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第23話 リンク

森の中には、今まで見たことがないほど多くの魔法石が転がっていた。




「やっぱり増えてる」




 知識のある仲間が険しい顔をする。




「これだけ増えてるなら、魔物が大量発生したのも説明がつく」




 慎重な仲間が魔法石から一歩離れる。




「……これ、本当に大丈夫なの?」




「何が?」




「魔法石だよ。こんな場所に、こんな数……」




 慎重な仲間は周囲を見回した。




 さっきまで襲ってきた魔物。




 その数。




 そして、足元に転がる大量の魔法石。




「魔物が増えてるだけでも怖いのに……原因まで増えてるみたいで、嫌な感じがする」




 好戦的な仲間も、今度は笑わなかった。




 足元の魔法石を見つめる。




「……俺も、これは気味が悪いと思う」




「珍しいね」




「俺だって、見たことのないものを平気で触るほど馬鹿じゃない」




 そう言いながらも、その目は魔法石から離れない。




「でも……」




「でも?」




「こんなに魔法石が増えた理由は、知りたい」




 知識のある仲間が頷いた。




「俺もだ」




 二人とも恐怖を感じている。




 それでも、目の前の異常から目を逸らせなかった。




 エリシアも、魔法石を見つめていた。




 その中に、一つだけ。




 他とは明らかに違うものがある。




「……これ」




 青白い光を放つ、透明な石。




 知識のある仲間が近づく。




「……待って」




「何?」




「それ、普通の魔法石とは違う」




 慎重な仲間が一歩下がる。




「触らない方がいいんじゃない?」




「でも……」




 好戦的な仲間が石を覗き込む。




「どう違うんだ?」




「分からない」




「分からない?」




「見たことがないんだ」




 知識のある仲間は、石をじっと見つめる。




「だからこそ、調べる必要がある」




 エリシアも石から目を離せなかった。




 怖い。




 触れない方がいい。




 頭ではそう分かっている。




 それなのに、なぜか気になって仕方がない。




「……この石、何なんだろう」




「エリシア、待って」




 慎重な仲間が止める。




 だが、エリシアはゆっくりと手を伸ばした。




 指先が石に触れる。




 ――瞬間。




 魔法石が強く輝いた。




「っ……!」




「エリシア!」




 慎重な仲間が駆け寄る。




「離した方がいい!」




 好戦的な仲間も剣を構えた。




「魔法石が暴走してるのか!?」




「違う!」




 知識のある仲間が叫ぶ。




「魔力の暴走じゃない!」




 青白い光がエリシアの手を包む。




 その光は腕を伝い――




 身体の中へ入り込んだ。




「……っ!」




 胸の奥が熱くなる。




「何……これ……」




 魔力とは違う。




 今まで感じたことのない力だった。




 エリシアは胸元を押さえる。




「エリシア、大丈夫!?」




「……大丈夫」




 光が消える。




 森に静寂が戻った。




 三人はしばらく動かなかった。




「……今の、何だったんだ?」




 好戦的な仲間が石を見る。




「分からない」




 知識のある仲間も答えられない。




 だが、その目には恐怖だけではなく、強い興味が浮かんでいた。




「こんな反応……見たことがない」




 慎重な仲間はエリシアを見る。




「身体、本当に大丈夫?」




「うん」




 エリシアは答えながら、自分の胸元に手を当てた。




 まだ、何かが残っている。




「……でも」




「どうした?」




「この石、持って帰ろう」




 慎重な仲間が驚く。




「持って帰るの?」




「うん。怖いけど……」




 エリシアは石を見る。




「何なのか、知りたい」




 知識のある仲間が頷いた。




「俺も賛成だ。ギルドなら詳しく調べられる」




「じゃあ、早く戻ろう」




 三人は周囲を警戒しながら、森を後にした。




 ***




 街へ戻ると、ギルドはいつも以上に騒がしかった。




「北の村からも魔物の大量発生だ!」




「西の森でも確認されたぞ!」




「また魔法石が見つかったらしい!」




 飛び交う声。




 エリシアたちは顔を見合わせた。




「……本当に、どこでも起きてるんだ」




 受付へ向かう。




「森の魔物討伐、終わりました」




「お疲れさまです。……え?」




 受付嬢が目を見開く。




「この数……?」




「依頼では一体だったんですけど、実際にはかなりの数がいました」




「やっぱり……」




 受付嬢が小さく呟く。




「最近、どこも同じなんです」




「魔物が?」




「はい。それと……」




 受付嬢が周囲を見渡す。




「魔法石の発生も、異常に増えています」




 エリシアは袋の中にある石を思い出した。




「……これも調べてもらえますか?」




 魔法石を取り出す。




 受付嬢の表情が変わった。




「……少しお待ちください」




 受付嬢が奥へ走っていく。




 しばらくして、一人の鑑定士が現れた。




「これを?」




「はい。森で見つけました」




 鑑定士は石を受け取る。




 手のひらに乗せた瞬間――




「……これは」




 鑑定士の顔が険しくなる。




「普通の魔法石ではありません」




「やっぱり?」




 知識のある仲間が身を乗り出す。




「何の石なんですか?」




 鑑定士は石を光にかざした。




「正確なことは分かりません。ですが……古い記録に似たものがあります」




「古い記録?」




「ああ」




 鑑定士は棚から一冊の古い資料を取り出した。




 ページをめくる。




「……これだ」




 そこには、今目の前にある石とよく似た絵が描かれていた。




「この石は、特殊な魔法石として記録されています」




 エリシアが尋ねる。




「名前は?」




 鑑定士が答える。




「――リンク石」




「リンク石……?」




「そうです」




 鑑定士は記録を読みながら続けた。




「詳しい性質までは分かっていません。ただ、この石には普通の魔法石にはない特徴がある」




「どんな?」




「遠くにある魔力に反応する」




 エリシアの表情が変わる。




「遠くに……?」




「ああ。そして、条件が揃えば……」




 鑑定士が一度言葉を止める。




「何かと繋がる性質がある、と記録されています」




 部屋が静かになる。




「何と繋がるんですか?」




 好戦的な仲間が聞く。




「それは……分かりません」




「じゃあ、この記録にも?」




「そこまでは書かれていない」




 鑑定士は首を横に振る。




「そもそも、リンク石そのものがほとんど見つかっていません」




 エリシアは石を見る。




「……私が触ったら、光りました」




 鑑定士が顔を上げる。




「触った?」




「はい。そのあと、何かが身体の中に入ってきた感じがしました」




「……」




 鑑定士の表情が変わる。




「それは、詳しく調べる必要があります」




「危険なんですか?」




 慎重な仲間が尋ねる。




 鑑定士はすぐには答えなかった。




「……分かりません」




 その言葉に、三人の表情が強張る。




 鑑定士はリンク石を見つめる。




「ただ一つ言えるのは――」




「……?」




「この石は、普通の魔法石とはまったく違う」




 エリシアは黙って石を見つめた。




 怖い。




 けれど同時に――




 もっと知りたい。




 自分の身体に入ってきたものが何なのか。




 そして、この石が一体何と繋がったのか。




 その答えを知りたいと思った。


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