第2話 ぶっちぎりの孫 ― Bass Junkie Road
1 夜のロードで鳴らす
ツアーが始まって、二週間が経った。
仙台、新潟、金沢、名古屋、大阪、福岡。六つの街を回り、残りはあと四本。
LUYの新曲を軸にしたセットリストは、街を重ねるごとに客を増やしていった。福岡では、ライブハウスの外まで行列ができた。バンドの空気も、少しずつひとつにまとまってきていた。
それなのに。
LUYだけが、眠れない夜を重ねていた。
今夜は、地元の公演の前夜だった。久しぶりの実家。久しぶりの、母の部屋のベッド。
布団に潜り込んでも、胸の奥がざわついて仕方がなかった。体は疲れ切っているのに、頭の芯だけが冴えている。
――誰かが、呼んでる。
知らない誰かが。遠くから。
午前一時。
LUYはベッドから起き上がった。黒いドレスに着替え、縦ロールをざっとまとめ、ベースケースを背負う。肩には、充電式の小型アンプ。
足音を殺して階段を降り、裏口から外へ出た。
港へ続く直線道路に入ると、海からの冷たい風が、正面から頬を打った。
子どもの頃、何度か来たことがある場所だった。母が死んだ年の夏、涼子が軽トラに乗せて連れてきてくれた。何も言わずに、ただ二人で、夜の海を眺めた。
アスファルトは新しく敷き直されていた。街灯も明るいLEDに変わっていた。
だが、夜の空気の匂いだけは、あの頃のままだった。
LUYは、道路の真ん中に立った。
その時だった。
遠くから、重低音が這い寄ってきた。
ブォン……ブォォォン……。
エンジンだ。十台。いや、二十台。マフラーを切った、腹に響く排気音。
懐かしい、悪の音だった。
「……来たな」
LUYの口元に、笑みが浮かんだ。
「来るよ。夜が」
真横から、声が飛んできた。
LUYは飛び上がりそうになった。振り向くと、ガードレールに腰かけて、涼子が煙草をくわえていた。
「ばっ……ばあちゃん!? なんで!」
「孫がこそこそ裏口から出てくのを、見逃すわけないだろ」
ライターの火が、赤く弾けた。
「この時間、この道。昔っから、走りたい連中が集まる場所さ。あたしらの時代からね」
ヘッドライトの列が、蛇のようにうねりながら近づいてくる。光の帯がアスファルトを舐め、空気が細かく振動し始めた。
先頭のバイクが、LUYの十メートル手前で急停止した。後続が次々と止まり、半円を描いてLUYを取り囲む。
リーゼントの男が、ヘルメットを脱いだ。二十歳そこそこ。鋭い目。背中の刺繍が、ヘッドライトの逆光に浮かんでいた。
鉄蛇
「誰だてめえ。こんな夜中に道のど真ん中で、目立とうってか。いい度胸じゃねえか」
LUYは答えず、ベースケースのジッパーを下ろした。
黒いフェンダー・ジャズベース。それを肩にかけ、小型アンプにシールドを差し込む。ボリュームのつまみを、一番右まで回した。
「名乗る前に、聴けよ」
「あ?」
「音で名乗る」
右手の親指が、四弦を弾いた。
――ズゥゥゥンッ!!
道路が、鳴った。
比喩ではなかった。足元のアスファルトが、確かに震えた。街灯の支柱がびりびりと唸り、港の黒い水面に、細かい波紋が走った。
小型アンプ一台から出る音ではなかった。
「な……なんだ、今の音……」
バイクにまたがった誰かが、呆然と漏らした。
LUYは、にやりと笑った。
「今夜この道を鳴らすのは、俺だ。お前らのマフラーより、デカい音でな」
2 帰ってきた伝説
リーゼントの男が、バイクを一歩前に出した。
スロットルを、ひねる。
ブォォォォンッ!!
