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第14話 朝起きたら好感度max?

 目標発見、対象は使徒三名。計測開始。

 右の大きな杖を持っている男。戦闘能力10000オーバー。最大戦闘力70000。

 中央の若い男は装備から接近戦を得意としている可能性大。戦闘能力8000。最大戦闘力40000。

 左の若い女は霊体の可能性あり。戦闘能力5000。最大戦闘力10000。


 他の世界の使徒。脅威度大。私の戦闘能力は1900。最大戦闘力は4600。隊でもトップクラス。それでもあのような若い男女より力が下回っている。やはり、他世界の使徒は危険だ。


 『隊長、使徒三名発見。脅威度大。第二装甲の使用許可を願います』


 『だめだ。第一装甲でなんとかしろ』


 『しかし、三名の最大戦闘力は何れも10000オーバー。第一装甲では……』


 『我が世界の技術は世界一だ。心配するな。お前に配備した装甲は国々が力を合わせ開発した、最新型だ。資料を見ていないのか』


 『はい。私は転移してから32日間、第十一世界の使徒と合流出来ていません。』


 『そうか。安心しろ。そのまま使徒を殺せ。その後、我が隊と合流しろ。命の危険を感じた時のみ、第二装甲の使用を許可してやる。くれぐれも使うな。それと通信は控えろ。傍受される危険がある』


 『了解しました。行動を開始します』


 第一装甲を装備。全身を覆うようなスーツを纏った私は、両足に力を込める。両手の火器を充填させて……使徒に攻撃を開始した。







 ……。

 …………。









 怖い。怖い怖い怖い。いきなり村がおそわれて、お父さんもお母さんも殺された。


 お姉さんたちと怖い人たちにつかまって、せまい馬車に閉じこめられた。


 お父さんも、隣のお兄さんも、先生もおじさんも、みんな怖い人たちに殺された。


 お父さんを助けようとしたお母さんも、怖い人の大きな剣できられて……うぅ。


 怖い、怖いよぉ。お母さん……お父さん……。










 いやだ。いやだいやだいやだ。こわいひとがわたしのてをひっぱってる。


 おねえさんたちもこうやってつれていかれて、みんなかえってこなかった。


 

 こわいひとがたくさんいる。いやなことをされた。いなやことをさせられた。


 でも、おにいちゃんがたすけてくれた。こわいひとをみんなたおして、わたしをたすけてくれた。


 でも、なんでわたしをたたいたの? いたいとおもったら、すぐにまっくらになった……。










 お母さんとお父さんが死んじゃった……。れあをおいていっちゃった。


 ……。れあのお兄ちゃん、みきゅあお兄ちゃんは、れあといっしょにいてくれるよね?


 ずっといっしょにいてくれるよね?


 どこにもいかないで、ずっといっしょにいてくれるよね?


 

 お兄ちゃん……。
























 ベルフェゴールのベットはすごく寝心地が良い。

 それもそのはず。この寝具、枕一つとっても100万近くする。シーツもなんだかさわってみるとすべすべしてて布団を握りしめてみてもすぐにふわっと戻ってしまうし、地味に大きいから寝返りもうちやすい。大きいからこの部屋に置くと部屋の大半を、このベットで占めてしまうくらいだ。

 となりでベルフェが間抜けな感じに手を投げ出しながら、抱き枕に抱きついていたとしても狭くない。大分余裕がある。俺も少し大きめな枕に顔を埋めていたら、すぐに寝てしまったくらいだ。


 それで次の日の朝、つまりゲーム64日目の朝。妙に窮屈なんだよ。

 昨日まではあんなに余裕があったはずなのに、まるで体を縛られてるかのように狭く感じるんだ。体を起こして見てみれば良いんだけど、正直言うと昨日は慌ただしかったからもう少し寝ていたい。この国に戻ってきて、すぐに次の依頼を受けて、その後もギルドに行ったり買い物をしたりと大忙しだった。

 それまではずっと野宿だったんだ。道中で転移石も売ってたんだけど、なんせ金貨が数十枚ないと買えないような高級品だ。別に希少な素材を使っているわけじゃない。ただ、安価な値段でそれを発売してしまうと色々と問題になってしまうのだ。大量にそれを所持していれば、例えば城壁で囲まれている国の内部にも楽々攻め込むこともできてしまう。

 だから、大量に生産しないし、販売もしない。冒険者ギルドにはそれなりの数の転移石が保管してあるらしいが、かなり警備が厳重だ。そもそも、そういったアイテムがたくさん保管してあるから元高ランク冒険者がギルド員をしているんだ。つまり、用心棒扱いってことだな。

 高いアイテムを買える程俺は金を持ってない。持ち金の殆どを霊薬に変えてしまったからだ。だから歩いたり荷馬車に乗せて貰ったり、そんな感じで帰ってきたんだ。疲れが貯まって当然だな。だから、昼くらいまでゆっくりと寝ていたかったんだけど……俺は枕から顔を上げてみた。


