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バリバリだぜ!  作者: はまゆう


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2/7

第2話 ぶっちぎりの孫 ― Bass Junkie Road

1 夜のロードで鳴らす

ツアーが始まって、二週間が経った。

仙台、新潟、金沢、名古屋、大阪、福岡。六つの街を回り、残りはあと四本。

LUYの新曲を軸にしたセットリストは、街を重ねるごとに客を増やしていった。福岡では、ライブハウスの外まで行列ができた。バンドの空気も、少しずつひとつにまとまってきていた。

それなのに。

LUYだけが、眠れない夜を重ねていた。

今夜は、地元の公演の前夜だった。久しぶりの実家。久しぶりの、母の部屋のベッド。

布団に潜り込んでも、胸の奥がざわついて仕方がなかった。体は疲れ切っているのに、頭の芯だけが冴えている。

――誰かが、呼んでる。

知らない誰かが。遠くから。

午前一時。

LUYはベッドから起き上がった。黒いドレスに着替え、縦ロールをざっとまとめ、ベースケースを背負う。肩には、充電式の小型アンプ。

足音を殺して階段を降り、裏口から外へ出た。

港へ続く直線道路に入ると、海からの冷たい風が、正面から頬を打った。

子どもの頃、何度か来たことがある場所だった。母が死んだ年の夏、涼子が軽トラに乗せて連れてきてくれた。何も言わずに、ただ二人で、夜の海を眺めた。

アスファルトは新しく敷き直されていた。街灯も明るいLEDに変わっていた。

だが、夜の空気の匂いだけは、あの頃のままだった。

LUYは、道路の真ん中に立った。

その時だった。

遠くから、重低音が這い寄ってきた。

ブォン……ブォォォン……。

エンジンだ。十台。いや、二十台。マフラーを切った、腹に響く排気音。

懐かしい、悪の音だった。

「……来たな」

LUYの口元に、笑みが浮かんだ。

「来るよ。夜が」

真横から、声が飛んできた。

LUYは飛び上がりそうになった。振り向くと、ガードレールに腰かけて、涼子が煙草をくわえていた。

「ばっ……ばあちゃん!? なんで!」

「孫がこそこそ裏口から出てくのを、見逃すわけないだろ」

ライターの火が、赤く弾けた。

「この時間、この道。昔っから、走りたい連中が集まる場所さ。あたしらの時代からね」

ヘッドライトの列が、蛇のようにうねりながら近づいてくる。光の帯がアスファルトを舐め、空気が細かく振動し始めた。

先頭のバイクが、LUYの十メートル手前で急停止した。後続が次々と止まり、半円を描いてLUYを取り囲む。

リーゼントの男が、ヘルメットを脱いだ。二十歳そこそこ。鋭い目。背中の刺繍が、ヘッドライトの逆光に浮かんでいた。

鉄蛇

「誰だてめえ。こんな夜中に道のど真ん中で、目立とうってか。いい度胸じゃねえか」

LUYは答えず、ベースケースのジッパーを下ろした。

黒いフェンダー・ジャズベース。それを肩にかけ、小型アンプにシールドを差し込む。ボリュームのつまみを、一番右まで回した。

「名乗る前に、聴けよ」

「あ?」

「音で名乗る」

右手の親指が、四弦を弾いた。

――ズゥゥゥンッ!!

道路が、鳴った。

比喩ではなかった。足元のアスファルトが、確かに震えた。街灯の支柱がびりびりと唸り、港の黒い水面に、細かい波紋が走った。

小型アンプ一台から出る音ではなかった。

「な……なんだ、今の音……」

バイクにまたがった誰かが、呆然と漏らした。

LUYは、にやりと笑った。

「今夜この道を鳴らすのは、俺だ。お前らのマフラーより、デカい音でな」

2 帰ってきた伝説

リーゼントの男が、バイクを一歩前に出した。

スロットルを、ひねる。

ブォォォォンッ!!

