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第4話 実食

 翌日の帰り道。


 俺は、あの生物と遭遇した場所へ向かった。


 理由は自分でも分かっていた。


 あの肉を食べてみたい。


 普通なら、そんなことを考えるはずがない。


 昨日まで存在すら知らなかった、二メートル近い黒い生物。


 見た目だって、どう考えても普通の動物じゃない。


 それなのに、腹の奥から湧いてくる食欲は消えなかった。


 路地に入る。


 昨日と同じ場所には、まだ血の跡が残っていた。


「……」


 周囲を見回す。


 すると、少し離れた草むらに黒いものが見えた。


「……あった」


 近づいてみる。


 間違いない。


 昨日、俺が倒した生物だった。


 二メートル近い巨体が、草むらの中に横たわっている。


 動いていない。


 俺はしばらく、その死体を見つめた。


「……本当に食うのか、俺」


 自分でも信じられなかった。


 けれど、腹が鳴る。


 グゥゥ……。


「……」


 もう迷うのをやめた。


 俺は持っていたナイフで肉を切り取った。


 赤黒い肉を袋に入れる。


 切り取っている間も、不思議と嫌悪感はなかった。


 むしろ、早く食べたいという気持ちの方が強かった。


 家に帰る。


 肉を水で洗い、フライパンに乗せた。


 ジュウッ。


 焼ける音と一緒に、香ばしい匂いが広がる。


「……普通の肉みたいだな」


 焼き上がった肉を箸で持ち上げる。


 少しだけ迷った。


 そして、そのまま口に入れた。


「……」


 噛む。


 思っていたような獣臭さはない。


 それどころか、かなりうまい。


「……うまい」


 思わず声が出た。


 二切れ目。


 三切れ目。


 気づけば、夢中になって食べていた。


 食べれば食べるほど、身体の奥が熱くなっていく。


「……またか」


 アーク鉱を飲み込んだときと似ている。


 胸の奥から熱が広がり、腕、背中、脚へと流れていく。


 けれど、あのときとは違った。


 熱はすぐには消えず、身体の中をゆっくり巡っている。


 俺は食べる手を止めた。


「何なんだ……」


 身体に異常が起きている。


 それだけは間違いない。


 でも、何が起きているのかは分からない。


 それでも腹は満たされていった。


 最後の一切れを飲み込む。


 すると、身体の奥にあった熱がすっと消えた。


「……終わった?」


 しばらく何も起きない。


 俺は立ち上がった。


 その瞬間だった。


 身体が、妙に軽い。


「……ん?」


 一歩踏み出す。


 いつも通りのつもりだった。


 なのに、思ったより身体が前へ出た。


「……」


 俺は立ち止まった。


 もう一度、歩く。


 今度はゆっくり。


 おかしい。


 身体の感覚が、昨日までとは違う。


 俺は自分の腕を見つめた。


 何も変わっていないように見える。


 なのに、確かに何かが変わっている。


 あの肉を食べた。


 そして、身体に変化が起きた。


「……偶然か?」


 そう呟いてみる。


 でも、偶然とは思えなかった。


 俺はテーブルの上に残った空の皿を見る。


 もう肉はない。


 そして初めて、自分の中に一つの疑問が生まれた。


 俺の身体は、一体どうなっているんだ。

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