 「……レアちゃん?」

 「あ、みきゅあお兄ちゃんおはよう!」



 元気な声で挨拶を返すレア。親を亡くして沈んでいると思っていたが、どうやら少しは元気を取り戻したようだった。いや、空元気だろうか。だとしたら、俺に気を使わせないようにしてるんだ。それか余りのショックで幼い精神が狂ってしまったか壊れてしまったか……。そうは思いたくないけどな。

 レアはにこにこしながら備え付けのベットに腰掛けていた。


 「ああ、おはよう。それでさレアちゃん、一ついいかな?」

 「うん、なーに?」


 「いや、なんで……縛ったの?」


 

 そう。いつのまにかベットが狭く感じていたのは、別に誰かが忍び込んだとかじゃない。以前、妹が布団の中に忍び込んでいて、一瞬、幽霊かと思って死ぬほどビビったことがあったが、今回はそうじゃなかったんだ。

 先程感じたまるで縛られているかのような感覚は、実際に縛られていたんだ。手足と、体全体がロープでぐるぐる巻きにされている。

 俺を拘束した犯人には心当たりがある。目の前で足をぷらぷらさせている、エルフの女の子だ。


 「なんかね、指輪があってね、ほら」

 「指輪……。それ、俺とさけの……俺からのプレゼントだよ」



 そういえば鮭延はレアに両親が死んだことを教えたんだった。鮭延のことを思い出す過程でそれを思い出してしまう。俺からのプレゼントってことにしておこう。

 レアは満面の笑みを浮かべながら、指輪を見せてくる。


 「ありがとう! これ、すごいんだよ?」

 「へー。因みにだけど、どうすごいんだ?」


 「みてて、ほら!」


 

 そういうと指輪から光が飛んできて、俺に当たって弾けた。

 するとあら不思議。その光が俺を拘束し出して、更にもう一度光ったかと思うと光がロープに変わった。再度ぎゅっときつく締め付けられ、ぐええっと声を出してしまった。

 

 「ぐええ……。レア、それ、玩具じゃない。安易に使っちゃだめだ……」

 「あんい?」


 「とにかく、これを解いてくれ」

 「じゃあ、れあといっしょにいてくれる?」


 「ん? ああ、いいよ。一緒にいるから」

 「ほんとう!?」


 

 しつこいな、どういうことだ。寂しいから構って欲しさに悪戯しているのか?


 「本当だよ。…………レア?」

 「なに?」


 「いや、笑ってないで、これ解いて?」

 「うん、どうやるの?」


 「…………解けろって考えてみて」

 「うーん、ほどけろー!」


 

 ロープでぐるぐる巻きにされたまましばらく経つが、いっこうに解ける気配がない。レアは指輪を見ながらうんうんと唸っている。ベルフェゴールはロープに巻かれながらも熟睡中だ。

 ……。よし、ダメだ。レアはこれの解除法がわからないのだろう。俺も知らない。俺はアイテムボックスから黒蟲の短剣とは別の、安物のナイフを取り出して手首を縛っているロープを切ろうと試みる。薬指と中指で掴んで懸命にナイフを動かすが……切れない。

 このナイフ。たしかに安物だが切れ味はそれなりに良い。嫌な話だが、人くらいなら切り殺せるくらいにはしっかりとした作りをしている。これを使っても切れないとなると……。どうするか。

 そう考えていたところで、俺に巻き付いていたロープが光り出して、そのまま消えてしまった。どうやらレアの解除法探しが俺の縄抜け技術より勝ったみだいだな。

 できたできたと喜んでいるレアに、注意する。


 「レア。これはな、悪い奴からレアを守るためにあげたんだぞ。俺は悪い奴じゃない」

 「みきゅあおにいちゃんは、なんでおんなのひとといっしょにねてたの?」


 「は?」

 「ん」


 

 とベルフェゴールを指差す。女の人と一緒に寝ると悪者なのか? っていうか。ロープで縛られながらも、だらしなく服がはだけていて、涎を垂らしながらぐでーっとしているベルフェゴール。時折わけのわからない言葉で寝言を洩らしている。日本語に変換できない言葉は、そのままの状態で聞こえるからな。つーか、


 「あいつは女じゃない。もっとこう、違う何かだ」

 「?」



 ベルフェゴールを女だとは思いたくない。あいつはもっとこう、セイウチとか、アザラシとかの仲間だ。太っているというわけではないが、ごろごろしているときの雰囲気がそんな感じ。あいつならまだ美也の方が女っぽいな。格ゲーマニアだけど。一応、色々と気を使っているらしいし、彼氏だっていると言っていた。


 「というか、レアは俺がベルフェと一緒にいるのが嫌なのか?」

 「だって、れあいらなくなっちゃう……」


 「……? え、えーっと……ああ、なるほど…って、あのなぁ」



 話がぶっ飛び過ぎだ。

 どこまで先読みしてるんだこの子。つか、どういう教育受けてんだよ。さすが21歳の少女なだけあるわ。意味がわかんない。そんな義理の子共の家族内での立場みたいな話、普通は考えないだろ。俺と女の人が仲良くなって、居場所がなくなるのが嫌って話か……わかるかい! どんな発想だよ。