切ったマフラーから吐き出された轟音が、夜を引き裂いた。後ろの二十台が、それに続く。排気音の壁が、LUYの全身を叩いた。

「調子に乗ってんじゃねえぞ、ガキ。ここは俺らのシマだ!」

LUYは、肩をすくめた。

「シマぁ? まだそんな言葉使ってんのかよ。昭和か」

「先輩から受け継いだ場所なんだよ!」

「へえ。その先輩って、誰だよ」

「てめえに関係ねえ! 黙れ!」

その瞬間だった。

「――俺だ」

闇の奥から、声が落ちてきた。

大きな声ではなかった。むしろ低く、静かな声だった。それなのに、二十台の排気音を貫いて、全員の耳にはっきりと届いた。

直線道路の向こう。街灯の光の輪の外から、一人の老人が歩いてきた。

黒い革ジャン。銀髪のオールバック。

一歩、また一歩。

老人が歩くたびに、空気の密度が変わっていく気がした。誰かが、ごくりと唾を飲む音が聞こえた。頭上の街灯が、じじ、と音を立てて一瞬だけ暗くなった。

LUYは、目を見開いた。

「じいちゃん……」

涼子が、ガードレールの上で煙を吐いた。

「遅いよ、あんた」

「年寄りは支度に手間取るんだ」

鷹三郎は、LUYの横で足を止めた。そして、半円に並んだ若者たちを、ゆっくりと見渡した。

バイクにまたがった誰かが、震える声で呟いた。

「お、おい……あれ……まさか」

「銀髪の……ディーター……?」

「嘘だろ。雷神会の、初代総長……」

名前が、波紋のように群れの中を広がっていく。何人かが、思わずバイクから降りていた。何人かは、ハンドルを握る手が震えていた。

三十年前に消えたはずの伝説が、目の前に立っていた。

鷹三郎は、リーゼントの男をまっすぐに見た。

「この道を、先輩から受け継いだっつったな」

「……」

「その先輩の、先輩の、そのまた先輩が、俺だ」

リーゼントの男の顔から、血の気が引いた。

「喧嘩がしてえなら、相手は俺がする。ただし、筋は通してこい」

その一言で。

二十台分のエンジン音が、ひとつ残らず、黙り込んだ。

誰もキーを回していない。それなのに、全員が無意識にスロットルから手を離していた。

LUYは、祖父の背中を見上げていた。

胸の奥が、熱く燃えていた。

――これが、本物の重さか。

ネットの白黒写真では、わからなかった。数千台が黙ったなんて、盛りすぎだと笑っていた。

盛ってなかった。

3 ぶっちぎり上等

長い沈黙のあと。

リーゼントの男が、引きつったように笑い出した。

「……は、はは。そうかよ。伝説の総長の、孫ってわけか」

男の目が、LUYのフリルとレースを舐めるように見た。

「血筋だけで、でけえ顔してんのかよ。じゃあ見せてもらおうじゃねえか。その血筋の、ぶっちぎりってやつを!」

ガードレールの上で、涼子がぼそりと言った。

「安っぽい挑発だね」

だが、LUYの目は、もうぎらりと光っていた。

「安くても、買ってやるよ」

LUYはベースのストラップを短く締め直した。

「全開で来い。お前ら全員のエンジンと、俺一本のベース。どっちがこの夜をぶち抜くか、勝負だ」

鷹三郎が、孫の背中に一言だけ投げた。

「やるなら、潰す覚悟でやれ」

LUYは唇を舐めた。

「音で、ぶっちぎる」

右手が、弦に叩きつけられた。

――ダダダダダダダダッ!!

十六分音符の嵐だった。

親指のスラップと、人差し指のプル。指が弦を叩くたびに、空気が爆ぜる。小型アンプのスピーカーが、悲鳴を上げるように震えている。

「上等だ、てめえら! 吹かせぇッ!!」

リーダーの号令で、二十台のバイクが一斉にスロットルを開けた。

ブォォォンッ! ブォンブォンブォォォンッ!!

