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第24話 迷宮主は地球人(4)

 ダンジョン生活100日目。



 遂にこの日がやってきた。ダンジョンの1Fが、外の世界と繋がる日。


 「よーし、紅! 1Fの様子はどうだ?」

 「どうだーって、誰もいないよ……」


 「ん、テンション低いなぁ。挑戦者が入ってくるかもしれないから、常にモニタリングしていないとな!」

 「来るわけがないよ。入口が開いたからって、外から見たらただの洞窟なんだから……」



 確かに、外から見ればこのダンジョンはだたの洞窟に過ぎない。でも、一度入ってみればわかる。ありえない程に豊富な資源量、奥に入れば希少な鉱物だって手に入る。モンスターがいるのは6Fからだから、5Fまでは天国なはずだ。


 「はずなんだけど……CMも広告も無しじゃあこんなもんか」

 「僕が宣伝してこようか?」


 「宣伝?」

 「うん。適当に鉱物掘って近くの街に行ってさ、近くの洞窟にたくさん転がってましたーって」



 それは良い手だけど、殆ど戦闘能力のない紅を一人で行動させるわけにはいかないよなぁ……死んでも復活できるダンジョンモンスターは基本的に不死な存在ではあるけど、ダンジョン外で死んだら本当の意味で死んでしまうから。

 俺が直接行ければ一番良いんだけど、俺はダンジョン外に出れないからなぁ。


 「じゃあ残念だけど、今日もダンジョン製作かぁ。俺は350Fから360Fに手を付けるから、紅はモンスターの管理と360Fから365Fをよろしく頼む」

 「ウォン!」


 「そうだな。桜はlevel171に挑戦するんだっけな。後で見るから、挑戦する前に一言よろしくな」



 中型犬程度までサイズを小さくしている桜が、俺の膝の上に頭をのせて、吠えた。

 先日、level150の訓練を終えた辺りで、許容範囲外のデカさになった桜だけど、こうして身体の大きさを変化させる技術を紅から学んだ結果、その巨体を自由に変化することができるようになった。紅の身体は、元々が炎100%で構成されているらしく、俺の前では人型にしているんだと。炎の身体であれば、level30くらいは楽々突破できる程度の戦闘力はあるらしい。俺のlevel1とは一体何なのか。


 ……いいんだ。俺はパソコンでの作業が専門。俺が前線に出るときは、マジで壊滅寸前の時だけだろう。ダンジョンモンスターたちが勝てない相手に、俺が勝てるわけがない。

 ダンジョンを改築していく。俺にはプログラミング技術なんて無いが、ダンジョン製作ならできる。どうも製作技術が脳に直接書き込まれているようなんだ。俺がここに拉致された時に、催眠学習みたいな感じで強制的に勉強させられたんだろう。


 350Fはどんな感じにしようか。300Fは100Fと200Fをクリアした上級者むけのダンジョンだから、容赦なく殺しにいくことができる……っていう設定だからなぁ。この辺に罠を張って、それを感知した挑戦者がモンスターの狩場に追いやられて……みたいな感じでいいか。

 モンスターの種類は、ゴツイ前衛に、ブレス系の遠距離タイプ、弓なんかを使える種族と、本命の暗殺特化のこいつかな。適当にプランを作成して、紅のスマホへと情報を送信する。

 紅のデスクでは、足を組んで背もたれに背を預けて、スマホをいじってる紅がいた。どこの不良中学生だと言いたいが、やってることは仕事だけという真面目っぷり。一分もしないうちにプランが書き換えられて送られてきた。俺が選んだモンスターじゃ同じフロアに住ませるには不向きなんだと。似たような特性のモンスターで別の編成が送られてきたから、そっちでモンスター配置を終える。


 罠なんかは似たようなパターンを複数組み合わせて、挑戦者に読み取られずらくしておく。この辺なんかは、俺が勉強していた精神医学を応用している。Aの状況に陥った挑戦者が取る行動は、B~Fの5パターン、更に各行動に陥った挑戦者は~と言った具合で挑戦者の行動を確率で見てから罠を組み合わせるんだ。でも、俺が知ってるのは危機に陥った現代人の思考……だから、異世界人の心を調べる必要があるんだよなぁ。だから、さっさと挑戦者に来て欲しいんだ。


 ふんふんふーん♪と、鼻歌を歌いながらダンジョン製作を続ける。

 パソコンの画面端では、訓練装置が生み出したモンスター擬きとの戦闘を繰り広げる桜の様子が映っていた。level170を超えたプログラムは、キロ単位のフィールドの広さを利用しながら……つまり、桜とは一定距離を常に取り続けながら、雷の魔法を発動していた。アホみたいな速さで迫るそれを回避しながら、全長が20メートル近い巨体を操ってプログラムとの距離を詰めようとする。

 でも、プログラムの方も中々に素様しく、桜が一歩詰める度に、同じくらい後方へと移動しながら遠距離攻撃を続けていた。桜は、霧というか煙のような防御魔法を展開して、雷の放電を防ぎながら、雷本体の射線上から退避する。

 二人とも強えー……桜も強いけど、あの巨体とまともに戦えるlevel171のプログラムもかなり強い。そろそろlevel200~300のプログラムも買わなきゃいけないなぁ。3000DPか……高いなぁ。俺の冷蔵庫に新商品を30個仕入れることができる程度に高級品だ。もし、この戦闘訓練プログラムが実践で使えればかなり便利なんだけど、それはさすがにできない決まりみたいだ。


 うーん、中々決着がつかないなぁ。桜は攻撃力より防御力の方が高いから、あのプログラムとは相性が悪いんだよ。あのプログラムは例え卑怯な戦法だとしても、最適解だとわかれば普通に使用してくるから。桜は100メートル以上遠くにいる相手への攻撃方法が皆無だから、敵を倒すためには近づかなければいけない。それに対してあのプログラムは、300メートル程度の範囲までは雷を伸ばすことができる。つまり、101メートルから300メートルの距離を取り続ければ、負けることはない……か。

 

 あ、桜負けちゃった。一発当たっただけでアウトとか、難易度高過ぎだろ。しょんぼりしながら戻ってきた彼女を慰める。よしよし、残念だったなぁ。


 「クゥーン」

 「ははは、また後で挑戦すればいいさ」



 小さくなった桜を撫でながら、ダンジョン製作を続けた…………。

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