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第24話 迷宮主は地球人(2)

 ダンジョン生活50日目。



 ダンジョンの入口が外の世界に解放されるまで残り50日、未だに俺のダンジョンモンスターは桜だけだった。まぁ、階層の方は既に500階層を超えているんだけど。


 84階層までは内装の方も作り始めている。

 序盤のテーマは"攻略に嫌気が差す"ダンジョン。例えば、5Fには水源がある。食糧も豊富だし、4Fまでの洞窟とは違って緑の多い心地よい階層だ。でも、次からは永遠に水がない。食糧も無い。挑戦者はこう考える。次の階層には、また5Fみたいな水が、食べ物が、あるんじゃないか……って。こんな嫌がらせを多くするように心がけたりしてる。


 4Fからは鉱物の資源を設置してあるから、5Fを中心に3~4Fと6~7Fまでを探索するような挑戦者が一定数欲しい。ダンジョン内で生き物が死ぬとDPになるんだ。ダンジョンモンスターは0Pだから儲からないけど、他の生き物なら、例えば紛れ込んだネズミでも、忍び込んだ小虫でも、DPになる。小さい虫なんかじゃたくさん殺してようやく1DPだと思うけど。


 こうやってダンジョンを作ってると、悪の大魔王にでもなったかのような気持ちになってくる。外の世界はファンタジー世界らしいから、冒険者なんて人たちもいるみたいだ。きっと、俺のダンジョンを冒険してくれるはず。人を殺すことに抵抗はない。どうも、人間から迷宮主族に変わった時に、頭を弄られてるみたいなんだ。以前の俺では考えないような惨いことでも、平気に行えるようになっていた。


 最初は自分の心が変だなんて思いもしなかったんだけど、ふとした拍子に気付いたんだ。

 これでも現代の精神医学を学んでいる身、俺だからこそ気付けたんだと思う。


 「ワウ」

 「ん、どうした?」



 俺の心を案じてか、桜が足元に寄ってきた。

 つい先日、隣りの部屋、つまり最下層の一つ上の階層に訓練場を作ってからというもの毎日数時間に及ぶ戦闘訓練を続けている桜は、大型犬程度まで成長していた。椅子に座っている状態でも、横に手を伸ばすだけで背中を撫でることができる。

 驚くことに、桜は魔法を使うことができるんだ。1000DPで作った戦闘訓練ができる施設で日夜モンスターの姿を模したプログラムみたいな物と戦っている。ダンジョンを作るのに疲れた時とかに、眺めることがあるんだ。


 煙みたいな魔法を操って敵の攻撃を防御しながら、隙を見て攻撃する。それが桜の戦術らしい。オオカミだからって、牙と爪を使うとは限らないみたい。その訓練施設の難易度設定は、限界がlevel100まであるんだけど、桜は既にlevel43まで順調に進んでいる。秘書モンスターとして、このダンジョンのラスボス的な位置に存在する彼女だから、毎日頑張っているみたいだ。


 「桜ぁ、今日はダンジョンモンスターを召喚するぞ」

 「ワウワウ!」



 可愛いなぁ。体は大きくても、生まれて50日しか経ってないから精神はまだ幼い。『主様!撫でて撫でてー』と催促してくることもある。このサイズになってからでも、『一緒に寝たいですー』と寄ってくるくらいだ。ベットを頑丈な物に変えて、一緒に寝ている。

 桜を撫でながら、ダンジョンの6階層にモンスターを召喚する。ダンジョンレベルが1なので、任意に召喚できる魔物は少ない。スケルトンの召喚を5回、ゴブリンの召喚を5回、ランダム召喚を1回の計11回試した。

 

 DP600を消費したが、6階層にはたくさんのモンスターが召喚された。

 骨人間のスケルトン。緑色の醜い小人のゴブリン、ランダム召喚の結果は、デカいゴブリンのボブゴブリンだった。ボブゴブリンをリーダーに他の5体を纏めさせ、大き目の空間を作ってからそこで暮らすように命令をだす。5階層に食糧があるぞと階段の場所も教えて、続いてスケルトンの部屋を作る。スケルトン……育てたら増えるのかな?



 498階層にも森を作って、497階層と499階層をモンスターの育成階層にする。6階層でゴブリンが増えたら、こっちに避難させるか。モンスターたちは特に食べ物を与えなくても大丈夫らしいが、与えた場合は時間と共に個体数も増えるらしい。この仕組みを利用して少ないDPで多くのモンスターをゲットできれば、DPの節約になる。

 

 現時点で最下層、つまりマスタールームが502階層だから、育成エリアは殆ど最下層付近ということになる。適当な場所に作って、挑戦者に食糧豊富な森を利用されるわけにはいかないから妥当かな。5Fだけに食べ物があるってのが、挑戦者を深層まで潜らせない秘訣だから。


 因みに、育成エリアを作らず、森も撤去した場合……つまり餌を与えない場合でも、共食いや捕食行動はしない。モンスターの中には他のモンスターを捕食してしまう種類もいるが、そんなモンスターは単独で行動させれば済む問題だし。仮に食べられてしまっても、ダンジョンモンスターは一定時間経過すると再生する仕組みだから問題ないみたい。




 召喚はこれで終わり。

 強いモンスターの召喚はDPを多く消費するから後でいい。挑戦者が来てからでも間に合うわけだしね。また、何時もみたいにダンジョンを作る工程に入る。


 パソコンでのダンジョンを作り。これが、今の俺の仕事。他にすることと言えば、桜と遊んだり風呂に入ったり……だけ、かな。暇な時はずっとダンジョン作って遊べるし。下手にDPを消費できないから、娯楽施設を作りまくるわけにはいかない。精々が、風呂と飲み物、お菓子と縄跳びくらい。運動不足になるからと、縄跳びを跳ぶのはいいことでしょ? DPに余裕ができたらプールも作りたいなぁ。


 ただ、最近は……勉強してたことを忘れてるみたい。高校に戻った時にやばいかもしれない。せっかく学年上位の成績を守ってきたのになぁ……少しショック。


 戻る……か。

 その時は、桜ともお別れなのかも……いや、そんなことはまだ考えなくてもいっか。そんな、何年も先のこと。


 今はダンジョンを作らなきゃ。手をつけてない階層が、あと400階層もある。

 俺は天国に行くためだと、今日もダンジョン製作に励むのだった。





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