 今も笑っていたり急に悲しそうになったりところころ表情が変わるし、ショックでおかしくなったのかと思ったがそうじゃないのか?既に狂ってしまっているのか……全然わからない。こういう時は専門家の意見が聞きたいな。この世界の専門家じゃなくて、地球で勉学を積んだ人の話だ。

 この世界は病気を、なんでも魔法で治そうとするからか医療技術が発達していない。例えば肺の病気でも胃の病気でも、腎臓の病気でも腸の病気でも、同じような魔法で治してしまうからだ。大きく分けると二つ。外の治療と内の治療の二系統。治療魔法はだいだいがこの二系統になっている。回復魔法は体力や魔力を回復する魔法なので、また別の扱いになるんだが……。

 だから、心に傷を負った小さい子の扱い方もなんとなくの意見しか聞けない。経験則しかな。子供の心を経験則で図るのは難しい。子供の数だけってやつだな。

 そういったことを勉強している知り合いはいないこともないが、あのロリコンはゲームをしない人(むしろ馬鹿にしてる)だからこの世界にいるとは思えないんだよな……。他のそういう使徒を見つけるっていっても、そう簡単にいくとは思えないし。なんとなくで接するしかないよな。


 「大丈夫だから。そこのお姉ちゃんのも解いてあげて」

 「でもー……。じゃあ、ん!」


 「……ん?」

 「ん!」



 ん? こっちに頬を向けるレア。なんだ、この世界には頭を撫でるじゃなくて、頬を撫でる文化でもあるのか?あ、わかった。甘えているのか。

 俺はレアの頬に手を当ててみる。俺の手に頬をつけながらきょとんと俺の方をみるレア。ん、ふにふにしてて柔らかい。そのまま数回撫でてあげる。


 「よし、解け」

 「……えい」



 レアがえいと手を動かすと、ベルフェゴールを抱える枕ごと縛っていたロープが消えた。まだ寝続けているベルフェゴールをスキルを使い待機空間へと送還する。ここにいられても邪魔だし、ベットで部屋が狭い。ベルフェゴールが帰ればあの空間から出てきたものも一緒に移動されるのだ。

 俺は起き上がって体を伸ばす。いつから縛られていたのだろうか、微妙に体が痛い。


 「レア、さっきも言ったけどそれは防犯用だから、身の危険を感じたときに使うんだぞ。わかったか?」

 「うん、わかった」



 子供っぽく手を上げながら返事をするレア。本当か? 返事は良いけど、なんか信用できない。

 レアがどんっと勢いよく俺に懐いてきたので、その相手をしながら考える。

 今日は何をしようか。最近は依頼で魔物退治に行ったりダンジョンに武器探しに行ったりと忙しかったからな。リラナルテさんとの魔法の訓練が始まるまではこの国でゆっくりしてるか。一応、魔法具に慣れておけみたいなことは言われてるから、夜にでも自主練すればそれでいいだろ。

 鮭延とレアを見て思ったんだが、俺も大分疲れているのかもしれない。VR慣れしていて非現実空間に耐性を持っているとしても、ここは異世界。しかもゲームとはいえその内容は殺し合いみたいなもんだ。世界間でのチーム戦だろ。そんな中で俺はどんな規模のストレスを感じているのか……。あまり自覚はないが、気が付いたら思考回路が壊れてた なんてことにはなりたくないしな。

 それにそういう奴らを正気に戻したりとかも、俺らVRゲーマーがしなくてはならないだろう。このゲームを買った奴が全員VR慣れしているとも思えないしな。かなり大規模な宣伝をしていたし、GWOが発売するからミュートラルも買ったってパターンだって多いはずだ。俺の幼馴染もそうだしな。そういえばあいつ、ゴブリンに勝てたかな……。少し心配だ。







 そんなことを考えながらレアの両手を上げたり下げたりして遊んでやっていると、少し震えた様子のレアに、突拍子もないことを言われてしまった。

 

 「みきゅあお兄ちゃん、れあ、おトイレしたいよ」

 「トイレ? ああ、あそこだよ」



 俺は部屋の入口付近にあるドアを指差しながらそう言った。

 この宿は部屋ごとにトイレがある。地味にすごいことなんだこれ。ダンジョンの帰りに泊まった宿屋には共同のトイレしかなかったし。銅貨20枚で泊まれる宿にしては十分な設備だ。部屋もある程度広いし、別料金だが食事も取れる。

 風呂が無いのが欠点だが、そもそもこの国には風呂に入るという文化が無いので、水を被ったり謎の石鹸(薄い赤色がデフォルト)で体を洗ったり、濡らした布等で拭いたりとかそんな感じだ。体を洗浄する、そういう魔法もあると聞いたが俺には関係の無い話だな。

