第24話 迷宮主は地球人(7)
ダンジョン生活121日目。
藍は思ったより武闘派だった。
一応、ダンジョン製作を任せてみたけど……酷かった。基本一本道だし。それを注意した後で作ったそれも、一見複雑に見えても正解ルートが簡単に判明するような物だった。むしろ最初の、一本道で最後に大量のモンスターを配置するような力押しの方が有効だと思えるくらいだ。俺が駄目だといったあとで少し頬を膨らませたのは可愛いかったけどなぁ。
戦闘訓練じゃ、level70をクリアしていた。一日で50から始めて、何度か負けながらも70まで進むとは……桜と同等の成長スピードだといえる。最初からレベル400をクリアできるようなモンスターもいるが、そういうモンスターは最初から強くて、その後は殆ど成長しないような種類が多い。ちゃんと言えば訓練してくれるが、現状の強さに酔っている感じがある。となると、頑張り屋な桜と藍は今後の成長が楽しみになってくるな。
桜はlevel200をクリアできた。できたけど……level204で10連敗してる。level204のプログラムは、人型のプログラムで肉弾戦を使ってくるタイプなんだけど、桜は肉弾戦が得意というわけじゃないから苦戦中。巨体な彼女じゃ小さなプログラムは追いきれないみたい。そもそも、プログラムの動きが鬼畜すぎるんだけどね……さすがに速すぎて少し引いた。
他にもランダム召喚をひたすら試した結果、何体かのレアモンスターともいえる驚異的な強さを誇るモンスターを入手することにも成功した。彼らの現在の戦闘力は計り知れない。でも、訓練装置のlevel400を瞬殺する程度には強い。全部で7体いるから、300F~900Fの百の階層毎のボスを任せてある。1000Fは藍が、1100Fは桜がいるからその7つ前を……ね。これからもダンジョンは増築していくから、段々と深い階層を任せることになると思うけど。
「んーっと、ほい420F終了。紅はどこまで終わった?」
「423Fまで。425Fまで終わったらモンスター整理をしたいから426Fからお願い」
「ほいほーい。じゃあ罠ばっかりの厳ついエリアにしちゃおっかな。この辺に伏兵を設置して……」
今日も今日とてダンジョン製作を続ける。
最近は挑戦者も多くなってきた。先日訪れた冒険者風な5人組を生かして返したおかげかもしれない。大量のお土産を持たせて返したら、数日後から次々と似たような冒険者が来るようになった。他にも商人?みたいな人が大量の人を雇って資源を取ってったりしていた。バレないように数人は頂いたけど、最終的にはバレバレだったみたいで、雇い主の商人は焦っていたっけな。見てるぶんにはかなり面白かった。
3Fと4Fには、俺が持っているなかで戦闘能力が低い順にモンスターを配置してある。挑戦者にボコられることが仕事な彼らだけど、本人たちは楽しそうだ。なんでも自分たちなんかにビビる挑戦者が笑えてくるんだとか。そりゃあ基本的には不意打ちが基本だからなぁ。天井から巨大な芋虫が降ってくれば俺だってびびる。極稀に、糸がぐるぐる巻きにされて負けてしまう挑戦者もいるわけだし。そんなマヌケはちゅーちゅーと吸われちゃうわけだけど……DP美味しいれす。
1000F以降は、1Fの増築にDPが1000も必要だから中々にダンジョンが深くならなくなってきた。でも、目指せ9999Fだから。何日間の間、そのイベントとやらが続くのか知らないけど、9999Fもあれば俺が負けることはなくなるだろう。ま、慢心はいけないから、できれば20000でも30000でもDPが続く限り深くしていく予定だけど。
召喚にもDPを使いたいけど、強いモンスターがでる確率が低すぎるんだよなぁ。しかも偏ってる。10000消費してもでないこともあるし、2連続ででたこともあった。
もっと運が良ければなぁなんて考えることもある。っていうか、他のダンジョンマスターはどのくらいの戦力を持っているんだろうか。情報が無いから、自分のダンジョンがどの程度の物なのかもわからない。もしかしたら、俺の想像をこえるようなダンジョンばっかりの可能性だってあるし……不安にもなってくる。
「でも、パソコンばっかの作業にも飽きたなぁ……よし、level2にでも挑戦してくるか」
デスクの下に転がっていた長剣を手に取り、上の階層に上る。
上の階にはlevel100~400のプログラムがインストールされた訓練装置が設置してあった。桜と藍が普段から使用しているものだ。ぴぴっと設定を終えて、level2のプログラムを起動させる。
一瞬で辺りの景色が変わる。一面に草原が広がるフィールドには、一個のプログラム……人型のモンスターがいた。爪が長く、牙の鋭いモンスター。俺は長剣を構えて、プログラムの様子を確認する。
「グルルルルルぅ」
「ようし、行くぜ……!」
長剣に付加された速度上昇の魔法と腕力上昇の魔法を発動させて、一気に走る。
まるで陸上の選手になったかのような俊敏な動きで、プログラムに近づいた。「だりゃああ!」と雄叫びを上げながらプログラムの右腕を斬る。一刀両断といった具合に右腕を斬り飛ばし、そのまま胴体を斬ろうとするが……。
「グルァ!」
「ぐはっ!?」
蹴 ら れ た 。
「まさか、一撃で負けちゃうとはなぁ」
「ぷぷ、ショウヤ弱い」
「紅だって人型じゃlevel1すらクリアできなかったじゃん」
「……できるし」
そのままスマホを置いて、愛用の鈍器を両手で持って階段を上がっていく紅。でも、数分で帰ってきた。
「開幕で攻撃魔法とは……さすがプログラムは容赦ない」
「……ふん」
椅子に座ってスマホを再開する紅。
鈍器でプログラムを殴ろうと近づいた彼は遠距離から滅多打ちにされていた。俺は回避主体で近づいて、ナイフで叩き斬ったけど。重い武器なんて選ぶからそうなるんだよ。
やっぱり俺は戦力外かぁ。
戦闘訓練を続ける桜と藍の姿を眺めながら、せっせとダンジョン製作に精を出す俺と紅であった。




