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鍋聖人ポトリーグの異界イムラヴァ航海譚  作者: 門戸
第九踏 ≪やどりぎ島≫
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68/101

68. 白蛇の疑惑

 ・ ・ ・



 涙もひいて、ようやく落ち着いたころ。


 白蛇が残していったものを、ポトリーグは調べてみる。



「なんだこりゃ。やどりぎと……つたか何かをぐるぐるにからめて、葉っぱのくだ服を着てやがったのか!」



 巧妙につくられた深緑のがらをつまみ上げて、ポトリーグとあざらし姉弟はある意味感心した。いい仕事してる!?



『こんなものを器用に作って、変装するだなんて。砂地に擬態する、かれいみたいね!? なんて恐ろしいやつらなのかしら』



 ふんふん、るるとんは鼻息あらく憤慨している。



『しかも、優しい甘言でポトリーグを仲間うちに引き込もうとしてた、ですって? 手下たちにわたしとうずちゃんをかく乱・・・させておいて、自分は本命落とし工作……。とんでもなく頭のまわる蛇だわッ』


『もしかして。蛇どものかしらだったのんかも』


「いや、自分ちの≪王さま≫のことを、どうのこうの言ってたし。中くらいに偉いやつだったんじゃねえのかなぁ」


『ふん。ろくなものじゃないわ、あんなあざとい女の上司ってことでしょう。ポトリーグ、これからは知らない生きものの悪口なんか、真に受けちゃだめよ!』


「うん。つうかるるっちとうずっちが、俺のこと置いてくとかって、そもそもありえねえよなあ」


『そうそう。自分らは、ポトリーグと一緒』



 のんびり相槌を打つうずにうなづいてから、ポトリーグはやどりぎのへび殻を、ぽーいと海にむけて放った。


 気を取り直して、一行は今日も南にむけて出発する。



「やれやれ。島じたいは、接岸しやすくていいとこだったけど……。蛇のせいで、けち・・がついちまったなぁー」



 ざぶーん!


 沖に出て、柳枝に張った帆を操りつつ、ポトリーグはぼやいた。



「風つよくって、よく寝れんかったしよう」


『……あのさあ。ポトリーグに、るるちゃん』



 先頭をゆくうず雄が、くるりと頭をこちらに向けた。



『なあに、うずちゃん? 深刻そうに』


『うん。とりこし苦労とかだと、いいのん。でも蛇たちに、待ち伏せされてたのんかもん、って思っちゃって……』


「はあ!?」



 強風を利用して蛇特有の気配を消し、あの白蛇の一味はポトリーグたちをかなり長い間つけ狙っていたのでは。


 たまたま出くわしたと言うより、綿密に準備をして、ポトリーグだけ・・を仲間に引き入れようとしていたのではないか。


 そういう危惧を、うず雄は珍しくはっきりと主張した。



『自分ら、……と言うかポトリーグが、蛇どもに目をつけられてて。こう~……何て言うのん……』


『監視されているかもしれない、と言うの? うずちゃん』


『そう』



 どうやって。そして一体、何のために? 聞きつつポトリーグは、首をかしげる。


 そしてるる波は、うず雄の不安を否定しなかった。



『そんなまさかと言いたいけど、残念ながらありえるわね。あんなに頭のいいところを見せつけられたし、蛇に関しては何でもありだと思う』


「るるっち。見られてるんか、俺ら? 海ん中から?」



 薄気味わるさが、背中をそわーっと伝った。ポトリーグは、小舟カラハの脇を泳ぐ姉あざらしに問うてみる。



『むやみに怖がることはないわ、ポトリーグ。でもこの先は今まで以上に、ひげとおにくを引き締めていきましょう』


『……をひきしめるんでないのん、るるちゃん?』


『まあ用心して進もう、ということよ。何と言っても、蛇どものねぐらの島に近づいているのだしね』


「それもそうだ」


『さあ。じゃあ元気を出して、行きましょう……。お日さまもようやく、出てきたことだし!』



 ちゃぷん、と音をたててるる波は海中にもぐった。ちゃぷぷん、うず雄もそれにならう。


 ポトリーグは振り返り、背後に遠くなる二つのこぶだった島影を見やってから、南をきっとにらんだ。



「うずっち・るるっちと行く、俺の航海譚イムラヴァ。第九踏、≪やどりぎ島≫!! 完了ッ」



 こうしてポトリーグの黒い皮の小舟カラハは、幻惑の島をあとにした――。



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