排気音の津波が、LUYに襲いかかる。音で殴る。音で押し潰す。それが、彼らの喧嘩のやり方だった。

だが。

LUYの音は、その全部を呑み込んだ。

音量ではなかった。圧が違った。二十台のエンジンがばらばらに吠える中、LUYの低音だけが、一本の鉄の杭のように、まっすぐに地面を穿ち続けていた。

気迫が違った。魂の響きが違った。

指先の皮が、裂けた。汗が飛び散り、金髪の縦ロールが振り乱される。黒いフリルの袖が、夜風にはためく。

LUYが、吠えた。

「――音で、沈めぇッ!!」

その時。

「う、うぉぉぉっ!? じ、地面が……震えてる!?」

誰かが叫んだ。

直線道路のアスファルトが、細かく波打っていた。バイクのミラーが震え、ガードレールがびりびりと共鳴している。

「お、おい……な、なんだありゃ!?」

別の誰かが、道路の真ん中を指さした。

――ガタ。ガタガタガタ。

マンホールの鉄の蓋が、浮き上がっていた。

LUYのベースのリズムに合わせて、重さ四十キロの鉄蓋が、ガタン、ガタンと跳ねている。

「マ、マンホールが……踊ってやがる……!」

涼子が、ガードレールから腰を浮かせた。くわえていた煙草が、ぽろりと落ちた。

リーゼントの男は、呆然とLUYを見ていた。

そして、その口元が、ゆっくりと吊り上がった。

「……やべえ。エキサイトしてきたぜ」

男は、スロットルの握り方を変えた。闇雲に吹かすのをやめ、LUYの低音に耳を澄ませる。

そして、そのリズムに合わせて、エンジンを鳴らした。

ブォン――ダダッ。ブォン――ダダッ。

一台が合わせると、隣の一台がそれに続いた。三台、五台、十台。気がつけば、二十台すべてのエンジンが、LUYのベースに呼吸を合わせていた。

ばらばらだった排気音が、ひとつのビートになった。

もう、暴走ではなかった。

レースでもなかった。

――共鳴だった。

4 止めの一撃

共鳴は、膨れ上がり続けた。

ベースと二十台のエンジンがひとつになったビートは、もう誰にも止められない渦になっていた。港の倉庫のシャッターが震え、停泊していた漁船のマストが揺れた。遠くの住宅街で、犬が一斉に吠え始めた。

鷹三郎が、口を開いた。

「もういい」

LUYは、止まらなかった。

目が血走っていた。指先から血が飛び、黒いフェンダーのボディに赤い点を散らしている。それでも右手は弦を叩き続けていた。

止まらないのではない。止められないのだ。

音の渦に、自分が呑み込まれていた。

涼子の顔から、表情が消えた。

――まずい。あの子、持っていかれてる。

若い頃、何人も見てきた。スピードに呑まれ、自分が誰かもわからなくなって、そのままガードレールの向こうへ消えていった連中を。

「ルイ!」

涼子が叫んだ。届かない。

その時、鷹三郎が、一歩前に出た。

息を吸う。

「――止めろッ!!」

雷が、落ちた。

そうとしか言いようのない声だった。三十年間、一度も上げなかった声だった。

次の瞬間。

直線道路の全てが、静止した。

二十台のエンジンが、同時に沈黙した。誰もキーに触れていないのに、まるで心臓を握り潰されたように止まった。浮き上がっていたマンホールの蓋が、ガタン、と元の穴に落ちた。海から吹いていた風までが、ぴたりと止んだ気がした。

