第11話 一人でシてるの、見られてました
時間になった。
何の時間か。
それは決まってる。家に帰れる時間。カラオケボックスから抜け出せる、そんな時間だ。
「「「ふーっ……! ふーっ……!」」」
ただ、家に帰っている道中でも、三人は俺の体に張り付いて互いを牽制し合っていた。
ドロドロした陰湿な攻防が続くよりオープンだし、その辺はマシなのかもしれないが、何にしてもここまで露骨だと俺としても周囲の目が気になってくる。
いや、ドロドロしてないとは言えないのか……?
さっきから俺に話す時の声がいつもより高いだの何だので言い争ってるし……。
本当、心の底から思った。
三人を突っ込んでくる車から守ったとはいえ、もっと自分の体も大切にすべきだった、と。
柊花たちがこんなに変化するとは思わなかった。
重症だ。
重症レベルで俺に執着してくれ始めた。
「ねぇ、ゆう君? 今日はお風呂入った時、体のどこから洗う? 昨日はお腹からだったわよね?」
「いや、当然のように知ってるの恐ろしいからね、柊花さん? いったいどこから見てたの? 俺入浴した時一人だったよ?」
淡々とした冷静なツッコミも虚しく、今度は捺花が「違うよね」と迫ってくる。
「柊花の言ってること、全然違うじゃんね! 勇信が一番最初に洗ってたのはおち●ち●だよ! ひひひっ……♡ はぁ……はぁ……♡ あ、アタシ、全部見てたんだからぁ♡♡♡」
何言ってんのこの人。
目のハイライトをオフにさせて、ハァハァしながら言う捺花。
俺はもう、周りの目が気になって仕方ない。
当然のように人は行き交っているのだ。
「捺花、何でもいいけど股間はやめろ。いや、やめてくださいお願いします。周りに人がいるし、何よりでかい声でおち●ち●とか、女子高生が言っちゃいけません。ほんとやめて。頼むから」
懇願していると、極めつけには春花も俺にへばりつきながら、
「お風呂とか、今さら……? 春花なんて、ゆっちゃんが自分を慰めてるところを普通に見て……」
「ちょっと待って!? ははは、春花さん!? あなた何言ってるの!? ほんと、何言っちゃってるの!? お、おまっ、ほんとっ、え、えぇぇっ!?」
急速に顔を熱くさせながら、俺はつい大きい声を出してしまう。
あ、あり得ない。
絶対にあり得ない。
そんな、ば、バカな……!?
「えへへっ……♡ 何で気持ちよくなったかも知ってまーす……♡ それはぁ……春花のぉ……」
「アァァァァァァァァァァァ!!! やめてっ! もうダメっ! イヤァァァァァァ!」
へばりついていた三人を振り解き、俺は猛然とダッシュする。
ただ、それを逃さんとし、
「待ちなさい、ゆう君!? いったいどういうことなの!?」
「待ってヨォ、勇信……ほント……ドうイウコトなノかナァ……」
「ゆっちゃんは春花で気持ちよくなってたゆっちゃんは春花で気持ちよくなってたゆっちゃんは春花で気持ちよくなってた」
三人が三人とも、幽鬼のように瞳に闇の光を灯して追いかけてくる。
何度も言うが、病的だ。
皆、こんなのじゃなかったのに。
俺は泣く泣く駆けて、結局捕まり、自分の家へ帰ることもできず、屋島家に無理やりぶち込まれるのだった。




