表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鍋聖人ポトリーグの異界イムラヴァ航海譚  作者: 門戸
第三踏 ≪金のりんごと山羊の島≫
19/54

19. つるつる・マトウダイ鍋!

 ・ ・ ・ ・ ・



『ただいまー、お待たせポトリーグ! って、あららら』



 小舟カラハの近くに戻って来て、ぷりぷりっと口から貝を落としたるるとんは、ポトリーグの姿を見て噴きそうになった。


 ぐでーんと横たわったうずの脇で、ポトリーグも同じ向きにのびのび、のびていたのである。


 ≪とさかんむり≫は、本当においしかった。こくのある白身、そしてつるっとした皮!


 夢中でたべて、自分を襲った奇妙なる運命のことを、きれいさっぱり忘れたポトリーグである。


 ちなみにこの≪とさかんむり≫、ポトリーグが知らないだけで実は高級魚としてたっとばれているお魚だった。俗にいうところの聖ピエール魚。ヒベルニアでも南部あたりの人たちだったら、食べていたかもしれない。



『あざらしが増えたわ』


「るるっち~」



 まさに幸せのたらふく状態。腹ごなしのためにあざらし化していたポトリーグは、頭だけをるる波に向けた。後ろのうず雄は、がち・・で寝ている。



『ごめんね、遅くなっちゃって。雨と風の後だから、おいしい≪はまうり≫を探してたんだけど……。もうお腹いっぱいになっちゃったわねえ』


「はまうり?」



 もそり、とポトリーグは身を起こした。


 るる波の置いたものを見る。姉あざらしは口いっぱいに、大きな二枚貝を四つも含んできてくれたのだ。


 ころん、とポトリーグの手におさまるたまご大の殻が、つやつやしている。



「これも俺、全然知らねえなあ。ほたてみたいなのか?」


『いいえ、また別ね!』


『はまうりか~。るるちゃんは、砂ん中から貝とかえびを探し出すのが、すごくうまいのん……』



 ぐでんと横たわったまま、うず雄がもにゃもにゃと言う。眼を閉じているから、ひょっとしたら寝言なのかもしれない。



「あ、砂ん中に棲んでる貝かあ。ほいじゃ鍋ん中に、水とつけとこ! 砂抜きになるから、次に腹へった時に食べごろになるなッ。ありがと、るるっち!」


『……人間って、食べものを持ちこし・・・・できるのね。たいしたものだわ』



 とってきたものが無駄にならなかった、と知ってるる波はほっとしたらしい。


 次いでポトリーグにりんごの実をもらって、仰天した。



『んまあッ、これってりんごじゃないの!』


「なんだ、知ってたんか? るるっち」


『ええ、ものすごく珍しいのよ。秋の大嵐の後に、たま~に海に流れてくることがあったって。大おばちゃんが話していたわ……しゃく。うわあ、おいしいのねぇ! すてきな香り』



 海の中にない香りと味とを、姉あざらしは大いに面白がっている。



「そうそう、言うの忘れてた。そのりんご見つけた後によう、やぎを見たんだ」


『あらっ! 何頭みたの。元気だった?』



 遠巻きに何度も山羊を見たことのある姉あざらしは、何やら友達感覚でポトリーグに聞き返した。



「いや、それがー。でかい雄が、食われて死んでたんだ。狼にやられたんだな、あれ」


『……』


『おおかみて、何? ポトリーグ』



 もそり。今度はしっかりと起きたうず雄が、砂浜上で寝返りを打って問う。



「狼はー、えーっと。群れをつくって、他の生きものを襲う四つ足のけものなんだけど。ここんちでは呼び方違うんかな?」


『いえ、同じよ。わたしは見たことないけど、お話にだけ聞いたことがあるわ。……でも、この島に肉を食べるけものはいないはずよ……?』



 るる波は怪訝そうに、なめらか眉間にしわを寄せていた。次の瞬間、ふあっと口を開ける!



『ちょっと……まさか! ポトリーグ、その死んだやぎというのは。毛皮が白いまんまで、残っていたんじゃない!?』


「うん、白かったなー。肉はほとんどなくって、骨がのぞいてた」


『……それは。蛇どもの犠牲者だわ!』


〇 〇 〇

~物語の中継こたつより~


デリアド副騎士団長「ワイルド殺人事件ですね。婆様」


婆あざらしバーべ『捜査する気になってるにょん? カヘルたん」


インテリ王「殺人、というより殺山羊なのでは……」


「冷えひえカヘル侯の巨石事件簿シリーズ」

https://ncode.syosetu.com/s7145i/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