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鍋聖人ポトリーグの異界イムラヴァ航海譚  作者: 門戸
第九踏 ≪やどりぎ島≫
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67/101

67. 怒りのるる姉ちゃん、トルネード炸裂

「あんちくしょう。何をたくらんでやがるんだ、蛇のやつら……!?」



 とすっ、ぶーんッッ!


 ポトリーグが放った次の石の一撃が、ぱっと蛇の群れを散らした。



『……でもあいつら、陸に上がってこないわね!?』


「こっちに来たら、鍋おみまいしてやるっ」



 ポトリーグが息巻いた、その時である!



『はっっ』



 うずの頭が、不意にポトリーグの横腹をぐいいと押した。



『――わたしの弟たちにッッ』



 つんざくように、るるとんが咆える!!



『触るんじゃぁ、ないわよーッッッ』



 べたべたべたあーッッッ……とものすごい速さで這って行ったるる波が、ぐるうんっ! 勢いよく一回転した!


 ぶちッ。


 何かのはじけ飛ぶ音!? るる波の強烈すぎる下半身ひねりとるねいど、あざらしおにく打撃にぶつかったものは、ぱたっと宙をひるがえって地に落ちた。



「あ……あれぇっっ!? なが虫の姉ちゃん……」


『ポトリーグ、寄ったらだめ! そいつ、蛇!!』



 うず雄が、ずどーんと身体をはってかばう。その後ろで、ポトリーグは目を丸くひんむいた。



『しゅーっっって、言ってるのんッ』



 ずるずる、……もそもそっ。


 盛大に生えていた深緑の毛。その中から、まさに皮を脱ぐようにして現れたのは、白い蛇だった……!



「うえええええっ!?」



 あまりに衝撃的な光景に、ポトリーグは顔の輪郭線をなみなみ波線描写にしてしまった。要するに震えあがっている。



――あいつっ。蛇だったのか!? 毛虫のふりして、優しい言葉で俺をだまくらかそうと……!



 白い蛇はもしゃもしゃ毛のかたまりの前で、すういと鎌首を持ち上げて立った。



『ふん。変装・・のおかげで、打ち身しなくて済んだわ』



 ポトリーグが修道衣の腰に巻いている、縄帯くらいの大きさ太さだろうか。


 ぎいん……! それなのに細身の蛇がこちらをねめつけた時、赤い視線にポトリーグは戦慄をおぼえる。ぞくり!


 こいつは洞窟の大蛇よりも、もっとずっと強く……そしてよこしまなものだ、とポトリーグはいま本能的に感じ取っていた。


 白蛇をにらんだまま、ポトリーグは鉄鍋を逆さにして、中身の石を地にあける。そのまま、ぐっと左手でふちを握りしめた。



――来るぞ……!



 しかし、白蛇は素早く身をひるがえした。


 するするっと浜辺の上をのたくってゆくと、あっという間に海中へ入ってしまう。



「あっっ」


『逃げた!』



 一瞬、白蛇の浸かったあたりの海水が、もわりと浮き上がった。


 小さな波が押し寄せたようにも見えたが、それは蛇たちの群れである。小さな蛇たちは引く波に溶け込んで、海の中へとすぐに見えなくなっていった。



「くそっ」



 ポトリーグは石を拾い、もう一度とねりこカモーンで撃ち込んでみた。ばしゅッッ!



『……もう、行ってしまったわ』



 るる波が低く言った。



『いったい、何だったのかしら……あいつらの目的は? 海の中で、わたしとうずちゃんを狩るでもなく……。ただひたすら、嫌がらせにあおって追いかけ回して』


『時間かせぎとか』



 ぼそり、と言ううず雄をポトリーグは見た。



『自分らと、陸にいたポトリーグをなるべく長く引き離すためのん』


『……そう言えば、さっきの変なもじゃもじゃ蛇だけは、地上にいたわね? まさかあいつに、何かされたの! ポトリーグ!?』



 波打ち際のてまえ、鍋ととねりこ杖とを地面に置き、ポトリーグはとりあえず姉弟のひげを両手に握りしめた。



「……あいつ。うずっちとるるっちが、俺のこと置いてきぼりにして、どっか遠くに行っちまったんだって。そう信じこませようとしやがったんだ」


『ま~さか~??』


『ま~さか~!!』



 るる波とうず雄は同時にしかくい前脚を上げて、ばしぶしとおのおのの胸のあたりを叩いた。この辺はきょうだい、さすがの協調しんくろ



『……信じたんでないのんな? ポトリーグ』


「……」


『置いてきぼりになんて、するわけがない。ずっとついてるわよ、あなたを群れに戻すまで』


「……うん」



 ぐすん。丸顔をうつむけて、鼻をすする。


 ポトリーグは、うず雄の太い首ったまをぎゅうと両腕に抱いた。


 ぼろぼろぼろん、……熱い安堵の涙があふれて流れる。


 それをるる波の鼻づらが、むいむいとふき取ってくれた……。


 ……おひげが、じゃらじゃらする……。



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