 因みに俺は、水を大量に買ってそれで洗っている。アイテムボックスからこう、上手い感じで出すとシャワーみたいに使えるからな。これを思いついた時はさすが俺って思ったね。これなら楽に頭も洗えるし、水浸しになった床はタオル用にしている布を適当にばら撒けば済むしな。汚れたタオルもアイテムボックスに仕舞えば綺麗になるから。

 ただ、元の状態に戻るアイテムと戻らないアイテムがあるから、そこんとこは注意が必要だけどな。防具や日常品なんかは綺麗になるが、短剣なんかは刃が痛んだのはそのままだ。まだその区別は完璧にはついていない。汚れたままのアイテムを見ては、アイテムボックスの取扱い説明書が欲しい気分になる。


 しかし、トイレを指差した俺に対してレアは不満があるらしく、俺の服を掴んで何度も揺らした。


 

 「お兄ちゃん、トイレー!」

 「え、だからあっちだって」


 「はやくぅー、もれちゃうよ」

 「はやく? ちょっとレア、はやくって何だ?俺は早く何をすればいいんだ?」


 「あ……おしっこでちゃ」

 「ちょ、待て待て待て待て待て。ほら、こっちだよ」



 俺はレアの両脇に手を回して、抱き上げるようにトイレに移動した。STR値が強化されている今の状態なが、特に力を入れなくても子供の一人や二人、余裕に持ちあげられる。頑張れば大人の一人や二人だって可能だ。実際、アレンは持ちあがったわけだし。

 ここのトイレは洋式のトイレに似ている。似ているというのは、座ってするという部分だ。形は大きい卵型をしていて……まあいいか。トイレの形なんて。しかし、レアにとってはトイレの形が重要だったみたいだ。ふるふると俺の方を向きながら震えている。


 「どうやるの?おうちとちがうよ?」

 「どうやるって、ほらパンツ脱いで、ここに座ってからそのままぶっぱ…………って!?」



 ちょろちょろと、結局、レアは漏らしてしまった。

 俺がトイレを仕方を説明している間に……。おうちとちがうと言っていたので、エルフ式トイレとは違う形式だったのだろう。和式と洋式だって、結構違う形だもんな。こっちは種族が違うんだ。トイレの方法だって違ったんだろう。漏らしてしまい、再び泣いてしまったレアを慰めながらその辺に水を撒き、同時に布も数枚ばら撒いてすぐにアイテムボックスに仕舞う。とりあえずは、これでいいだろう。


 「よし、お着替えしようか。これに着替えて」

 「ううぅ……」



 汚れてしまった服を受け取って新しい服を着せてあげる。見た目は小学校低学年気味でのレアだが、一人で着替えることができないみたいで、服を渡すときにまるで着易いようにと手を上げられてしまった。上から着せてあげる。

 ご両親は甘やかしていたのだろうか。猫可愛がりしていた可能性もある。レアはすごい可愛いしな。天使みたいだ。レアちゃんまじ天使ってな感じに、オタクの俺は考えてしまう。レアちゃん泣き顔もまじ天使。

 エルフ補正で詳しくはわからないが、多分エルフ内でも可愛い方なはずだ。俺からしてみると、女エルフはみんな美人で男エルフはみんなイケメンに見える。そもそも、この世界に不細工は奴は少ないみたいなんだ。あの盗賊達でさえ、どこか男らしくて格好良かった。……なんかムカつくな。

 因みに、俺の容姿についてはあまり聞かないでくれ。微妙っていうか、変な顔だ……。


 それから少し遊んで、再びレアに笑顔に戻った頃を見計らい、宿にある食堂(酒場のこと)に二人で仲良く手をつなぎながら歩いて行った。この子、なにかとスキンシップを取りたがる。きっと寂しいのだろう。できるだけ構ってあげようと思うが、これが続くようなら結構大変そうだ。あまり小さい子の相手嫌いじゃないけど、得意ってわけじゃないからなあ。頭の中で何を考えているのかが読みにくい。対応を間違えるとすぐに機嫌を損ねてしまう。

 宿屋で働いている女の子に注文をしてから椅子に座る。俺はパンとスープ、レアはサラダと果物だ。エルフは野菜とか果物とかが好きらしい。シチューに入っていれば肉も食べられると言っていたので、きっとカレーに入っていれば野菜を食べられるという野菜嫌いの子供と似たような感じなのだろう。つまり、肉は苦手なわけだ。

 レアは苺と翻訳されている明らかに苺じゃない食べ物を美味しそうに食べていた。

 苺じゃないよ、だって色が青いんだもん。余りにも苺じゃないので、そればっかり考えていたらさっきまで苺と翻訳されていた果物が、ミルの実と翻訳され直した。「いちごおいしいね!」から「みるのみおいしいよ!」に急に変わったから一瞬訳が分からなかったが……え、この翻訳システムってどうなってるんだ?ミュートラルの翻訳機能にこのような仕様はなかった。思考だけで翻訳される言葉を変えることができるのか?