そしてLUYの右手も。

弦の上、一センチのところで、ぴたりと止まっていた。

音が、死んだ。

完全な静寂だった。耳鳴りがするほどの。

LUYの肩が、大きく上下していた。荒い息。額から流れ落ちる汗。

やがて、その目に、焦点が戻ってきた。

リーゼントの男が、バイクの上で唖然と呟いた。

「今の……何だよ……」

LUYは、ゆっくりと右手を下ろした。そして、血の滲んだ指先を見て、それから祖父の背中を見た。

息を整えながら、にやりと笑ってみせた。

「……制御だよ。暴れるより、よっぽど難しい芸だぜ」

本当は、祖父の声がなかったら止まれなかった。それは、LUY自身が一番よくわかっていた。

だから、強がった。

涼子が、ふっと息を吐いて笑った。肩から、力が抜けていた。

「言うねえ」

鷹三郎は振り返らなかった。ただ、前を向いたまま、静かに言った。

「暴れるだけなら、ガキでもできる。静かに勝つ奴が、本物だ」

その言葉は、リーゼントの男に向けられたものだった。

だが、半分は、LUYに向けられたものでもあった。

リーゼントの男は、何も言い返せなかった。

5 兄弟ノリ

しばらくして。

リーゼントの男が、バイクのスタンドを立てて降りてきた。ヘルメットを小脇に抱え、LUYの前に立つ。

近くで見ると、思っていたより若かった。たぶん、LUYと同い年くらいだ。

男は、しばらくLUYの顔をじっと見ていた。それから、ふっと吹き出した。

「……気に入った」

「あ?」

「最初は、血筋で威張ってるだけのボンボンかと思った。悪かったな」

男は、ヘルメットで自分の頭をこつんと叩いた。

「血筋じゃねえ。お前の魂が、ヤベえんだ」

LUYは肩をすくめて、笑い返した。

「最初からそう言ってんだろ」

男は右手を差し出した。指の付け根に、喧嘩でついた古い傷がいくつも走っていた。

「アキラだ。鉄蛇の頭やってる」

LUYは、その手を握った。血の滲んだ指と、傷だらけの指が、がっちりと組み合った。

「LUYだ」

アキラは握った手を離さないまま、LUYのフリルの袖と、金髪の縦ロールと、喉仏を順番に見た。

「お前さ。男? 女?」

後ろの手下たちが、息を呑んだ。

LUYは、眉ひとつ動かさなかった。

「どっちに見える」

アキラは少し考えて、それから豪快に笑った。

「どっちでもいいや。関係ねえな」

「関係ねえよ」

LUYも笑った。

「音で勝負だ」

アキラの後ろで、手下たちが顔を見合わせた。それから一人、また一人と、ぎこちなく笑い始めた。張り詰めていた空気が、少しずつほどけていった。

鷹三郎は少し離れた場所で、煙草をくわえていた。

火はつけていなかった。ただくわえたまま、孫と若者が笑い合うのを見ていた。

その口元が、ほんのかすかに緩んでいるのを、涼子だけが見ていた。

東の空の端が、わずかに白み始めていた。

6 朝が来るまで

アキラたちのバイクが、一台、また一台と走り去っていく。

最後の一台が、角を曲がる前にクラクションを短く二回鳴らした。また会おうぜ、という合図だった。

港の直線道路は、再び静けさを取り戻した。

東の空が、紫から薄桃色へと、ゆっくり色を変えていく。海の向こうに、まだ顔を出さない朝日の気配があった。

三人は、ガードレールに並んで腰かけていた。

涼子が、LUYの肩をぽんと叩いた。

「よくやったよ。あたしらの孫にしちゃ、ちょいとカッコつけすぎだけどね」

LUYは、鼻で笑った。

「だから、孫だからやったんじゃねえって。俺は俺だ」

「はいはい」

涼子は笑って、新しい煙草に火をつけた。

鷹三郎は黙って、海を見ていた。

LUYは、その横顔をちらりと見た。それから、ずっと聞けなかったことを、ぽつりと口にした。

「……じいちゃん。なんで、ここに来たんだよ」

