表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェイクブレイカー  作者: merbotan
【完結済】炎上家
PR
11/14

カケルはRMIの建物の前に立っていた。来意を受付に告げる。

「アポの確認が取れました。どうぞお通りください」

 会釈して、社屋の中を進み、重厚な扉の前に立ちノックをする。

『どうぞ』 

 扉を開けると、木彫りの机の向こう側から、胡坐をかいた金髪の男がカケルを品定めするように見ている。

 RMIの記者、御影レンジだ。

「てめえか?早瀬カケルって」

「ああ」

 御影は、あてつけるように、大げさなため息をついた。

「吉川めぐみから、いきなり連絡が来てな。どうしても会ってほしい人がいるって。彼女は非常に不安定な状態だからね、俺で出来ることは全部してあげたいからさ。そうじゃなきゃ、てめえみたいな埋もれた存在に時間を使ったりしねえ」

 スマホに表示した川口の記事を、御影へ向けた。

「俺の記事だ。それが?」

「お前のフェイクを暴きにきた」

「ふうん」

 御影はかすかに口元をゆがめた。

「人の記事をフェイクって、なんて失礼な。そこまで言うのなら、何か根拠でもあるのか?」

「根拠なら、ある」

 断言できたのは、吉川との再会があったからだ。

「お前は吉川を担任の川口にけしかけた。炎上を作り出すために」

 カケルは、再びDMを送った後の、吉川とのやりとりを思い返した。

 吉川を前回と同じ喫茶店で待った。もう緊張はしなかった。

 現れた吉川に対して、カケルはすぐに頭を下げる。

 吉川の戸惑いが、頭のてっぺんを通して伝わってくる。

『どういうつもり』

『前回はごめん。君のメッセージに気付くことが出来なくて』

『……あたしのメッセージってどんな?』

 吉川は、探るような口調でいう。そこにはかすかな期待が含まれていた。席に着いた吉川に倣って、カケルも腰を下ろした。

『君が俺に言った言葉。その中に、たくさんのヒントがあった』

『……聞かせて』

『“投稿1つじゃなくて、私自身を見たか”の言葉。俺はこれに、“投稿を繋げることで、何か1つの意味をもつようになる”のではないかと考えた』

 吉川のまっすぐな視線を受け止める。

『そして、君の言った“先生のつぶやきの後の気持ち”という発言。あの事件のあとに注目をしてほしいということだ。あの後に見てみたら、君は数分単位でつぶやきを投稿していた』

(それくらいのことも、俺は気づかなかった)

 数分単位で時間が揃った投稿。不自然な短文の連続。

 その意味が、今ならわかる。

『最後に、”頭で考えて″って発言だ。頭で考える、それはつまり、“投稿の最初の1文字だけを並べろ”という事だと考えた。これらのヒントを頼りに、先生の投稿後に続いた投稿の頭文字を組み合わせると――』

 カケルは答えをじっくりと咀嚼して、

『“きじはうそ”だ』

 気づけば吉川の顔が、涙で歪んだ。今までこらえていたとてつもない重荷から、解放されたかのようだった。

『君は最初からずっと助けを求めていたんだ。誰かに、自分の行ったフェイクを暴いて欲しいと思ってたんだ』

 嗚咽する吉川にカケルは言葉を投げ続ける。

『担任の川口に、君のことをもう一度、聞いたよ。君の相談によく乗っていたそうだね。御影にとって都合が良かった。それだけだ』

 それからしばらくの間、泣きじゃくる吉川が落ち着くのを、カケルは一時も視線を外すことなく待ち続けた。

 カケルが話し終わると、御影はつまらなそうにため息をついた。

「なるほどね」

「で?だから、なんだって話だ」

「なんだと?」

 カケルは思わず口を挟んだ。

「フェイクを認めるのが怖いのか」

「怖い?」

 御影はあざけるような笑みを浮かべた。御影の目には、追い詰められた人間特有の焦りが一切なかった。

「てめえが俺の記事がフェイクっていうんだったら、それでいいさ。でも、大事なのはそんなことじゃない」

 御影の口元が、獰猛に吊り上がる。

「戦って、報道権を奪う。それが、俺たち記者の仕事だろ?」 

 御影がつぶやく。

「アクト。報道申請。戦闘モード」

『接続許可』

 その瞬間、炎が巨大な蛇のように床を這った。御影が両掌を開くと、右手と左手に炎が迸り、凶暴な渦となった。右手を振り払うと、豪炎にテーブルが飲み込まれ、一瞬で黒く焼け崩れる。部屋を覆いつくす炎が、獣のように唸りながら空気を焼いていた。

「さあ、ぼんやりとしてねえで、てめえも得物出せ。真実とかいう偽善、俺が灰にしてやる」

(偽善でも構わない)

 焼け付くような敵意を正面から受け止めて、カケルは小さく息を吐く。

 そして、真正面から御影を見据えた。

「アクト、報道申請。戦闘モード」

『接続許可』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