切ったマフラーから吐き出された轟音が、夜を引き裂いた。後ろの二十台が、それに続く。排気音の壁が、LUYの全身を叩いた。
「調子に乗ってんじゃねえぞ、ガキ。ここは俺らのシマだ!」
LUYは、肩をすくめた。
「シマぁ? まだそんな言葉使ってんのかよ。昭和か」
「先輩から受け継いだ場所なんだよ!」
「へえ。その先輩って、誰だよ」
「てめえに関係ねえ! 黙れ!」
その瞬間だった。
「――俺だ」
闇の奥から、声が落ちてきた。
大きな声ではなかった。むしろ低く、静かな声だった。それなのに、二十台の排気音を貫いて、全員の耳にはっきりと届いた。
直線道路の向こう。街灯の光の輪の外から、一人の老人が歩いてきた。
黒い革ジャン。銀髪のオールバック。
一歩、また一歩。
老人が歩くたびに、空気の密度が変わっていく気がした。誰かが、ごくりと唾を飲む音が聞こえた。頭上の街灯が、じじ、と音を立てて一瞬だけ暗くなった。
LUYは、目を見開いた。
「じいちゃん……」
涼子が、ガードレールの上で煙を吐いた。
「遅いよ、あんた」
「年寄りは支度に手間取るんだ」
鷹三郎は、LUYの横で足を止めた。そして、半円に並んだ若者たちを、ゆっくりと見渡した。
バイクにまたがった誰かが、震える声で呟いた。
「お、おい……あれ……まさか」
「銀髪の……ディーター……?」
「嘘だろ。雷神会の、初代総長……」
名前が、波紋のように群れの中を広がっていく。何人かが、思わずバイクから降りていた。何人かは、ハンドルを握る手が震えていた。
三十年前に消えたはずの伝説が、目の前に立っていた。
鷹三郎は、リーゼントの男をまっすぐに見た。
「この道を、先輩から受け継いだっつったな」
「……」
「その先輩の、先輩の、そのまた先輩が、俺だ」
リーゼントの男の顔から、血の気が引いた。
「喧嘩がしてえなら、相手は俺がする。ただし、筋は通してこい」
その一言で。
二十台分のエンジン音が、ひとつ残らず、黙り込んだ。
誰もキーを回していない。それなのに、全員が無意識にスロットルから手を離していた。
LUYは、祖父の背中を見上げていた。
胸の奥が、熱く燃えていた。
――これが、本物の重さか。
ネットの白黒写真では、わからなかった。数千台が黙ったなんて、盛りすぎだと笑っていた。
盛ってなかった。
3 ぶっちぎり上等
長い沈黙のあと。
リーゼントの男が、引きつったように笑い出した。
「……は、はは。そうかよ。伝説の総長の、孫ってわけか」
男の目が、LUYのフリルとレースを舐めるように見た。
「血筋だけで、でけえ顔してんのかよ。じゃあ見せてもらおうじゃねえか。その血筋の、ぶっちぎりってやつを!」
ガードレールの上で、涼子がぼそりと言った。
「安っぽい挑発だね」
だが、LUYの目は、もうぎらりと光っていた。
「安くても、買ってやるよ」
LUYはベースのストラップを短く締め直した。
「全開で来い。お前ら全員のエンジンと、俺一本のベース。どっちがこの夜をぶち抜くか、勝負だ」
鷹三郎が、孫の背中に一言だけ投げた。
「やるなら、潰す覚悟でやれ」
LUYは唇を舐めた。
「音で、ぶっちぎる」
右手が、弦に叩きつけられた。
――ダダダダダダダダッ!!
十六分音符の嵐だった。
親指のスラップと、人差し指のプル。指が弦を叩くたびに、空気が爆ぜる。小型アンプのスピーカーが、悲鳴を上げるように震えている。
「上等だ、てめえら! 吹かせぇッ!!」
リーダーの号令で、二十台のバイクが一斉にスロットルを開けた。
ブォォォンッ! ブォンブォンブォォォンッ!!
