生い立ち~何歳の頃に戻りたいのか?~
―――――事件発生から17時間経過。
沖縄県那覇市
与儀警察署
公安調査庁と沖縄県警から委託を受けて特別に取り調べを行っていた和己は一人の少年を取り調べていた。
和己は少年の供述に驚き、同時に少年に共感し、感謝する部分があった。
「・・・お前が、あの事件もやってたとはなぁ」
大きく深呼吸してニヤリと笑うと感謝の言葉を告げる。
「そうか・・・お前が殺したあいつらは、殺していい奴らだったんだ。よくぞやってくれた。感謝するよ」
和己の言葉に記録を取る刑事は耳を疑った。
「あの・・・何をおっしゃてるんですか?・・・こいつは、沖縄で、100人近い人間を殺した史上最年少テロリストですよ!?」
「うるせぇ。こいつは殺していい奴を葬ったんだ。褒めてもいいだろ!」
和己は史上最年少テロリストとなった少年の取り調べを続ける。
「身元は・・・新垣研吾。17歳。本籍地は沖縄市上地・・・おおよそコザか」
「へぇ。おまわりさん、ないちゃーなのにコザの事知ってるんだ?」
「俺は警察官じゃねぇ。ただ、委託を受けただけの捜査協力者だ」
音響感知爆弾という一定の大きさの音を感知して起爆する爆弾を低コストで作り上げたとは言い難いほど新垣は精神は幼く、基本的に見ず知らずの人間にはタメ口で接するらしく、「ふーん」と背もたれに背中を預ける。
取調室のドアが開き、澤北が入ってきて新垣のこれまでの生い立ちが書かれた資料を手渡した。―――
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新垣研吾は沖縄市コザの貧困層出身で未成年ながらキャバクラや売春で生計を立てる母親と自堕落で無職の父親の元に生まれる。
父親が暴力事件を起こしたことで貧困家庭を直撃し、一時は児童相談所に保護される。
しかし、母親によって児童相談所から連れ出された。
経済的にも精神的にも追い込まれていた母親はまだ2歳の新垣を巻き込んで入水自殺を図るも、失敗して再び保護される。
それからは小学校、中学校に通い、母親と父親を反面教師に勉学に励んだ結果、進学校も狙える成績と言われる。
特に数学や理科など理系にほぼ特化している成績でこのまま進学校で勉強していれば、医学部にも入れるとさえ期待を持たれた。
また、勉学だけでなく部活は野球部に入部し、朝早くから夕方遅くまで楽しむほど熱中していた。
お世辞にも上手いとは言い難いものの、プレーを楽しむ姿は周囲にも良い影響を生み出してか、監督からは「お前がいないと空気が悪い」と中学で全国大会のベンチ入りメンバーに選ばれた。
だが、高校へ通う経済状況ですらないために母親の伝手で那覇市松山へ住み込みで黒服のバイトに勤しむ様になる。
だが、黒服のバイトは深夜であるが故に労働基準法に違反しているが、それを無視する形で続けられていた。
さらに黒服のバイトをしながら、建設業やレストラン、そしてコンビニなど昼の仕事もし、両親がこさえた借金を返済していく。
だが、無理がたたり、体調を崩したにも関わらず、コンビニの本部社員によって少し寝かされただけですぐに出勤させられたのだった。
日頃から接客業に携わっているためか、観光客や本土出身者、さらには外国人観光客とは反りが合わず、トラブルを起こしていた。
次第に先に社会に出ている同世代の高校生や専門学校生が自分よりも無知で無能であるにも関わらず、裕福な暮らしをしている事に嫉妬と怒りを覚えていた。
それは破壊衝動に代わっていき、自分ではどうしようもない現実を破壊したいと思った矢先、東京や首都圏でコンビニを狙ったテロが発生し、その模倣しやすい手口からコンビニを狙ったテロを画策し始める。
さらに実行に移すにあたり、資金と言う問題も出てきたが、自分で稼いでいる金である以上、使い道は自由で買えるものは買うことができた。
爆弾は時限爆弾を作ろうと考えたものの、コストや材料が集めにくいという問題が浮上した。
そこで理論上では低コストで自分の身の安全の確保もしやすい音響感知爆弾の開発を思いつく。
その前に高校生や専門学校生を狙って爆弾のテストを兼ねた爆弾テロを引き起こし、1店舗では最大となる被害者数を出す事件を起こした。
その多大な被害に怖くなったが、同時にもう後戻りが出来ないという覚悟がその恐怖をかき消した。
そして、10月13日、金曜日、ついに実行に移し、観光客が多い国際通りを標的にし、多大な被害を出した。――――
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―――――事件発生から3時間経過。
沖縄県那覇市泉崎
沖縄県庁
現地対策本部
国際通りでテロを引き起こしたテロリストがまさかの17歳の少年である事に現地対策本部の面々に暗い影を落とした。
さらに県警本部としては新垣が松山で住み込みで働いている事が過去の事件の関係でかなり厄介であった。
「松山か・・・これまた厄介な場所にいますね・・・」
木谷本部長は過去の事件―コンビニ店員殺害事件で証言者が現れず、捜査が難航した事が思い起こされた。
だが、これに関した答えはすでに根間知事の中で決まっていた。
「匿うようなら、キャッチであろうと国家を脅かす者として、排除してもいいと思います。我々がテロリストを許す事はない。匿う者もまたテロリストです。自衛隊による身柄の拘束を要請します」
コンビニ店員殺害事件の際にも感じたピリつきを現地対策本部の面々は感じ取り、自衛隊から派遣されている今井と宮越は「危機管理対策センターとも協議します」と静かに危機管理対策センターに詰めている防衛省の担当へと繋いだ。




