堂へ向かってくれたっす。

 

 その後は二人で仲良く夕食を楽しんだっす。ミキュアさんとの距離が縮まった気がして嬉しかったっす!








 アレンが作ったご飯を食べて、割り当てられた部屋に戻る。意外とあいつの作った料理は美味しかった。宿屋のデメタスさんの作る料理とはまた違った味付けで、異世界の料理をまた一つ楽しむ事ができた。

 部屋に戻った俺はとりあえずベルフェゴールを召喚することにした。こいつ、最初はめんどうくさいからあんま召喚しないで欲しいわー働きたくないわーとかなんとか言ってたくせに、数日でころっと主張を変えやがった。

 何もない空間とやらで寝ているのも4日目には飽きたらしい。召喚して召喚してーと五月蠅いんだよな。

 風呂でも俺が入っていたら念話で馬鹿みたいに五月蠅くしてきたからな。


 『ちょっと、五月蠅いってなによ! 念話してるんだから考えた事わかるんだからね!』


 ああうっさいな。頭に響くからもう少し静かに話してくれ…。俺はスキル:悪魔召喚を発動させる。もうおなじみになってきた紫色の光が部屋中に広がって…風呂上りなのに色気がまったくない不思議女が出てきた。



 「んー、っと。ねえ幹也。もう一回お風呂入りにいきましょうよ」

 「行かねえよ! 行くわけねえだろ。そんな事よりさっき話した案、どうだと思う?」


 「えっと、確かに黒蟲の防御力を下げるってのは良い案ね。あの虫の魔力特性を封じれば幹也のどっぺるがん?でも倒せるでしょうし…でも、そのアイテムどこで買うの?」

 「…………あ。ど、道具屋……とか?」

 

 「この村、道具屋なんてなかったけど……転移石って帰りの分はないんでしょ?」

 「あ、ああ。ギルドで支給されるのは行きの分だけだしな。早く行って依頼達成してこいの意味だろ。帰るにも馬で3日はかかるみたいだし…せめて車とかあれば…」


 「車? そんなのより私が送ってあげ……あ、だめだわ。魔力が足りなかったわ。幹也のMP値が10,000以上あれば長距離転移魔法も使えるんだけど…」

 「テレポートはMP一万かー。反動軽減魔法と比べると結構使うな」


 「あたりまえじゃない。反動軽減魔法の方は対象が武器だけだけど、転移は体全部と転移先も含めて引っ繰り返す魔法なんだから、そりゃ大変よ。難易度も高いわね。私みたいな上級悪魔のエリートじゃなかったら不可能ね!」

 「へー。引っ繰り返すって事は、相手をこっちに呼ぶみたいなこともできるんだな。つーことは俺をこの世界に呼んだのはその魔法って事になるのか?それを使えば元の世界に帰れたりしてな」


 「ちょっと違うわね。世界間の移動は他にも色んな媒体が必要になってくるし…呼ぶ事はできても行く事はできないから難しいわね。何? 元の世界に帰りたいの?」

 「いんや。まだ帰りたくねえよ。折角の異世界なのにすぐ帰んのはもったいないだろ? 俺は俺なりにこのファンタジー世界を楽しみたいとは思ってるんだよ。そりゃあ負けたら地獄行きなんてのは邪魔だけどよ」


 「(帰りたいとは思ってないのね。となると…) ねえ、それじゃあ何がしたいのよ。龍人は倒すのよね?」

 「おう。"イベント"には参加する。そして第七世界を1位にして、後腐れなくこの世界を楽しむ。そりゃあ俺一人じゃ他の使徒に勝ってイベントで優勝するなんて事はできないと思うけどよ。お前は知らないと思うけど、一応地球にも…第七世界にもいるんだぜ。上級悪魔みたいなありえない強さを持った奴とか」