排気音の津波が、LUYに襲いかかる。音で殴る。音で押し潰す。それが、彼らの喧嘩のやり方だった。
だが。
LUYの音は、その全部を呑み込んだ。
音量ではなかった。圧が違った。二十台のエンジンがばらばらに吠える中、LUYの低音だけが、一本の鉄の杭のように、まっすぐに地面を穿ち続けていた。
気迫が違った。魂の響きが違った。
指先の皮が、裂けた。汗が飛び散り、金髪の縦ロールが振り乱される。黒いフリルの袖が、夜風にはためく。
LUYが、吠えた。
「――音で、沈めぇッ!!」
その時。
「う、うぉぉぉっ!? じ、地面が……震えてる!?」
誰かが叫んだ。
直線道路のアスファルトが、細かく波打っていた。バイクのミラーが震え、ガードレールがびりびりと共鳴している。
「お、おい……な、なんだありゃ!?」
別の誰かが、道路の真ん中を指さした。
――ガタ。ガタガタガタ。
マンホールの鉄の蓋が、浮き上がっていた。
LUYのベースのリズムに合わせて、重さ四十キロの鉄蓋が、ガタン、ガタンと跳ねている。
「マ、マンホールが……踊ってやがる……!」
涼子が、ガードレールから腰を浮かせた。くわえていた煙草が、ぽろりと落ちた。
リーゼントの男は、呆然とLUYを見ていた。
そして、その口元が、ゆっくりと吊り上がった。
「……やべえ。エキサイトしてきたぜ」
男は、スロットルの握り方を変えた。闇雲に吹かすのをやめ、LUYの低音に耳を澄ませる。
そして、そのリズムに合わせて、エンジンを鳴らした。
ブォン――ダダッ。ブォン――ダダッ。
一台が合わせると、隣の一台がそれに続いた。三台、五台、十台。気がつけば、二十台すべてのエンジンが、LUYのベースに呼吸を合わせていた。
ばらばらだった排気音が、ひとつのビートになった。
もう、暴走ではなかった。
レースでもなかった。
――共鳴だった。
4 止めの一撃
共鳴は、膨れ上がり続けた。
ベースと二十台のエンジンがひとつになったビートは、もう誰にも止められない渦になっていた。港の倉庫のシャッターが震え、停泊していた漁船のマストが揺れた。遠くの住宅街で、犬が一斉に吠え始めた。
鷹三郎が、口を開いた。
「もういい」
LUYは、止まらなかった。
目が血走っていた。指先から血が飛び、黒いフェンダーのボディに赤い点を散らしている。それでも右手は弦を叩き続けていた。
止まらないのではない。止められないのだ。
音の渦に、自分が呑み込まれていた。
涼子の顔から、表情が消えた。
――まずい。あの子、持っていかれてる。
若い頃、何人も見てきた。スピードに呑まれ、自分が誰かもわからなくなって、そのままガードレールの向こうへ消えていった連中を。
「ルイ!」
涼子が叫んだ。届かない。
その時、鷹三郎が、一歩前に出た。
息を吸う。
「――止めろッ!!」
雷が、落ちた。
そうとしか言いようのない声だった。三十年間、一度も上げなかった声だった。
次の瞬間。
直線道路の全てが、静止した。
二十台のエンジンが、同時に沈黙した。誰もキーに触れていないのに、まるで心臓を握り潰されたように止まった。浮き上がっていたマンホールの蓋が、ガタン、と元の穴に落ちた。海から吹いていた風までが、ぴたりと止んだ気がした。
そしてLUYの右手も。
弦の上、一センチのところで、ぴたりと止まっていた。
音が、死んだ。
完全な静寂だった。耳鳴りがするほどの。
LUYの肩が、大きく上下していた。荒い息。額から流れ落ちる汗。
やがて、その目に、焦点が戻ってきた。
