第24話 迷宮主は地球人
ダンジョン生活一日目。
目が覚めたら妙な部屋の質素なベットの上だった。
……何処だ、ここは?
待てよ……一回落ち着こう。俺の名前は喜連翔耶。18歳。趣味は精神医学の勉強で、運動は苦手、でも水泳と縄跳びだけは得意な、どこにでもいるような何の変哲もない高校生……なはず。
なのに、拉致された?
確かに両親は医者だが、あまり裕福な家庭じゃないから身代金目的にしてもオススメできない。俺を拉致するくらいなら他にいくらでもいるぞ、もっと儲かりそうな子供は……。
拘束はされてない。手足も自由だし、体を起こしてみる。
本当に妙な部屋だなぁ。家具がベットと、小さな机が一つ、椅子はない。机の上に、ノートパソコンが置いてある。先日遊んだ脱出ゲームじゃ、こんな状況ではパソコンを起動させるのがセオリーだったけど……。
パソコンの電源を入れる。
知らないロゴが移って、黒色の背景に白色の文字が大量にでてきた。
【あなたはW7を代表するダンジョンマスターに選ばれました。以後、あなたをP7と表記します】
【ここはP7が済んでいたW7とは異なる世界です。以後、この世界をW13と表記します】
【P7には760日後に開催されるイベントに使用するダンジョンを製作して頂きます】
【P7が製作したダンジョンがW7のダンジョンとなるので、他世界のプレイヤーに攻略されないようなダンジョンを製作することを推奨します】
【ダンジョンについての詳細は《ダンジョンとは》の項目をクリックして下さい】
【100日後にダンジョンの入口を解放します。760日後までにダンジョンを攻略された場合は強制敗北となってしまうので注意が必要です】
【P7のダンジョンコアはこの端末となります。この端末が破壊されることで、ダンジョン攻略となります。ダンジョン攻略をされた場合、P7の敗北となります】
【ダンジョンマスターとなったP7の種族は人族から迷宮主族に変化しています。迷宮主族は食事、睡眠、排泄を必要としません。ですが戦闘能力が最低値となっていますので注意して下さい】
【ダンジョンモンスターがダンジョンマスターに危害を加える可能性はありません】
【24時間毎にダンジョンポイントが与えられます。有効活用して下さい。以後、ダンジョンポイントをDPと表記します。詳細は《DPとは》の項目を確認して下さい】
……………
………
…
全文を読み終えるには、実に数時間の時間を要した。
理解し難いが、俺は異世界でダンジョンを作る仕事を任されたらしい。地球人代表として、地球以外の奴らが攻略できないような難しいダンジョンを700日かけて作らなきゃいけないんだって……これに書いてあった。
ははは、こんな突拍子も無い話、誰が信じるかって……俺が信じるよ!
うひゃー、マジかよ。アニメやゲームじゃないんだぞ、これ。
ダンジョンかぁ。昔に、父さんが似たようなゲームをやり込んでいたっけ。そのゲームじゃあ、取り合えずは深い迷宮を造れば大丈夫って父さんが言ってた。いい大人がゲームしてんじゃねぇよって馬鹿にしてたけど、こんなところで知識が役にたつとは……父さん、ごめんよ。
初期DPは10000P。
マスタールームの改造に1000P、秘書モンスターの召喚に2000Pを消費して、残り7000Pを使って階層の増築を繰り返す。
これで、72Fのダンジョンになった。
秘書モンスターの召喚。DPを2000P使って、知能の高い……俺のダンジョン生活を手助けしてくれるような知性のあるダンジョンモンスターを召喚することができる……らしい。ダンジョンモンスターとは、ダンジョンに生息している魔物のこと。つまり、知性のある魔物を召喚できるみたいだ。
クリックしてみる。
すると、【01:00】の表記がでてきた。あと一時間で魔物が召喚されるって感じかな。暇を持て余したので、DPで購入した風呂にでも入ることにした。
「いい湯だったなぁ」
風呂から上がって、元の部屋に戻る。
まるで高級住宅についているような、立派な風呂だった。お湯だって温度調節が完璧だし、シャワーだってついていた。完全に娯楽の為にDPを消費してしまったが、500Pなので一日待てば回復できる十分に量だ。DPは一日辺り1000P貰えるらしいし、これくらいなら精神安定のためにも必要経費だよね。
冷蔵庫(100DP)を開けて、オレンジジュース(無限沸き100DP)を取り出す。冷えた飲み物で喉を潤しながら簡易な椅子(100DP)に座って、ノートパソコンの画面を見つめる。あと30分。
適当にダンジョンを作っていたら、いつのまにか30分が経過していた。召喚画面をクリックすると、いくつかの質問を問われたので、順番に答える。
【人型/獣型】には、獣型をクリック。人型の魔物とか怖すぎだろ……。
【オス/メス】には、メスをクリック。これはどっちでもいいや。
【小型/中型/大型】には、中型をクリック。大型の魔物とかなにそれ怖い。でも、小型だと戦力にならないので中型にしてみた。
【二足/四足】には……って、いつまで続くんだ?
…………。
……。
…。
「【白色/黒色】には、白色を……って、さっき毛並は桜色って言ったじゃん! うがー、いつになったら召喚されるんだぁー!」
ありえねぇ、既に50回くらいは選択を続けていた。
その後、更に50の質問に答えた後で、秘書モンスターが召喚された。
「ウォン!」
「やっとでてきたかお前ー、可愛いなこの野郎ー」
白色の毛並に、桜色のワンポイントがあるオオカミ。それが、今回召喚されたモンスターだった。知性があるので、俺の言葉を理解してくれるらしい。
「そうだなぁー、名前は……桜がいいかな。綺麗な模様だし」
「ワウ?」
「お前の名前は桜だ。一緒にダンジョンマスターを目指そうぜ!」
「ウォン!ウォン!」
ふと、『がんばろうね、主様!』なんて子供っぽい声が頭の中に聞こえてきた。そうか、桜は話せるのか。さすがDP2000のダンジョンモンスター。通常のモンスター召喚は最低値が100Pだからなぁ。モンスター20体分の価値がある。
今日はまだ一日目。ダンジョンの入口が解放されるまで、あと99日もある。残り99000Pをどう使おうかなーなんて考えながら、桜と一緒にベットに入った。枕(DP100)と布団(DP100)を追加してあるから、もう質素なベットとは言わせない。
精神も安定してる。頑張れる。ノートパソコンの話が本当なら、地球の神様から任された大事な仕事なんだ。立派なダンジョンを作って、死後の天国ルートを確約されてやる。死後の地獄行きが既に決まってるとか、嫌過ぎだからね。
「頑張ろうな桜ぁ」
「クゥーン」
温かい。桜を抱きしめながら、眠りに落ちた。




