第24話 迷宮主は地球人(3)
ダンジョン生活80日目。
ダンジョンモンスターも増えて、ダンジョンの最下層がついに1000階層を突破した今日この頃、俺は……仕事に追われていた。
「うわー、お前ら大量に増えすぎなんだよ! ええっと、空いてる階層はここと、ここで……」
「クゥーン」
桜が「サクラお手伝いできない……」と落ち込んだ。いや、仮に桜に手があったとしても、危なっかしくてパソコンの操作なんて任せられないよ……。何かの間違いでダンジョン崩されても困るし。
つい先日、魔物の数が一定数を超えたので……や、ダンジョンが一定規模を超えたので……等の項目を達成して、ボーナス的なDPを貰うことができた。調子に乗った俺は一気に階層を1002階層まで増やして、大量のランダムや任意でのモンスター召喚をおこなった。それに加えて余った魔物たちを合成させて新たな魔物を作り出す魔物融合の施設を造ったこともあり、管理しきれない程のダンジョンモンスターを抱えることになってしまった。
昨日だって2時間しか寝てない。他の22時間はずっとパソコンの前に座ってダンジョン管理をしていた。睡眠の必要性が薄い迷宮主族だけど、精神を安定させる意味合いも込めて睡眠は大切なので、最低でも一日6時間は睡眠時間を確保したいところ。
正直、他のダンジョンマスターよりも確実に真面目にダンジョンを作っている自信がある。200階層までは本格的なダンジョンになってるし、桜がlevel100をクリアしてから余った訓練施設を300階層で公開してから、段々と強くなっているモンスターたちの管理にも手を抜いていない。
強いモンスターを深い階層に移動させて、弱いモンスターを浅い階層に移動させる。モンスターの種類、相性によっては編成も考えないといけないし、水辺での戦闘が得意なモンスターの為に多少の水場を用意することになってしまった。当初の予定とは違うが、100階層以降にはモンスターの得意なフィールドを作ることになってしまった。
そんな内装を、全て作らなくてはならない。オーバーワーク。とてもじゃないが、一人で抱えきれる仕事量ではないんだ。俺は泣く泣く、二度目の秘書モンスター召喚をすることになってしまった。
本当なら、DP2000を消費する秘書モンスター召喚より、DP100のランダム召喚を20回やった方が美味しいんだ。珍しいモンスターが召喚されることもあるし、強いモンスターだって以外とたくさん召喚される。秘書モンスターは他のモンスターと違って知性もあって賢いけど、戦闘能力が最強というわけではないからね。実際、桜より強いモンスターだって何体かいるわけだし……。桜はlevel128だけど、レアモンスターのオークキングなんかは既にlevel200を一発でクリアしてる。次の訓練施設は3000DPだからまだ買えないけど、level200を余裕でクリアしてたから実際はもっと強いのかもしれない。
秘書モンスター召喚をクリックして一時間、100の質問に答えていく。
今回は人型で、炎属性。男で未成年、戦闘力は無いけど、頭は良い。そんな感じに質問を答え続けた。
「よろしく、ショウヤ」
鮮やかな赤色の髪をした男の子が、そう言いながらキョロキョロと辺りを見回した。
見た目は完全に中学生くらいの少年。む、美少年か……桜とは違い、おれのことを呼び捨てで呼ぶ。そんな少年に、紅という名前を付けた。髪と眼が赤色だし、紅って感じがしたから彼にぴったしの名前だ。
「よし、紅。お前にはダンジョンの管理を任せる!」
「?」
はてなマークを浮かべる紅に、ダンジョンの管理方法を教える。
約一日かけて、俺の知る全ての技術を彼に教え込んだ。残っているDPの大半……DP5000を消費して、スマートフォンを入手した。DP5000のスマホ。これを使えば、遠隔操作でのダンジョン管理ができるんだ。
勿論、パソコンよりも機能は少ない。劣化ダンジョンコアと呼べるもので、DPを使って資源や施設を増やしたり、モンスターを召喚することはスマホの方ではできない。できることと言えば、ダンジョン管理とモンスター管理くらいだ。これを紅に渡して、ダンジョン管理を手伝って貰うことにした。
ダンジョン生活85日目。
紅を召喚してから5日後、睡眠時間も増えて、多少は楽な生活に戻ってきた。
想定していたよりも、100倍くらい紅が優秀なんだ。本来の秘書モンスターにはこれほどまでの知性があるのか!?と驚いてしまったほどである。桜はどっちかといえば戦闘用のモンスターに分類されるのかも。紅は俺より弱いからなぁ。
戦闘能力が最低値に設定されているらしい迷宮主族の俺だけど、最近は戦闘訓練をすることもある。俺じゃlevel2すらクリアできないけどね。level1はぎりぎりでクリアできたけど、level2は無理だった。紅はlevel1すらクリアできなかったから、根っからの頭脳派なんだと思う。
「ダンジョンモンスターの配置はこれでいいかな。まったく、ショウヤは僕がいないと本当にダメダメなんだから」
「ウォン! (主様はダメダメじゃないもん!)」
「いーや、ダメダメだね。ほら、見てよサクラ。戦闘能力が同じくらいだからって、相性がめちゃくちゃなんだ。綺麗好きの妖精と暗所が好きな妖精を同じ階層に配置してるんだよ。こんなんじゃモンスターにストレスが溜まって100%の力が発揮できないかもしれないじゃん」
「ワウ? (うー、難しいことサクラわからない)」
え、だってそれは……同じ妖精だし仲良くしろよっていう俺の心優しい配慮があったりするんだよ。
でも、紅は種類の豊富なモンスターを細分化して、細かに配置を変えたりしている。ダンジョン製作だって上手い。俺がイメージしてるダンジョンを汲み取ってくれている。
ダンジョンマスター歴85日の俺より、5日の紅の方がダンジョン管理技術が高いんじゃないかと内心そわそわしてる。だけど、罠の配置とかモンスターへの命令なんかは、まだまだ俺の方が上手い。紅の操るゴブリン20体を、俺はゴブリン10体で倒すことができる。
ダンジョンには資源が豊富だから武器なんかもたくさん作ることができる。鍛冶好きなモンスターが武器を求めるモンスターから素材を貰って武器を製作していたり、モンスター自ら自信の武器を見つけていたりと色んなパターンでモンスターたちが強くなっている。
武器を見つけるというのは、ダンジョンには武器が生成されることがあるんだ。確率は低いけどね。俺のダンジョンは1000階層あるけど、一日に生成される武器は精々が2~3個程度で、それを入手できてモンスターは他のモンスターから羨ましがられている。うちのモンスターは仲が良いから。100階層毎に配置し直した訓練施設を使って、自信の記録を自慢し合っている。
秘書モンスターとは違って知能は低いけど、まったく無いってわけじゃないんだ。仮に挑戦者に負けたって、時間経過で復活するダンジョンモンスターはどんどん強くなる。あと15日、どこまで粘れるか……よし、頑張るかぁ。