リーゼントの男が、バイクの上で唖然と呟いた。
「今の……何だよ……」
LUYは、ゆっくりと右手を下ろした。そして、血の滲んだ指先を見て、それから祖父の背中を見た。
息を整えながら、にやりと笑ってみせた。
「……制御だよ。暴れるより、よっぽど難しい芸だぜ」
本当は、祖父の声がなかったら止まれなかった。それは、LUY自身が一番よくわかっていた。
だから、強がった。
涼子が、ふっと息を吐いて笑った。肩から、力が抜けていた。
「言うねえ」
鷹三郎は振り返らなかった。ただ、前を向いたまま、静かに言った。
「暴れるだけなら、ガキでもできる。静かに勝つ奴が、本物だ」
その言葉は、リーゼントの男に向けられたものだった。
だが、半分は、LUYに向けられたものでもあった。
リーゼントの男は、何も言い返せなかった。
5 兄弟ノリ
しばらくして。
リーゼントの男が、バイクのスタンドを立てて降りてきた。ヘルメットを小脇に抱え、LUYの前に立つ。
近くで見ると、思っていたより若かった。たぶん、LUYと同い年くらいだ。
男は、しばらくLUYの顔をじっと見ていた。それから、ふっと吹き出した。
「……気に入った」
「あ?」
「最初は、血筋で威張ってるだけのボンボンかと思った。悪かったな」
男は、ヘルメットで自分の頭をこつんと叩いた。
「血筋じゃねえ。お前の魂が、ヤベえんだ」
LUYは肩をすくめて、笑い返した。
「最初からそう言ってんだろ」
男は右手を差し出した。指の付け根に、喧嘩でついた古い傷がいくつも走っていた。
「アキラだ。鉄蛇の頭やってる」
LUYは、その手を握った。血の滲んだ指と、傷だらけの指が、がっちりと組み合った。
「LUYだ」
アキラは握った手を離さないまま、LUYのフリルの袖と、金髪の縦ロールと、喉仏を順番に見た。
「お前さ。男? 女?」
後ろの手下たちが、息を呑んだ。
LUYは、眉ひとつ動かさなかった。
「どっちに見える」
アキラは少し考えて、それから豪快に笑った。
「どっちでもいいや。関係ねえな」
「関係ねえよ」
LUYも笑った。
「音で勝負だ」
アキラの後ろで、手下たちが顔を見合わせた。それから一人、また一人と、ぎこちなく笑い始めた。張り詰めていた空気が、少しずつほどけていった。
鷹三郎は少し離れた場所で、煙草をくわえていた。
火はつけていなかった。ただくわえたまま、孫と若者が笑い合うのを見ていた。
その口元が、ほんのかすかに緩んでいるのを、涼子だけが見ていた。
東の空の端が、わずかに白み始めていた。
6 朝が来るまで
アキラたちのバイクが、一台、また一台と走り去っていく。
最後の一台が、角を曲がる前にクラクションを短く二回鳴らした。また会おうぜ、という合図だった。
港の直線道路は、再び静けさを取り戻した。
東の空が、紫から薄桃色へと、ゆっくり色を変えていく。海の向こうに、まだ顔を出さない朝日の気配があった。
三人は、ガードレールに並んで腰かけていた。
涼子が、LUYの肩をぽんと叩いた。
「よくやったよ。あたしらの孫にしちゃ、ちょいとカッコつけすぎだけどね」
LUYは、鼻で笑った。
「だから、孫だからやったんじゃねえって。俺は俺だ」
「はいはい」
涼子は笑って、新しい煙草に火をつけた。
鷹三郎は黙って、海を見ていた。
LUYは、その横顔をちらりと見た。それから、ずっと聞けなかったことを、ぽつりと口にした。
「……じいちゃん。なんで、ここに来たんだよ」
「散歩だ」
「いや、そうじゃなくて」
LUYは、言葉を探した。