 「え、なにその話。ありえないわね。人族と上級悪魔にはその辺の雑草と今の幹也くらいの戦力差があるのよ。あなたは草と同じ強さよって言われて信じる?」

 「……疑いはするな。今日はムカデに殺されかけたし。いるんじゃねえのか、人食い草みたいなのも」


 「違うわよ。んー、あ、例えばこの枕! 枕の中にはあなたよりも強い枕がいるのよ!すごいでしょ! って言ってるのと同じような事を幹也は言ったのよ。」

 「うーん…じゃあ上級悪魔まではいかなくても、とりあえず圧倒的強者ってのはいたな。俺がやってたゲームの中では。信じられるか? 皆が同じ物を使って同じような身体能力で戦いあってるはずなのに全然勝てねえんだよ。不思議だろ?」


 「技術の差って事?」

 「まあそうなんだろうな。俺もゲームが発売してからずっとやり込んでるんだけどよ。才能なのかもな。とうとうあの人には一回も勝てなかったな…」


 「そうなの…因みにあの人ってだれの事なの?」

 「おっぱい師匠」



 「……え?」

 「おっぱい師匠」



 「……。」

 「おっぱい師匠」



 「…………そう……なの。(どうしたのかしら。この子、いきなり頭がおかしくなったわ。何?それとも少し反発した私への当てつけ? 私だって好きで貧乳やってるわけじゃないのよ? アスモデウスの馬鹿女に変な呪いをかけられたせいなんだから!)」

 「俺にFPSの基礎知識を教えてくれた近所のお姉さんなんだけどな。本名はなんていったかな…名前呼ぶたびに「おっぱいマスターと呼びなさい。おっぱいorマスターでも可!」って繰り返し言われたからな。今思うと小学生の俺におっぱいって呼ばせてる時点で犯罪だよな……。」


 「そうね、その人は痴女か何かなのかしら…。幹也ってばそんな人に勝てなかったの? あれ? でも幹也って人族にしては結構強いわよね? あなた、本当に一度も勝てなかったの?」

 「FPSではな。他のゲームでは勝ったこともあるけど。あの人はな、直感力が異常なんだ。勿論、ゲームの技術だって廃人並みに持ってるだけどな。勝つために必要な力量差を、そのちょっとの差を直感で、つまり勘で補ってるんだよ」


 「直感?」

 「そう、直感。こっちから敵がくるかなーとか、今そこ行ったら死ぬなーとかの読みを外している所を、数年間接してきた中で一度も見たことがない。俺は将来確率について勉強してこれがどんだけすごい事か証明しようとすら考えていた」


 「それって未来視の能力じゃないの? 私の知り合いにもいるわよ。他の上級悪魔相手のギャンブルに未来視つかってたのがバレて降格させられた元上級悪魔とか」

 「俺の世界には能力とかないんだよ。いや、今思うと超能力者とかだったのかもしれないな。悪魔とか異世界があるんだから、超能力者が居ても不思議じゃないか…」


 「ふーん、で、その人が上級悪魔並みに強いっていうの?」

 「ああ。多分ゲーム廃人の師匠の事だから発売日にGWOを買っているはず。事前登録でのレア職業、レアスキルツリー、ボーナスBP、どれかを絶対に手に入れるためにな。これもどうせ直感的に一番良い物が手に入るのを引き当てるだろう。それで俺同様この世界に来ているはずだ。だとすれば………」


 

 「……………………。」

 「(あれ? 幹也ってば黙ってどうしたのかしら。………暇ね。念話で少し思考を覗いてみましょう。)」





 

