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第16話 薄く延ばして

 むしゃむしゃ、いやー、タイヤキって美味いよな。

 中には餡子がいっぱいあってすごく甘いし、外も外で地味に美味い。

 それに、甘い物を食べると心が癒されてくる気がする。妙に落ち着けるっていうかね。

 だから、こんなわけのわからない状況でも、俺はこうして落ち着いていられる。



 足元には、深く掘られた変な魔法陣みたいなものがあって、目の前には騎士みたいな人が三人と、宗教系の服?を着た人が同じく三人いた。それに対して魔法陣の上にいるこっち側の、俺たちサイドは四人。

 騎士と司祭?みたいな人。そんな怪しい彼らに怒涛の勢いで質問を繰り返している若い男と女の二人組。ブレザーの制服姿ってことは、俺と同じくらいの年齢だと思う。

 男の方は、運動部にいそうというか、チャラいスポーツマン風のイケメンだ。面前のおじいさんに向かって「ああ?」だの「わけわかんねえよ!」だの怒鳴り散らしている。DQN怖ええ。

 女の方は黒髪ロングの、清楚そうな、まるでクラスの委員長でもやってそうな女だ。話している言葉自体は丁寧言葉だけど、明らかにキレてる。ああいう女は怒らせると怖いんだよな。ソースは俺のクラスの委員長。ちょっと小馬鹿にしただけなのにあの女、怖すぎて泣きかけたもん俺。

 そんな二人をぼーっと見てるのは俺&隣にいる少女。こっちの子は明らかに年下で、多分中学生だと思う。黒いセーラー服姿が可愛い。試しに「タイヤキ食うか?」って聞いてみたらコクっとうなずいてくれたので、手元の袋から一つ取り出して手渡す。それをパクパクと食べ始める少女。癒されるわー。

 紙袋の中を見る。あと六匹か。隣の少女にもう一つわたして、俺も次のタイヤキを食べながら、騎士&おじいさんと怖い高校生達の話の聞いていた。




 どうやらここは異世界らしいな。俺たち四人は神の使徒として召喚されたらしい。

 使徒。勇者じゃなくて使徒かー。異世界に召喚つったら勇者が魔王を倒すのがセオリーなのにな。召喚って……あ、あれがそうだったのか。

 屋台でタイヤキ買って、熱々で、本当に美味そうだったから待ちきれずに公園のベンチで食べ始めたんだった。そしたら突然足元が光り出したんだよな。あれが召喚ね……ちゃんと行儀良く、家に帰ってから食べればよかった。

 なんでも、怖い高校生二人……真哉(しんや)と澪(みお)が聞き出した話によると、世界中の教会に俺たちみたいな境遇の、つまりどっかから召喚された使徒がいて、数年後に始まる戦いに備えて力をつけなきゃいけないんだってさ。使徒全員で協力して、剣とか魔法とかで戦うんだって。

 召喚された時点で魔法が使えるようになってるんだと。戦う為とかで、ここの教会から武器まで支給されちまったぜ。俺の武器は変な杖。これ、すごい短いんだ。シャーペンに似たサイズ感。おかげで手に馴染んじまうよ。

 真哉はでっかい剣だったな。イケメンにはイケメンな武器か……嫌な世の中だね。澪は弓。弓道部だったんだってさ。そんなこと言ったら俺だって中学んときは剣道部だったわ。剣寄越せし。

 俺の天使こと玲奈(れいな)ちゃんには盾と小さい剣。この子が前衛かよ……。変わってあげたいけど、この杖とじゃ交換してくれないよな……。その辺の木の枝に丸いなにかをぶっ刺してはい完成!って感じだし。





 初めて魔物を倒した。しかも俺の魔法で。感動だわ。でも、前衛組は辛そうだった。玲奈ちゃんだけじゃなくて真哉までげっそりしてる。そりゃそうか。返り血めっさ浴びてたし。

 どうも俺たちは魔物を倒せば倒すほど強くなっていくみたいだ。そう説明された。なんでも、教会に神様からのありがたいお言葉集が分厚い本で送られてきたんだと。全然ありがたそうじゃねえなって言ったら怒られた。

 んで、それに従って俺たちの召喚と育成をしてるってわけらしい。他のお偉いさんに隠れてこっそりと、仲の良い司祭から聞いた。

 使徒なんてかっこつけて呼んでるけど、ようは使いっパシリってことだしな。戦奴隷的な。待遇は良いとしても、やることは同じだ。神の御心の侭にってな。






 教会に新たなお告げがあった。今日から丁度一年後に、戦いが始まるらしい。

 俺たちは一年後に向けて、力を付ける為の旅をすることになってしまった。これからは一々ここに戻ってこなくていいわけだが……。良い酒が飲めなくなるな。ここの司祭、信者に隠れて酒だ女だってはっちゃけてるからなー。俺も混ぜて貰ってた。この世界は15歳で成人だから、17歳の都川礼二(つかわれいじ)くん、つまり俺はもう大人ってわけだ。

