第15話 戦闘
――ドンッ!!
巨大生物が地面を踏みしめた。
地下施設全体が揺れる。
「来るぞ!」
黒瀬が叫んだ。
隊員たちが一斉に銃を構える。
俺も後ろへ下がった。
巨大生物は動かない。
赤い目だけが、俺たちを見ている。
いや。
正確には――
俺たちの後ろ。
第33実験区画を見ている。
「……やっぱり」
白石が呟いた。
「こいつは、33番を守っています」
巨大生物が低く唸る。
――グゥゥゥ……。
「全員、攻撃開始!」
黒瀬の声と同時に、銃声が響いた。
――ダダダダダッ!!
弾丸が巨大生物の身体に当たる。
しかし。
巨大生物は止まらない。
「効いてない!」
隊員が叫ぶ。
「距離を取れ!」
黒瀬が指示を出す。
巨大生物が一歩踏み出す。
――ドンッ!
床が砕けた。
次の瞬間。
巨大な腕が振り下ろされた。
――ズガァン!!
床が吹き飛ぶ。
「うわっ!」
隊員が後ろへ転がる。
「大丈夫か!」
「はい!」
黒瀬が再び撃つ。
だが、巨大生物は弾丸をものともせず前へ進んでくる。
「化け物かよ……」
俺の口から言葉が漏れた。
その瞬間。
巨大生物の赤い目が俺を捉えた。
「……!」
背筋が凍った。
来る。
そう思った。
巨大生物が地面を蹴る。
「桐生!」
黒瀬が叫んだ。
俺は反射的に横へ飛んだ。
――ドォン!!
さっきまで俺がいた場所に巨大な爪が突き刺さる。
「速っ……!」
巨体からは想像できない速度だった。
俺は必死に走る。
後ろから地面を踏み砕く音が迫ってくる。
――ドンッ!
――ドンッ!
逃げても距離が縮まる。
「くそっ!」
俺は振り返った。
巨大生物が迫っている。
その瞬間だった。
右手が熱くなった。
「……またか」
指先から、黒い光が漏れる。
前回とは違う。
今まで感じたことのないほど強い。
巨大生物が俺に向かって腕を振る。
俺は咄嗟に右手を前へ出した。
――バシュッ!!
黒い光が弾けた。
巨大生物の腕が、
空中で止まった。
「……え?」
俺自身が一番驚いていた。
巨大生物も動かない。
その赤い目が、俺の右手を見ている。
「止めた……?」
黒瀬が呟いた。
巨大生物が腕を引く。
そして再び俺を見る。
今度は明らかに警戒していた。
「桐生!」
白石が叫ぶ。
「その力です!」
「分かってる!」
俺は右手を見る。
黒い光が、手の周囲をゆらゆらと漂っている。
熱い。
でも、不思議と怖くない。
むしろ――
身体の奥から力が湧いてくる。
「もう一度……」
俺は拳を握った。
黒い光が強くなる。
巨大生物が唸った。
そして。
今度は俺ではなく――
第33実験区画へ向かって動いた。
「待て!」
黒瀬が叫ぶ。
巨大生物が扉へ近づく。
白石が慌てて端末を見る。
「まずい!」
「どうした!」
「33番区画の扉に反応しています!」
巨大生物が扉の前に立つ。
そしてこちらを振り返った。
まるで、
「ここから先へ来るな」
とでも言うように。
「やっぱり……」
白石が呟く。
「こいつは33番を守っている」
黒瀬が銃を下げない。
「なら、どかすしかない」
黒瀬が俺を見る。
「桐生」
「はい」
「お前の力で、あいつを止められるか?」
「……分かりません」
「それでもやるしかない」
巨大生物が振り返る。
赤い目が再び俺を捉えた。
俺は一歩前へ出る。
右手を握る。
黒い光が、拳を包んだ。
「……やってみます」
巨大生物が咆哮する。
――グォォォォォ!!
地下施設が震える。
俺も走り出した。
巨大生物が腕を振る。
俺は横へ飛ぶ。
床に巨大な爪が突き刺さる。
「今度は……!」
右手を振り抜く。
――ドンッ!!
黒い光をまとった拳が、巨大生物の身体に当たった。
衝撃が地下に響く。
巨大生物の身体が、
ほんの少しだけ後ろへ下がった。
「……当たった」
俺は自分の拳を見る。
巨大生物を見る。
初めてだった。
俺の力が、
明確に相手へ届いた。
だが。
巨大生物は倒れない。
ゆっくりと顔を上げる。
赤い目が光る。
「……まだ、終わってない」
巨大生物が低く唸った。
そして。
背中の巨大な突起が、
ゆっくりと開き始めた。
白石の顔が青ざめる。
「……反応が上がっています」
黒瀬が叫ぶ。
「全員、下がれ!」
俺は動けなかった。
巨大生物の姿が変わっていく。
黒い光が、その身体の周囲に集まっていく。
俺の右手も同時に熱くなる。
まるで――
互いの力が呼び合っているようだった。
「なんだ……これ」
俺が呟く。
巨大生物が一歩踏み出す。
――ドンッ。
俺も拳を握る。
黒い光が、さらに強くなる。
次の瞬間。
巨大生物が、
俺に向かって突進した。