「散歩だ」

「いや、そうじゃなくて」

LUYは、言葉を探した。

「三十年、一回も族の場所に顔出さなかったんだろ。なんで今夜は来たんだよ」

鷹三郎は、しばらく答えなかった。

波の音だけが、規則正しく繰り返されていた。

「……お前の音が、聞こえたからだ」

「は? 家からここまで、二キロはあるぞ」

「聞こえた」

鷹三郎は、それ以上何も言わなかった。

涼子が、横で小さく笑った。

「この人ね、布団の中で飛び起きたんだよ。『ルイが鳴らしてる』って。あたしが先に出てたから、慌てて革ジャン探してさ。三十年ぶりに簞笥の奥から引っ張り出したもんだから、防虫剤の匂いがまだ――」

「余計なこと言うな」

LUYは、祖父の革ジャンの匂いを嗅いだ。確かに、かすかに樟脳の匂いがした。

思わず、噴き出した。

笑いながら、目の奥が少しだけ熱くなった。

その時、海の向こうから、朝日が顔を出した。

まっすぐな光が、直線道路のアスファルトを、端から端まで金色に染めていった。ガードレールに並んだ三人の影が、長く、長く伸びていく。

それは、新しいロードの始まりだった。

7 新しい夜へ

鷹三郎と涼子が、先に家へ戻っていった。

「朝飯、七時だからね。遅れたら抜きだよ」

涼子の声が、朝の直線道路に遠ざかっていく。

LUYは一人、ガードレールに腰かけたまま、海を眺めていた。指先の傷が、じんじんと脈を打っている。体は鉛のように重かった。だが、頭の中は、驚くほど澄み切っていた。

ここ何週間も続いていた、胸のざわつきが消えていた。

――呼んでたのは、たぶん、これだったんだ。

ポケットの中で、スマホが震えた。

画面を見る。知らない番号だった。東京の市外局番。時刻は、午前五時十二分。

「……誰だよ、こんな時間に」

LUYは眉をひそめながら、通話ボタンを押した。

『あー、もしもし。LUYさんの携帯で合ってる?』

しゃがれた、男の声だった。煙草と酒で焼けた、五十がらみの声。

『こんな時間に悪いね。黒猫レコードの矢澤ってもんだ』

「黒猫……?」

聞いたことはあった。インディーズの小さなレーベル。売れ線には目もくれず、尖ったバンドばかり拾ってくることで、一部では有名な会社だった。

『いやね、さっきから俺のスマホに、同じ動画が何本も送られてきてんのよ。港の道路で、ゴスロリの兄ちゃんがベース一本で暴走族とやり合ってるやつ。マンホールが踊ってるやつ』

LUYは、思わずスマホを耳から離した。

――あいつら、撮ってやがったのか。

アキラの手下の誰かだろう。この数時間で、SNSに上げられ、拡散されたらしい。

『夜中の二時から、もう三十万回再生だってよ。で、俺も見た。三回見た。四回目で、居ても立ってもいられなくなって、電話番号調べた』

矢澤の声に、熱がこもった。

『あんたの音、とんでもねえよ。あれは売れ線じゃねえ。売れ線をぶっ壊す音だ。そういう音を、俺は三十年探してた』

LUYは、しばらく黙っていた。

それから、口の端を吊り上げた。

「……ようやく鳴ったか」

『え?』

「俺の音が、届いたんだろ」

電話の向こうで、矢澤が一瞬黙り、それから腹の底から笑い出した。

『はっはっは! いいねえ、その生意気さ。今日、地元でライブだろ? 見に行くわ。話は、それからだ』

電話が切れた。

LUYは、ゆっくりと立ち上がった。

朝日が、港を真正面から照らしていた。金髪の縦ロールが、朝の光を浴びて、炎のように燃えていた。

LUYは、ベースケースを担ぎ直した。

「次の夜も、ぶっちぎってやる」

港の風が、背中を押した。

その潮の匂いは、まだ見ぬステージの音のように、LUYの胸を震わせていた。


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