 とりあえず、レアのおかげで新しい機能を知ることが出来た。これは便利だ。例えば、図鑑とかを見て毒性のある食べ物に○○キノコ 毒性あり みたいに設定して翻訳すれば、次にそれを聞いたときにすぐに毒があると判断できる……が、うざいか?一々「毒性あり毒性あり」って言われたら嫌だな。よし、これはやめておこう。




 朝食を食べたあと、俺たちは部屋へ戻った。

 外出しても良いのだが、余り早くからレアを連れまわしたら疲れてしまうだろうからな。というか、いざ休日にしようと思っても、特にすることがないな……。買い物くらいか? この世界って、娯楽施設が殆どないからな。

 リラナルテさんが言っていた大会とやらの会場にでも遊びに行ってみるか……いや、ないな。というか、まんまコロッセオみたいな見世物の闘技場とかだったら嫌だ。戦いでも殺し合いでも見世物になるのは……なんか嫌だよな。手の内がバレるという意味でも。強敵と戦闘経験を積めることが唯一のメリットで、手の内がバレる。顔がバレる、名前が晒されるとデメリットは多い。偽名と仮面、魔法具で偽造はできるが……できるな。最適化で体型も誤魔化せるし、できてしまうな。吃驚したわ。

 そういえば、レアにベルフェをちゃんと紹介していなかったな。今後レアが敵対することもないだろうし、いざベルフェに頼る時に知らない人状態だと困ることもあるかもしれない。子供は顔見知りをするからな。初対面の俺に心を開いているレアには関係ないことかもしれないが……改めてベルフェを紹介しておこうと思い、俺はスキル:悪魔召喚を発動した。



 「レア、朝の女の人、こいつは俺の使い魔のベルフェゴールだ。女じゃない、使い魔だぞ?」

 「こいつって何よ、それに、私は使い魔である以前に女よ。レアちゃん、ベルフィよ、よろしくね」

 「べるひぃ?」


 「ひぃじゃなくて、フィね。ベルフィ」

 「ベル、フィ……?」


 「そうそう、ベルフィって呼んでね。人のことを、あいつとかそいつって呼んじゃいけないの。わかった?」

 「……え、俺? 俺に言ってるの?」


 「当たり前でしょ。幹也、最近何回か言ってるわよ。全部覚えてるんだから!」

 「……。(うわー、なんだよこいつ、めんどくせえな)」


 「!?。 聞こえてるわよ!念話してるんだから、聞こえてるわよ!」

 「ったく、このお姉ちゃん怖いなぁ、レア、こっちおいで」

 「うん、ベルフィ怖いね。お兄ちゃん、だっこして」


 「ちょ、なに言ってるのよ! 子供ってすぐに真に受けるんだからそういうのやめてよね!」

 「すぐ怒って、ヒステリーだよな、レアはああいう風になっちゃだめだぞ?」

 「んー」


 『冗談だよ、冗談。本気で思ってるはずねえだろ。レアと話すきっかけになるからそのまま怒ってろよ』

 『冗談? 本当に? 信じてるわよ?』


 『安心しろ。俺は基本的に嘘をつかない』

 『……そうだったかしら? なんか、この二ヵ月間嘘ばっかりついてたような気が……』


 『そうだっけか? あ、そうだ。ベルフェ、パン食べるか?』

 『軟らかいやつ?』


 『おう、焼き立てのをアイテムボックスに入れてある』

 『食べるわ。別に物に釣られたわけじゃないのよ? でも、特別に許してあげるわ』



 使い魔であるベルフェゴールは食事を取らなくても死にはしない。

 だが、娯楽的な意味で色々と食べたいらしい。悪魔の世界ではパンは固いタイプのものが多いので、デメタスさんが焼くふわふわとした軟らかいパンが好きになったみたいで、機嫌を取るときに小出しにしている。

 この世界も本来なら固いパンが主流なのだが、デメタスさんは色んな料理を広く浅くで作っているからな。この国でも人気がある酒場の一つらしい。酒だけじゃなく摘みも美味い。それに加えて、食事も美味いといった感じでな。

 正確には料理の種類が多いので客の好みの料理を出しやすく、それが美味しい料理だと思われている原因なんだけどな。たしかに美味しいんだが、すごい美味しいというわけじゃない。普通に日本のパン屋のパンの方が美味いし。

 異世界クオリティはファンタジー方面はすごいが、そういう面では現代に劣る。肉は……なんか怖いから鳥とウサギの肉しか食べていない。ここの人、魔物の肉とか普通に食べるからな。グロイんだよ。牛とか豚なら全然余裕だ。むしろ可愛い。だけど、あんなのの肉とか食べたくない。

 因みにウサギの肉は魔物の肉より安い。魔物の肉は高級品だ。この世界には野ウサギがなぜかたくさんいる。他にも鶏みたいな鳥も多い。野生なのになんでそんなに多いのかと疑問に思っていたが、これには納得のいく理由がある。