 そこでさ、俺はすごい体験をしたよ。所謂3Pとか4Pってやつ。初めてだよ、美人のお姉さま相手におじさん達と一緒にさ。そりゃもう優しくしてもらいましたとも、ええ。特別に最初を譲ってもらった。仲の良いおじさんの裸姿って、微妙に嫌だもんなんだな。

 

 この教会ははっきり言って危険だ。

 戦いから逃げようとした使徒が殺されたなんて話もあるし、それじゃなくたって専門の殺し屋集団を飼ってるような奴らだ。俺以外の三人は、そういう裏の情報を知らないだろうけどな。気楽だよね。

 俺はこういう情報を集めるのが趣味だから。酒の席じゃあ口が滑るなんてよくあること。そういう魔法も覚えたし。精神誘導魔法っていうんだけどな。

 でもなあ、うーん……なんだかんだ言っても、俺はこの教会が好きみたいなんだ。この二年で仲良くなった司祭もいるし、可愛いシスターたちともちょっかい出し合う程度には顔見知りになってきたのに。

 まあいいか。暇見つけて戻ってくれば。

 これからは真哉と澪と玲奈ちゃん、それと俺の四人旅だ。精々死なない程度に頑張りますか。






 走る、走る、走る。背後から迫る舌を右側に跳んで回避する。そのままスムーズに一回転して、動きを止めないように意識しながら走り続ける。

 左手で先程作成した水魔法水刃(ウォーターソード)を握りしめながらながら、俺に舌で攻撃してきた蛙を姿を再度確認した。

 

 その蛙の正体は、Fクラスの魔物。

 種族名はヒートード。全身が赤色をした大蛙である。

 どういうわけか何度切り落としても瞬時に再生する舌、全高は4~5メートル。多少大きめだが、ここまではまだ一般的な魔物といれる。

 驚異的なのはここから。明らかに全長が10メートル以上はあるその巨体。全身にあるイボからは火属性の魔法を飛ばしてくるので、側面、背面に回って攻撃というわけにもいかない。ならイボの少ない真正面から攻撃すればいいのではと思うが、ヒートード最大の武器であるデカく長い舌が邪魔をしてくる。

 舌。勿論、唯のべろではない。特徴としては、まず攻撃速度が尋常ではない。殆ど一瞬で数十メートルの距離を詰めてくる。しかも聞いた話によれば、その威力は魔法で強化した金属で出来た鎧ですら、楽々貫くらしい。俺なんてプリンとかゼリーのようにぐちゃってしまうだろう。

 更に俺が相手しているこの個体は強化個体なので、舌での攻撃にすら魔力が込められている。同じように全身から火属性の魔力が噴き出ているので、半端な攻撃ではダメージすら与えられない。例えドッペルガンを使用できたとしても、銃弾が溶かされる可能性すらある。50%は物理系だから。Fクラスの中でもトップクラスの力を持つ魔物だ。つまり、このダンジョンの五体目である。


 再び俺に接近する舌を、水刃を鞭のように扱って切断する。

 火には水がよく効く。逆もまた然り。俺の水刃が壊れて、俺の手元で綺麗に散った。散った魔素をなるべく集めるように意識しながら頭の中で詠唱を唱える。ルーク曰く、「魔法はイメージだ。慣れれば言葉に出さずとも発動ができる」。ベルフェが邪道と称えるそれを利用して水刃を作成。これで六度目の再生を遂げた奴の舌を攻撃する。

 俺が自由に使える魔法は二種類。水魔法水弾(ウォーターショット)と水魔法水刃(ウォーターソード)と名付けた魔法だけだ。水弾では奴に当たる前に蒸発してしまうので、消去法で水刃しか使えない。常に魔力を注ぎ続けたとしても、奴の舌攻撃一回で壊れてしまう脆い刃。これだけでこいつを倒しきらなければならない。

 俺が今いる場所はF級ダンジョンだ。Fランクの魔物が連続して出現するこの場所に、魔法しか使ってはいけないという制限を付けて俺は挑戦している。このダンジョンをクリアして初めて、魔法の基礎を習い終えたと言って貰えるらしい。

 

 あと少し、あと少しでこいつが倒せるんだ。奴のHPは残り僅か。舌の再生にHPを消費するらしく、なるべく距離を取りながら、舌攻撃への反撃を繰り返して、やっとここまできた。

 俺のMP値にもまだ余裕がある。詠唱を言葉に出す出さないとで消費するMP値が違うから、なるべく節約して魔法を使っている。散った魔素をリサイクルしたり、一回の魔法で戦い続けたり。

 水刃は本来、剣のように使う類の魔法ではない。水魔法水刃(ウォーターカッター)の魔法は遠距離を攻撃する魔法だ。しかし、それだと一回の攻撃で壊れてしまう。10回使っても1~2回しかまともなダメージを与えられないだろう。だから剣のように使って確実に当てる。奴は火属性。水が効くんだ。

