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鍋聖人ポトリーグの異界イムラヴァ航海譚  作者: 門戸
第六踏 ≪池(ロク)島≫
45/55

45. 魔除けのとねりこ杖(カモーン)

 ・ ・ ・ ・ ・


 ぎゅんぎゅん、うずはすっ飛ばす! 


 その勢いに引っぱられ、ポトリーグの黒い小舟カラハは波の上を風みたいに疾走して、おそろしい魔の島から遠ざかった。


 先頭のるるとんは、西側にずれてしまっていた航路をたて直し、まっすぐ南へと修正する。


 やがていまわしい島と、その周辺にあったいくつかの小さな岩礁は、水平線の向こうに散るつぶつぶ小さな点になってゆく。


 ポトリーグが何度目かに振り返ってみた時、≪池島≫はもう完全に見えなくなっていた。


 昼過ぎにつのめどり達の≪かたばみ四つ子島≫をった時よりも、空はずっと澄んで、明るい緑の天からは光が差している。


 こんな真昼間に、あんな怪奇に遭っただなんて! ポトリーグは鼻の頭にしわを寄せた。



「うずっち、るるっちー! いくら何でも、さすがにもう大丈夫なんでないのかッ。あの変な島、ずーっと後ろに行っちまったぞッ」



 ずばっ!


 あざらし姉弟は、水面上に頭をつき出した。海の中でも、ポトリーグの声はしっかりふたりに聞こえているらしい。



『そうねー! うずちゃん、そろそろ元の速さに戻しましょうっ』


『うんー』



 ゆる・ゆるる……と、うず雄は泳ぐ速度を徐々に落としていった。



「とんでもねえ化け物の島が、あったもんだな! うずっちとるるっちは、あの変なばばあ声に引き寄せられてたんか。もう大丈夫なのか?」



 大きくどならなくても話のできる速さにて進みながら、ポトリーグはふたりに問うた。



「るるっちは、あったま痛いの大丈夫か!」


『ええ。ポトリーグがあの石組みに向かって、びしっとたんか・・・を切ってから、すっかり良くなったみたい。うずちゃんはどう?』


『怖くておっかないのんは、おんなし。でも身体がねばねばするみたいな、変な感じはもうしないのん』


「そっかー! しっかし、何者だったんだろうな? 俺には変なばばあの声が聞こえてたけどよう、ありゃ生きてるもんじゃねえな! もちろん人間でもないぞっ」


『わたしにも、ちょっと聞こえたわよ。いけにえがどうのこうの、って……。要するにあのお化け、わたし達のこと引き寄せて捕まえて、食べちゃうつもりだったのよ。たぶんあの池の奥に棲んでいる、おそろしい何か・・ね!』


「だよな! 気ッ色悪い、汚ねえ池だったもんなあ」



 井戸に見えたあの石組みは、何なのか知らないが……。ポトリーグの注意を惹きつけるための、罠だったのだろう。封印のようにいただきに置かれていた、大きな石が気になるが。……十字が上に刻まれてなかったか??


 とにかく、危険はやり過ごせた。



――つうかこれ。案外……役に立ったな?



 舟底に置いたとねりこのカモーンを、ポトリーグはちらりと見た。


 今になってようやく思い出したが、とねりこの樹には魔をはらう力が備わっている、とポトリーグは聞いたことがある。


 ヒベルニアにはそういう、魔除けの樹々がいくつかあった。とねりこはその一つなのである。


 自分に向かって伸ばされた、あの禍々まがまがしい紫色の手をなぎ払った杖。


 とねりこの枝を拾ったのは、たまたまの思いつきだったが……。


 カモーンにしといてよかった! 俺もなかなか冴えてんじゃーん、と内心でポトリーグは自分をほめる。


 あるいはうず雄やつのめどり達を、蛇から守ったことを喜んだとねりこの樹自身が、少年に幸運を贈ってくれたのかもしれない。



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