 きっと、魔物が小動物の天敵を狩ってるんだ。魔物は総じて大きい。だから、ある程度大きな動物を食べるんだ。数メートルの巨体がわざわざ小さなウサギを狙うか、ある程度大きい生き物を狙うかという話だな。それに、魔物視点でも魔物の肉の方が美味しいのか、魔物同士の共食いも多い。そのせいで小動物は比較的多く生息しているというわけだな……多分。全部俺の推測なんだが。


 例えば、ギルドの依頼にはそういう食糧を納品する類の依頼もある。G級冒険者が受けるような依頼だな。国の外は危険が多いので、そういう仕事も冒険者がすることになる。アイテムボックスに、狩った動物を入れられるしな。ある程度の数を狩れば、宿代くらいにはなるだろう。

 何度も言うが安いんだよ。一羽分で銅貨1~2枚くらいだ。肉屋では小分けにして銅貨一枚で売っているので、仕入れ値はそれくらいになる。

 それに加えて、多く生息しているといっても一度にたくさん狩れるわけではないので、G級冒険者は大変みたいだ。それで無理をして魔物討伐を狙った初心者たちが殺されるんだよな。昨日まで一般人だった彼らは、魔物を倒せたとしても一体や二体。複数体と出会った時点でパーティーはすぐに壊滅する。折角組んだパーティーでも、数人欠ければ街に帰る途中に命を落とす確率がかなり高くなるからな。Fクラスの魔物くらいならその辺をしばらく動いていればかなりの確率で会える。つまり、それくらいの高確率で魔物と遭遇するというわけで……まあいいや。


 バターを付けて、美味しそうにパクパクとパンを食べるベルフェを無視して、レアに構ってあげる。だっこしてというから持ちあげてみたら、そのままの状態で話がしたいみたいだ。STRが強化されているとはいえ若干だるいので、ベットに腰掛けてから話すことにした。

 俺も気になっていたことがある。レアの好きな野菜トークが一段落したので、俺は少し聞いてみることにした。



 「なあ、レアって魔法アイテムを使ってたよな? あれってどうやって使ったんだ?」

 「どうやって?」



 そう。レアは指輪を使用していた。その際、魔法具発動!とかそれっぽいことを叫ばずに使っていたので気になっていたのだ。

 この世界の人は魔法具や魔法アイテムを使うときに特に何かキーとなる言葉を言わなくとも発動することができる。言う場合もあるらしいが、どちらか片方を選ぶことができる。俺はできない。どうすれば発動してくれるのかがいまいち理解できていないからな。何度も言うが、俺の世界に魔法なんてものはなかったんだ。体内の魔力を手に集めて~とか言われても困る。

 昨日、盗賊討伐依頼に出掛ける前、リラナルテさんに手をしばらく握られてから「今のが魔力の流れです。それを手に集めて下さい」と言われた。まず、魔力の流れがわからない。俺は急に手を握られて綺麗な手だなあ、柔らかいなあとか思っていたから、そんな流れを気にする暇はなかった。

 俺は少し反省してから「もう一度、お願いしてもいいですか?」と言った。しかし、もう一度やってみても魔力の流れなんて感じられなかった。つか、そもそも魔力ってなんだよ。それを使って魔法具を発動してみて下さいとか言われたってさっぱりわからない。試しにMP値を消費して小声で「アリア、起動」って言って発動してみたら、そうじゃないと言われてしまった。何がそうじゃないんだろうか……。最終的には訓練が始まるまでに自主練をしてくることに落ち着いた。


 子供であるレアは、そういう所を感覚で操作している可能性がある。理論で攻めるのが難しいのなら、感覚で攻めてみるのも一つの手だ。案外、それで解決するかもしれない。リラナルテさんがやろうとしたのも本来ならこれなんだと思う。一度、魔力の流れを認知してから、それについての説明をするつもりだったのだろう。まず流れ自体がわからなかったからそれは失敗に終わったが……。


 「さっき、それを使ってただろう? 指輪の使い方を教えて欲しいんだ」

 「いいよ!」


 「そうか、んで、どうやればいいんだ?」

 「これね、つけるとね、ここにまほうが使えるようになるの」


 「魔法が、使えるようになる?」

 「うん、ここからね、ここにまほうが使えるの」



 そう言って自らの腹部を指差して、それをすっと指輪に移した。魔法は、腹から使うのか?


 「お腹から?」

 「ちがうよ! ここからだよ」



 俺の手を取ってそれを胸に当てるレア。うむ、ぺったんこだな。いやいや、そうじゃなくて、魔法は胸から……心臓から使うのか? 脳じゃなくて、心臓?