 『だよな。確か、使徒には半年事にボーナスが貰えるランキングがあるとベルフェゴールが最初に言っていた。おっぱいの事だから確実にそういったボーナスは押えていくはず。だとすれば早急なレベル上げと資金集めのために冒険者になるはずだ。初期ランクは当然Bだろう。受付のおじさんの話とギルドの資料から推測するに全ての敵を楽に倒すことができる前提で考えてA級になるのに1ヶ月、S級認定されるのに3ヶ月もかからないはずだ。過去の前例から逆算すればな。師匠の事だから接近戦をするに決まってる。という事はレベル制はないな。スキル制か職業制だ。そんな目立った行為を繰り返していれば当然他の使徒に襲撃されるだろう。しかしそれすらも経験値の足しにする可能性がある。それも視野に入れて……半年もすれば大陸規模に噂が流れるか。早くて半年、遅くてイベント期間までにはおっぱいがどういった行動をしているのか耳にするはず。おっぱい等の強者達がいる限りイベントでの第七世界の圧倒的な負けといったパターン恐らくないだろう。第四世界の上級悪魔がどれだけ強くても、仮におっぱいより強くてもおっぱいならゲーム期間の12年間の間にそいつと一回も遭遇しないルートを直感的に選ぶに決まっている。どんなイベントかは知らないがよっぽどのルールじゃないかぎり全てのイベントで第七世界が上位3位以内には入るはずだ。という事は12回のイベントの中で前半の3回程度で第七世界より上位の世界が分かってくるはずだ。例えば俺がその世界のイベント攻略の妨害活動をするというのはどうだろう。そうすれば第七世界が勝つ可能性が高くなる。俺がイベントで活躍するってのは無しだ。俺がイベント攻略に貢献してしまうと俺に引っ付いてるベルフェゴールから第四世界に貢献度がいってしまう。ただでさえ強力な上級悪魔チームにポイントをやるなんで愚策だ。聞いた話では俺は将来的に相手の能力を下げるような力を手に入れるらしい。怠惰系スキルとか言っていたな。それを使って妨害活動をするというのは良い考えかもしれない。しかしおっぱいの行動を俺が予測できるか?そもそもDOCでの敵の行動予測を俺に教えたのがおっぱいなのだから俺よりはそういった技術は当然のように高いだろう。数年で抜けるような甘い技術ではない。だとすればおっぱいは最終的に第七世界が1位でイベントが終わるように動いてくれるのか?それとも俺が他世界の妨害活動をするというのもおっぱいの想定内の行動なのか?だめだだめだ。おっぱいを基準にすると考えがまとまらなくなる。一回おっぱい抜きでこのゲームが最終的にどういった結末を迎えるか予想しよう。それで逆説的にどう行動すれば良いかを考えるんだ。そこにおっぱいの行動を挟んで計算すればいいんじゃないか?まずは俺たち人間の内まともなメンバーで且つGWOを買っていそうな奴らを予想しよう。まずは国内からだ…………』



 「え、えーっと…幹也、みーきーやー! (脳内では師匠じゃなくておっぱい呼びなのね…)」

 「ん? なんだ?」


 「いや、少し大丈夫かなって…。それより、幹也イベントに貢献してくれないの?」

 「ああ? いやいや、するに決まってるだろ? 何言ってるんだ?」


 「そ、そう。ならいいのよ(この子、さらっと嘘ついたわ。上級悪魔に自然と嘘つけるとか…)」

 「少し考え事をしたいから風呂でも行って来いよ。アレンに見られても俺がフォローしてやるからさ。幽霊とかなんとか言えば信じるだろあいつ」


 「それは無いと思うけど…。お風呂に行くってのは良い案ね。じゃあ行ってくるわ!」

 「おう」




 ベルフェゴールを風呂場へ向かわせて、俺は今後どうするかを考え直す事にした。あ、まず明日どうやって殺虫剤買うかだ…。
















 次の日、つまりゲーム開始5日目。俺とアレンは村長さんの家で「でしたらこれをお使い下さい!」と防御力を下げるアイテムの他にHPを半分以上削る事ができる強力な殺虫剤まで貰う事ができた。まったく、こんなものがあるなら先に渡しておいて欲しいものだ。

 追加で霊薬もいくつか貰う事ができた。今日は重機関銃を使わずにすみそうだな。



 俺とアレンは黒蟲の洞窟の前まで来ていた。洞窟内に防御を下げる効果がある方のアイテムを投げ込む。3時間経つと効果が出始めるらしい。市販のよりも強力なやつだべと村の村長が言っていた。期待していいだろう。