「三十年、一回も族の場所に顔出さなかったんだろ。なんで今夜は来たんだよ」
鷹三郎は、しばらく答えなかった。
波の音だけが、規則正しく繰り返されていた。
「……お前の音が、聞こえたからだ」
「は? 家からここまで、二キロはあるぞ」
「聞こえた」
鷹三郎は、それ以上何も言わなかった。
涼子が、横で小さく笑った。
「この人ね、布団の中で飛び起きたんだよ。『ルイが鳴らしてる』って。あたしが先に出てたから、慌てて革ジャン探してさ。三十年ぶりに簞笥の奥から引っ張り出したもんだから、防虫剤の匂いがまだ――」
「余計なこと言うな」
LUYは、祖父の革ジャンの匂いを嗅いだ。確かに、かすかに樟脳の匂いがした。
思わず、噴き出した。
笑いながら、目の奥が少しだけ熱くなった。
その時、海の向こうから、朝日が顔を出した。
まっすぐな光が、直線道路のアスファルトを、端から端まで金色に染めていった。ガードレールに並んだ三人の影が、長く、長く伸びていく。
それは、新しいロードの始まりだった。
7 新しい夜へ
鷹三郎と涼子が、先に家へ戻っていった。
「朝飯、七時だからね。遅れたら抜きだよ」
涼子の声が、朝の直線道路に遠ざかっていく。
LUYは一人、ガードレールに腰かけたまま、海を眺めていた。指先の傷が、じんじんと脈を打っている。体は鉛のように重かった。だが、頭の中は、驚くほど澄み切っていた。
ここ何週間も続いていた、胸のざわつきが消えていた。
――呼んでたのは、たぶん、これだったんだ。
ポケットの中で、スマホが震えた。
画面を見る。知らない番号だった。東京の市外局番。時刻は、午前五時十二分。
「……誰だよ、こんな時間に」
LUYは眉をひそめながら、通話ボタンを押した。
『あー、もしもし。LUYさんの携帯で合ってる?』
しゃがれた、男の声だった。煙草と酒で焼けた、五十がらみの声。
『こんな時間に悪いね。黒猫レコードの矢澤ってもんだ』
「黒猫……?」
聞いたことはあった。インディーズの小さなレーベル。売れ線には目もくれず、尖ったバンドばかり拾ってくることで、一部では有名な会社だった。
『いやね、さっきから俺のスマホに、同じ動画が何本も送られてきてんのよ。港の道路で、ゴスロリの兄ちゃんがベース一本で暴走族とやり合ってるやつ。マンホールが踊ってるやつ』
LUYは、思わずスマホを耳から離した。
――あいつら、撮ってやがったのか。
アキラの手下の誰かだろう。この数時間で、SNSに上げられ、拡散されたらしい。
『夜中の二時から、もう三十万回再生だってよ。で、俺も見た。三回見た。四回目で、居ても立ってもいられなくなって、電話番号調べた』
矢澤の声に、熱がこもった。
『あんたの音、とんでもねえよ。あれは売れ線じゃねえ。売れ線をぶっ壊す音だ。そういう音を、俺は三十年探してた』
LUYは、しばらく黙っていた。
それから、口の端を吊り上げた。
「……ようやく鳴ったか」
『え?』
「俺の音が、届いたんだろ」
電話の向こうで、矢澤が一瞬黙り、それから腹の底から笑い出した。
『はっはっは! いいねえ、その生意気さ。今日、地元でライブだろ? 見に行くわ。話は、それからだ』
電話が切れた。
LUYは、ゆっくりと立ち上がった。
朝日が、港を真正面から照らしていた。金髪の縦ロールが、朝の光を浴びて、炎のように燃えていた。
LUYは、ベースケースを担ぎ直した。
「次の夜も、ぶっちぎってやる」
港の風が、背中を押した。
その潮の匂いは、まだ見ぬステージの音のように、LUYの胸を震わせていた。