 「そうか、心臓か……」

 「ここから、ここにまほうを使って、それをぎゅっとするの、ん!」



 指輪から光が飛んで、部屋の壁に当たって弾ける。空中でロープになって、床に落ちた。魔法を解除したのか、すぐにそれは光に戻って消えた。ええっと、ここからここにまほうを使って、ぎゅっとする……心臓から力を手に移動させて、それを圧縮する?くそ、せめてレアが10歳くらいだったら、21歳だけど、もう少しだけ説明に具体性が欲しい。まほうを使うは力を移動させるという認識でいいのだろうか。ぎゅっとさせるは力を圧縮するで良いはずだ。

 俺はレアをベットに下ろすと、危ないから少し離れているよに言った。ベットの中央付近に移動したレアを、もう少し遠ざけてから斧の魔法具『アリア・エリスロード』を取り出す。

 藍色の柄に薄い青色の刃。見れば見る程綺麗な手斧だと思う。工具用とは違い、生き物を殺す為に作られた刃は少し大きく、それなのにとても軽い。この軽さでは威力は出ないと思ったが、そんなことはなかった。少なくとも、Fランクの魔物を斬り裂くことができる。これならゴブリンだって斬れる。黒蟲は無理だろうが、ダンジョンで出てきた狼男、ギニルとなら良い勝負ができるかもしれない。今のAGI値ならあいつとだって真正面から戦えるだろうし。

 だが、これは相手を斬る武器ではない。魔法を使うための触媒だ。俺は心臓から手に力を移動……って、力ってなんだよ。試しに腹筋に力を入れてみるが……特に変化はない。少しだけ、腹が引き締まっただけだ。左胸にも力を込めてみるが、そもそも胸筋が殆どない俺にはこれといった変化はなかった。筋肉に力を入れるのは間違いみたいなので、ここから妄想を入れる。頭の中で、心臓に入った青い何かを、手に移動させてそれを圧縮……してみたが、特に意味はなかった。当たり前だが、妄想は妄想で終わってしまう。うん、手詰まりだな。

 試しに魔法具起動と呟いてみる。俺の簡易ステータスのMP値を表すゲージが少し減少して、斧が光り出す。青い斧に反射した、その綺麗な光を床に向かって撃ちだすと、そこに青色の花が咲いて、直後にガンッっと氷の塊を天井に吐き出した。

 その氷の塊は、天井に当たって粉々に砕ける。今のはただの氷、冷蔵庫とかで作れるような普通の水が凍ったあれだな。特に攻撃力はない。精々痛いと思わせることが限界だ。急所に当たれば効くかもしれないが……ないだろう。

 これを本気でやれば氷を断続的に出し続けて、それで圧死させることも可能だが……今は使う必要がないからな。すぐに花を蹴り壊す。これも氷で出来ているので、蹴るだけで壊すことが可能だ。


 「今のが俺の魔法なんだけど、レアはどう思った?」

 「きれいだったね!」


 

 レアは喜んでいた。うん、確かに綺麗なんだよ。花とか一見すると青い薔薇みたいで幻想的だし、氷も透明じゃなくて青色だから綺麗なんだ。いや、そういうことじゃないくてだな……。


 「まあ、そうだな。それで、今のは魔法としてどうだ?」

 「?」

 「レアがわかるわけないじゃない。今のはね、花にも氷にも魔力が全然入っていなかったわよ。だから威力も完成度も低いわね」



 パンにジャムをつけながらむしゃむしゃと食べているベルフェゴールが、そう言った。そういえば、こいつも魔法の先生として使えるな。だけど、ある程度魔法が使える奴にしか教えられないみたいなことを言っていた気もする。斧を隣に置き、俺にむかって両手を広げたレアを再び抱きしめてから、ベルフェゴールに聞いてみる。


 「魔力が籠っていないのか。でも、MPは使ったぞ?」

 「私からしてみれば、そもそもMPってなんなのよって話だけどね」


 「マジックポイント。魔力の量って意味なんだが……魔力とMPは違うのか?嫌、そんなことはないはずだが……」

 「魔法ってのはね、魔素を使う技術なのよ」


 「魔素か、その辺詳しく」

 「じゃあ、バター買ってきて」


 パシリだと……。俺、主人なのに。こいつ、立場忘れてないか?


 「……。ほら」

 「持ってたの? 最初に出してよ」


 「それで、魔素というのは、元素か何かなのか?」

 「元素? 魔素は見えないだけで空気中にたくさんあるのよ。それを私たち体にためて、それを使って魔法を発動するの。馬鹿な人族は神から力を借りて~とか言ってるけど、全部嘘っぱちね」

 

 「……続けて」

 「ちょっと待って、食べてからね」



 少し時間をかけて、三個のパンを全て平らげたベルフェが再び話だす。


 「魔素はね、基本的に体内のものを使うのよ。外のは使いずらいの。使えないこともないのだけれど、いつもの感覚だと魔法が発動できない可能性があるわね」

 「基本的に、体にある魔素を使うんだな」


 「私の場合は幹也のをだけど。それで、魔素を魔力に変換させて…………」




 この後、一時間くらいこんな話を続けたが、結局意味がわからなかった。ただ、俺の魔法に少しだけ魔力が籠るようになった。具体的には、さっきの花を少しだけ操ることができるようになれた。さすが上級悪魔様だ、今度何か買ってあげよう。うーん、パンとジャムでいいか。安いし。



















