第24話 迷宮主は地球人(9)
ダンジョン生活161日目。
【侵入者あり】
ダンジョンへの挑戦者にも慣れてきた。
侵入者あり。そんな表示が絶える方が少なくなってきた今日この頃……だけど。
「じゅッ、 はぁー!?」
突然、そんな奇声を上げながら椅子から転げ落ちた。紅が。なんだ、クールぶってる紅があそこまでテンパってるのは珍しい。藍が紅のスマホにジュースぶちまけた時以来の慌てっぷりに、思わず笑ってしまう。
「どうした、紅。何にそこまで驚いちゃったんだ? 可愛いやつだなー」
「しょ、ショウヤ! これ!」
元気一杯にスマホを掲げる紅は、無邪気で愛嬌があった。
どれどれ、と画面を覗き込むと……え?
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……153102?」
「そう! 何なのコイツ!?」
153102。先日、挑戦者を殺した時に手に入るDP量を表示する機能を購入した。それが、153102。
容姿は狐の仮面を被ってるので確認できない。だが、背丈からは11~13歳程度の年齢だと推測できる。4人組の先頭に立ってダンジョンを進んでいる。
紅と二人で、そいつを監視することにした。
基本的には、入手可能なDP量というものは挑戦者の『魔力量』、又は『単純な強さ』で変わる……と、パソコンで表記されていた。紛れ込んだ一般人より、盗賊の頭。鉱物目当ての非戦闘員より、魔物の素材目当てでやってくる冒険者。etcetc。強者は多く、弱者は少ない。今までの挑戦者たちの感じで言うと、少ない人は100くらいで、多い人は2000~4000くらいかな。
そんな中での150000DPは、少し異常で……気味が悪い。
一緒に行動している他の三人だって、2764DP、6233DP、4409DPと相当のDP量を叩きだしている。この狐野郎がいなかったら、6233DPの人が新記録を更新していたくらいだ。2700DPは黒いマントを着た金髪男、6200DPはローブを頭からかぶった杖女、4400DPはでっかい斧を持った鎧男ってな姿をしている。
「妙に速いからって見てみたら、コイツがいたんだ」
「……もう13F。あれ、昨日はいなかったよな?」
「うん、寝る前に見たときはいなかった。一番進んでたのが5Fだったし、そいつらはもう倒してる」
「ってことは、最低でも一日で9Fは降りてきてるわけか……」
4人組の動きを監視していると、狐の動きに驚いた。
「見ろよ、この回避技。まるで最初から罠の位置がわかってるみたいな感じがしねぇか?」
「……本当だ」
「地面から生えた槍を避けて、それを追撃する毒矢を短剣で斬り落とす。安心した所で毒矢作戦が完璧に見抜かれてるじゃん……」
「それは……槍に穴がたくさん開いてたら普通気付く。ショウヤは実物をちゃんと見てない」
それでも、この反応速度はすごい。槍が生えてから、その槍に仕込まれた毒矢の罠が発動するまでの誤差時間は、0.2秒のはずなんだけど……至近距離からの0.2秒を避けるってなにそいつ怖い。
だけど……。
「だけど……そこまで強いか?」
「……全然」
そうなのだ。13Fのモンスターでも少しは戦えている。ということは、深層のモンスターで瞬殺できるということになる。そこに少し、違和感を感じた。
「……よし、直接見に行くか。30Fと大部屋仕様の100Fの内装をチェンジして、桜と藍を連れて行ってくる」
「……僕は?」
「紅はお留守番だ。だってお前弱いじゃん……」
「それを言ったらショウヤのほうが弱いよ!」
「それに、ここを無人にしておくのは不味いだろ。紅はスマホを使ってこっちから後方支援を担当するのな。俺が指示だすから、それを実行してくれればいいよ」
「支援担当……まぁ、それならいいけど」
んじゃ、桜と藍を呼びに行くか。
その後は、29Fまでこの4人組が進むのを待って、んで30Fに降りる。できれば、そこで狐を殺して、一気に150000DPをげっと。んですぐに離脱って作戦でいいよな。
俺はジュースを片手に、二人を探しに行く。
150000DPもあればあと100Fは作れそうだし、実に楽しみだ。