 そして5時間後…そろそろダメージを与える殺虫剤を投げ込もうかと考えていた所に、ふとアレンの呟きが耳に入ってきた。


 「あれ、薬投げ入れたら黒蟲の群れが一気に出てこないっすか?」

 「……だな。」


 「ミキュアさんって広域系の魔法使えるっすか? 前にも言った通り、俺は魔法は使えないっす」

 「俺も使えない…使えないが…」


 『おいベルフェ。もうベルフェの存在をカミングアウトしてもいいんじゃないか?正直、いつかばれると思うんだよ。』

 『もう? 一昨日の幹也は「手札がばれる」とか言ってたじゃない?』

 

 『もうこいつが敵になる姿が想像できねえんだよ。すげえ下っ端感出てるし…確かに強いんだけどさ』

 『そうね……。いざって時は記憶を消しましょう。MP5,000から使えるわ』


 『え、そんな便利な力あったの? じゃあとりあえずはベルフェをばらして、INT上げて、いざって時は記憶消す流れで(こいつど○えもんかよ。なんでもありだな)』

 『わかったわ。それと、念話中は考えてる事全部伝わってるわよ。なによどらえ○んって。基本的に魔法はなんでもありよ』



 「使えないが…使い魔が使える」

 「使い魔っすか…すごいっすね。使い魔持ってるなんて高位の魔法使いレベルじゃないっすか!」


 「いや、少しな…。じゃあ召喚するぞ」


 俺は頭の中でスキル:悪魔召喚発動と考える。すると、目の前に魔法陣がでてきてー…ベルフェゴールが召喚された。


 「どーもアレン君。ベルフェゴールのベルフィちゃんでーす。ベルフィって呼んでね」

 「え? は、はいっす。ベルフィさんっすね。(なんで俺の名前知ってるっすか?)」

 「ベルフェ、広域魔法の消費MPってどれくらいだ?」


 「弱った黒蟲程度なら、2000もあれば十分ね。1000のじゃ生き残りがでるかもしれないわ」

 「わかった。2000ので頼む」

 「おお! 心強いっすね!(MPって魔力の事っすかね? きっと業界用語ってやつっすね)」


 「じゃあ殺虫剤投げ込むぞ? あ、アレン、投げ込んでくれ。」

 「了解っす!」



 俺からHPにダメージを与える方の殺虫剤を受け取ったアレンは洞窟に向かってそれを投げ込んだ。さっきと同じくまるでプロの投手の投げた野球ボールのごとき剛速球か洞窟に向かって飛んでいく…。獣人パワー強すぎだろ。よし、これですぐに弱った黒蟲の大群が洞窟から溢れ出てくるはずだ。 

 殺虫剤が洞窟に投げ込まれてから1分もしないうちに、黒蟲の大群は慌てるように洞窟内から出てきた。奴らの頭上に浮かぶ簡易ステータスのHPバーは半分以上が減っている。…? いや、なんかブレがあるな…確かに半分以上減っているやつもいれば、ろくに効いてないやつもいる…薬だし個体差が出たのか?

 まあいい。とりあえずは黒蟲の群れに広域魔法とやらをぶち込むんだ!


 「今だ、ベルフェ!」

 「○×△□~~~ごにょごにょ……」


 「ちょ、詠唱長い! 早く早く!」

 「ごにょごにょ~~~。火炎(フレア)の防壁(ウォール)!」

 「(いやいやいや、上級魔法っすよこれ…ベルフィさん詠唱かなり速い方っすよ!)」



 え、フレアウォール!? 何そのいかにも防御系の魔法! と一瞬慌てたものの、ベルフェゴールの唱えた魔法の効果なのだろう。洞窟の入り口を半円状に囲むように炎で出来た壁のような物が幾重にも現れて、飛び出してくる黒蟲を焼き殺していく…。

 魔法に向かって飛び出した黒蟲の大半は死んだが、HPが比較的に残っていた個体はぎりぎり生き残っていた。数は7匹。どれも残りHPが20%を切っていて、HPバーが赤く点滅している。おそらく炎を喰らってなにか状態異常にかかっているのだろう。