 




 

 


 あと後、しばらく部屋で遊んでからレアと街へ出掛けた。といっても、買い食いをしたり色んな店を回ったりとかだ。レアは八百屋みたいな店で売っていた果物を好んでいた。他にも、いくつかお菓子も買ってあげた。そっちも美味しいと食べてくれたな。俺的には砂糖が足りてないと思ったが、異世界クオリティだ。こんなもんだろう。


 それから宿に戻って、夕飯を少しだけ食べる。なんだかんだで結構買い食いをしてしまっていたのだ。それからは星を見たいというレアと一緒に、宿屋の外に置いてある大きな樽の上に座り、空を見ながら話していた。

 そにしても……星が見える。ということは、この世界は惑星なのだろうか。この星のどれかが地球であって、星を世界の一つとして異世界と表しているのか、それともまったく別の世界なのか……。太陽みたいなのはあるけど、月がないんだよな。月みたいな星はあるが……月と翻訳されるそれは、少し遠い位置にあり、あまり月明かりが明るく感じられない。


 隣に座るレアがあの星は~と説明してくれている。俺はそれを聞きながら空を見ていたんだが、なんというか、急に嫌な視線を感じた。それこそ中二病ではないが、殺気というやつだ。触覚が強化されているせいか、ひりひりとした視線を俺は感じ取れるようになっている。


 「みきゅあお兄ちゃん?」

 「少し、下がってろ」



 宿屋の前の通り道、その奥の方から人影が迫って来ていた。

 人影と言ったのは、そいつが全身が黒くて影みたいだからだ。まるで、ゲームに出てくる暗殺者のような姿。今、この宿の周りには俺とレアしかいない。夜のせいだけではないであろう。人が妙に少ないのも気になるが、あの黒いの、こっちに真っ直ぐ向かってきている。

 この道は少し変な形に曲がっているから、道なりに歩いていれば俺たちの方へは絶対に来ない。宿に入るなら少し角度がおかしい。宿屋の脇に置いてあるタルに座っていた、俺とレアの方へゆっくりと歩いてきている。なんだ、あいつは?

 先手を打つか?そう考えていたところで、急に背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 「みっきー、レアちゃんは私が守るわ」

 「……鮭延か」


 「あいつに狙われているんでしょ? こっち来てるし」

 「狙われる覚えがない。俺が使徒だとは認識できないはずなんだが……。とりあえず、レアの安全を確保しておけ。向こうの裏口から入って、俺の部屋にでも隠れていろ」

 「え、お、お兄ちゃん?」


 「大丈夫、そのお姉ちゃんと部屋に戻っててな。俺もすぐ行くからさ」

 「やだよぉ、お兄ちゃん……」


 「鮭延、早く行け」

 「おっけー。んじゃ、レアちゃんはこっちね」



 レアを抱えた鮭延は、宿屋の裏口(遅くに出入りする冒険者等が使うところ)の方へ移動していった。鮭延は使徒だ。レアの身の安全は保障できる。まさか性的に襲ったりはしないだろう。もし、そんな馬鹿なことをしていたら今度は本当に殺す。

 俺は人影を見る。

 

 この暗さだ、これで勝てるかもしれない。俺はドッペルガンを取り出すと、それをハンドガン状にしてサイレンサーを取り付けた。消音されるといっても、まったくの無音になるわけではないがある程度は銃声を抑えられるはず。ここは街中だ。あまり音を立てるもんじゃない。

 人影に向かって、俺は攻撃を開始した。




 

 

 美也「ねね、明日香くん。魔素って何かわかる?」


明日香「魔素? 急にどうしたの?」


 美也「なんか、どこかでお兄ちゃんが困っているような気がして……」


明日香「理由が意味不明だけど、魔素って魔法を発動するときに使う元素じゃなかったっけ?」


 美也「そうなの?」


明日香「掲示板で、そんな結論になったはず。詠唱で魔素を魔力に変換して、それを使って魔法を発動しているんじゃないかって。ソースはここの住人からの話だから、合ってるんじゃない?」


 美也「へー、でも、無詠唱で魔法を使う人もいるよね? 師匠さんとかそうだし」


明日香「それは……どうやってるんだろうな。俺だって詠唱なしには魔法使えないからな」


 美也「でも、明日香くんって剣から魔法撃てるじゃん。 あれって詠唱してないよね?」


明日香「それは、スキルだからとしか言えないな。あれも剣が魔法を発動しているわけじゃなくて、剣に登録していた魔法を解除しているだけだし」


 美也「ふーん。だってお兄ちゃん!伝わってるかな……。私とお兄ちゃんは愛し合ってるんだから、思ったことが伝わる可能性もぜろじゃないはず……!だってこのまえ、お兄ちゃん大好きって考えてたら、お兄ちゃん、美也の方振り向いてくれたし!」


明日香「お、おう……。」




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