 決して俺がウォーターカッターが苦手だからではない。そもそも、なんであんなに薄く延ばさなければいけないんだよ。しかも敵に当たるまで形状を維持しなきゃいけないし。難しすぎるだろ。水弾の方が100倍簡単だわ。適当に魔力込めてはい完成だからな。カッターとかあんなの一ヵ月かそこらの訓練じゃ無理でしょ。

 リラナルテさんもルークも、お前ならできると言ってくれてるよ? でも、無理なんだもん。せめてスキルか技に類似した何かがあればコツでも掴めるのかもしれないけどさ。

 俺の遥か後方では、腕を組んで壁に寄り掛かっているルークが俺と蛙の戦いを見ている。魔法だけで倒す。途中で水刃をちゃんと使え。この二つが今回のオーダーだ。だからそろそろカッターを使わなければいけない……。


 左手でソードを握りしめながら、右手に魔力を集中する。体内に存在する魔素(魔法の元みたいな物。小さすぎて目に見えない)を集めて、それを魔力に変換する。この作業はもう慣れたもので、感覚のみで簡単に行えるようになった。澄んだ青色に変わり、目に見えるまで集めた魔力を、今度は詠唱と共に魔法へと仕上げていく。詠唱の言葉はイメージさえできればなんでもいいので、カッターカッターと呟く。


 「カッター、カッター、カッター……水魔法水刃(ウォーターカッター)ッ!」

 『どんな詠唱よ。もっと魔法っぽく』


 

 黙れ貧乳。ひゅんっと蛙にむかって飛んでいく水刃が、舌の一撃で壊される。ちゃんと形を維持できなかったらしく、舌を少し削った程度で魔法が壊れてしまった。ちゃんと発動できれば切断できるはずなのに……。

 言葉に出して詠唱した魔法は、脳内詠唱版よりかなり少ない消費魔力で発動できる。よし、もう一度だ。

 

 こちらに迫る舌に柔軟性を持たせた鞭のようなウォーターソードを絡ませながら、カッターを使う。


 「カッターカッターカッター……カッター行けッ!」

 『奴を切り裂け、水刃!とかじゃダメなの?』



 今度はさっきより良い感じに発動することができた。まるでアニメのキャラクターが放つ斬撃のように飛んで行った水刃が、舌を半分程まで切断する。ソードを舌から離して、治りかけている舌に三度目のカッターを発動する。

 三回の水刃の効果でボロボロになった舌が蛙の口内へと戻っていく。よし、攻撃チャンスだ。

 俺は蛙にむかって走りだした。全身に付いているイボイボから火魔法が飛んでくる。でも、舌攻撃よりは遅く、動きも単純。それを避けながら接近した俺は左手のソードを奴にぶつけながら、四度目の水刃の詠唱に入る。あ、いい詠唱を思いついた、これでいこう。


 「奴を切り裂け、水刃ッ!」

 『……。』



 更に完成度の増したカッターが蛙に命中する。だが、完成度が増したといっても、本来の力を発揮できていないようだ。俺が見本として見せて貰ったルークの水刃は、大型の魔物を一刀両断していた。俺の水刃は蛙の皮膚に傷をつけた程度。弱点属性でもあったし、HPダメージとしてはそれなりに効いたけど、やっぱりカッターは難しい。

 俺の魔法はヒートードの魔力により壊れてしまった。全身から噴き出た火の魔力が、魔法といっても、主成分は水である俺のソードを蒸発させる。舌を回復させる度にこうやって威嚇してくるんだ。

 

 熱気に当てられて体力が奪われる。頭も痛い。意識も朦朧としてくる。

 こいつを倒して、早く帰ろう。帰ったら、ミレアでも探して抱きしめよう。あいつ、体温低いから、きっと冷たくて気持ちいい。


 俺は両手に水魔法水刃(ソード)を発動して、蛙野郎に斬りかかった。








 

 □□□□□□□□□□□        


プレイヤー名:みきゅあ  


出身:第七世界《地球》

所属:


選択:職業制

職業:罪人 Lv50


能力値: 

 HP 9300

 MP 25005


STR 620

VIT 620

INT 1015

DEX 646

AGI 2282

LUK 646


BP:2100


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スキル:

■罪人Lv50

■怠惰Lv50

■盗賊Lv45

■暗殺者Lv45

■斥候Lv45

■山賊Lv45

■海賊Lv45

■死神Lv20

■認識Lvmax


技:

・隠形

・暗殺

・強撃

・偵察

・死攻撃

・死領域

■継承

・魔素操作

・魔力生成

・魔力操作

・詠唱破棄


□□□□□□□□□□□

  

 

美也「成長制度職業制の一次カンストボーナスは職業能力解放と全能力値+500だよ!一気にHPとMPが上がるね!」


明日香「スキル制には劣るけどね。上級スキルとか意味わからない……」


乙牌「あら、レベル制の全能力値+1500なんて魅力的じゃないかしら。実質BPボーナス9000と同じなのよ?」


姫宮「乙牌さん、職業制じゃん。私の呪いもそろそろ本格的になってきたわね……。ここからでも届くのかしら」ボソ


明日香「(え、誰に!? ま、まさか……幹也、逃げて!)」



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