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鍋聖人ポトリーグの異界イムラヴァ航海譚  作者: 門戸
第七踏 ≪どんど島≫
50/54

50. 脂つやつや! 焼きさば祭り

「本日の主菜メインはぁぁ! うずっちのくれた……さばああああああッ」



 串がわりの木枝に刺して、焚き火であぶっていたその青き魚を、ポトリーグはぎーんと見据えた!



「もう、焼けたよなあああ? あああ、鯖ぁっ」



 ちらちら、とろとろ、その身のあぶらを火に照らすさば!


 ところどころ、いい感じにこんがりしてきた。もう~いいだろうッ! 串を手に、ポトリーグはがっぷりと喰いついた。



「は・ふーッッ」



 熱いその身を、はふはふ口中に転がす!



『ポトリーグ……鯖??』


『大丈夫なの? 鯖』



 これまで、人の子ポトリーグが鍋の中で海鮮を煮るのを、あざらし姉弟は何度も見てきた。しかしこうして直接火にあてて≪焼く≫のを、目にするのは初めてなのである。そういう意味で、うずとるるとんは心配して言ったのだった。



「大丈夫だあ、鯖(ça va)!! うめ―ッッッ」



 脂でつやつや! 口まわりを輝かせ、ポトリーグはずどーんと言い放った。



『そっか、よかったのん。尻尾がくびれてるやつを、とってきたのん』


「くびれ関係なしに、うまーいッッ」



 ああ、かみ合っていない。まぁいいのだ、よく噛んでお食べ。


 濃厚まろやか海栗うにに続き、脂のたっぷりのったさばを満喫できて、今夜もポトリーグはめちゃくちゃ幸せである。


 しましま模様の新鮮すぎるさばは、ポトリーグの歯にはさまって、ふしゅぅと一瞬たわむ。焼いたはずなのに煮汁が吹き出しているのか、と錯覚するくらいだ。それはさばの身のたたえる、脂なのである!


 しゃく、しゃくしゃく……。うず雄も、甘い野りんごの実を噛んでいる。



『うまいのが、いっぱいあるのんなー。世の中って』


『ほんとね、うずちゃん』



 ほのぼの言いあう姉弟あざらしも、この鯖を海中でしこたま食べて、今夜はごきげんなのだった。


 ほどよくお腹に重いさばのおかげで、ポトリーグは食べ終わって間もなく眠くなる。


 その日の陽光の最後の残照が、西の彼方に沈んだ頃。ポトリーグはさっさと指で歯をみがき、ほたて殻にすくった湯でぶはっとすすぐと、寝じたくに取り掛かる。


 焚き火の周りで乾かした海藻を、ひっくり返した小舟カラハの下に押し込み、今日もねどこを作成した。



『あーあ。今日は全速力で、いっぱい泳いだし……。怖いこともあったから、くたびれちゃったわ。わたし、もうこっち側でばたんきゅう、するわよ~』



 岩の裏に置いた小舟、その脇に並ぶようにして、るる波は本当にばったん・きゅう、と倒れ込んだ。



『お先ー、ポトリーグ』


「うん、おやすみるるっち。俺はその辺で、しょんべんしてから寝るッ」


『はいはい。いちいち宣言しなくって、いいからねー』



 ポトリーグは、あくびをする姉あざらしのひげを握ってから、浜草の茂るあたりへ歩いて行った。



「……ん~~?」



 そうして用を足しつつ、初めて気づく。


 水を探して、かたつむりと話したえりかの原……。そこが、明るい・・・のだ。



「うっわ。まじであそこだけ、昼っぽいぞ? 何で……あれ??」



 原の上に、ふわふわと浮いて漂うものがある。光っているのは、その浮きただよう何か・・なのだった。


 ポトリーグは首をかしげる。だいだいがかった、温かみのある白い光を放つものは……。ゆったり、ゆっくりと動きまわっている。


 鳥ではない、とポトリーグは直感した。あまりに動きが緩慢だ。むしろ、かたつむり並みにのろい。



「一つ、二つ、みっつ……」



 目を細めて、ポトリーグはそのあかりを数えてみる。ざっと二十近くもある?


 かたつむりが頼りにしていると言うその光は、ポトリーグの目にもよこしまなものには見えない。


 だから何となく、足を向けてしまった。眠いし疲れてもいるが、光の正体も知りたい。


 ぺたぺた……後ろから這う音がする。うず雄だ。




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