 

 「アレン! 生き残りが7匹だ! 死にかけだから速攻で蹴りつけるぞ! ベルフェはMPを600なら使っていい、何か頼む!」

 「はいっす!」

 「えー、もう疲れたんだけど…。じゃあアレン君に腕力強化、幹也に身体能力強化ねー」


 「それでいい! アレンは接近して攻撃、俺はお前を狙う足を撃つ! 援護はまかせろ!」

 「わかったっす! はあああ、奥儀:獅子 漆! 漆! 漆!」

 「私は帰るわね。じゃあ頑張ってねー」



 隣でほざくベルフェを無視して、俺はドッペルガンを構える。今回は比較的に遠距離射撃となるので武器の形状は自動小銃…俗に言うバトルライフルというものにする。ベルギーで作られたFNハー○タル社のFN FALという銃をイメージして形状変化を促した。

 7.62x51mm NATO弾を箱形弾倉に20発入れても、MP消費量はたったの40。今の俺なら数回はリロードできる。

 全長1,090mmと少し大きめなそれを構えてアレンに向かってくる弱った黒蟲の遅い足を撃ちぬいていく。昨日の黒蟲よりもかなり動きが鈍い…アレンの奥儀を2、3度くらった黒蟲は順番に死んでいった。俺の弾を受けてもろくにHPが減らないあたり、アレンの火力の高さがやばい。本当に、俺も火力を上げなければ…。


 黒蟲の群れとの決着はあっけなくついてしまった。アレンの速さに黒蟲がついていけないのだ。同じCランクのはずなのにまるで雑魚を蹴散らすように殲滅していくアレン。やっぱり弱っているのが大きいのだろう。


 こうして、Cランク依頼の黒蟲討伐を無事達成することができた。全力の黒蟲と戦えた事も、俺の経験値の一つになってくれていると信じたい。本当に強かったんだよ……。


 



 

 

 


  

 


 

美也「じゃあみんな、黒蟲討伐に出発しようか!」


乙牌「美也ちゃん、ちょっといい? 皆にも聞いてほしいのだけど…」


美也「え、師匠さん。どうしたの?」


乙牌「ちょっとね。黒蟲討伐は明日にした方が良いと思うのよ」


明日香「え、何かあったんすか?」


乙牌「少しね…。今日黒蟲討伐に出発すると黒蟲の巣への移動中にある強敵に出会う気がするの。その強敵は私と美也ちゃんが二人掛かりで全力で戦ったとしても勝つ事はできないのよ。それで撤退する事になるんだけど…その途中で敵の攻撃でまず姫宮さんがやられるわ。次に明日香君の左腕が強敵の魔法で消滅してしまうでしょうね。美也ちゃんは足に攻撃をくらってしまうわ。そのダメージは私が回復魔法で回復するんだけど。そして生き残った三人は最終的にはその敵からの撤退に成功するのよ。だけど4年後に美也ちゃんが死ぬわ。それの原因となるのが今日その強敵から足に受けた攻撃なのよ。この世界の回復魔法で回復してしまった部分は自然治癒力が若干弱る気がするわ。そのせいで疲労が貯まったんでしょうね。魔物との戦闘中に痛みが走って隙が生じてそのせいで魔物に殺されてしまうわ。7年後には隻腕の明日香君もリタイアする事になるわね。イベント中に残った腕にも回復不可能な程のダメージを受けてしまうのよ。そして一人残った私も11年後のイベントで明日遭遇する敵と再会して殺されてしまうわ。自分の直感力を過信していたんでしょうね。それで第七世界がゲームで1位を取ることができなくなってしまい私たちは死後地獄で辛い日々を過ごす事になる…そう、そんな気がするのよ」



美也「……。(お、お兄ちゃん! 美也、やっぱりこの人怖いよぉ、助けてよー!)」


明日香「……。(おい幹也! 美也ちゃんがお前の知り合いだって言うから! お前の知り合いだって言うから!)」


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