テロリストの正体~落とし物~
「現地対策本部や政府が設置した危機管理対策センターは当初、沖縄で反基地運動を推進する左翼活動家によるテロであると考え、テロに遭った人たちの救護と同時にテロリストの捜索と制圧が任務となっていました。
しかし、実際の犯人像と全く違う事に気付くのは、当初の作戦通りに拠点が設置されてからでした。」
沖縄県那覇市
与儀警察署
テロがあった国際通りから那覇新都心向けの道路である国道330号線沿いにある与儀警察署の駐車場に近隣の消防署からやってきた緊急車両が続々と集まり、国道330号線の交通整理が終わり次第、素早く拠点をつくり、救護を行う事を目的としていた。
テロからすでに1時間が経過し、ようやく渋滞の解消が見えてきたのか、スムーズに車が通るようになっていた。
そして、開南方面への道路の封鎖が行われ、ようやく当初の作戦通りに事が進む。
「開南方面、封鎖が完了しました。誘導しますので後についてきてください」
与儀警察署の交通課のパトカーを先頭に与那原消防署からやってきた消防車両と救急車がそれに続いた。
その後からも他の市町村からやってきた緊急車両が続いていく。
県警本部からは自衛隊車両が向かっているらしく、仮設の処置室にするためのテントの設営を行う手筈になっている。
懸念している事はもう一つ、消防車両が進めない程の渋滞が起きていたため、火災の状況も1時間前より進んでいる可能性があったのだった。
現代の建築材に耐熱耐火性の素材が使われているとは言え、1時間ももつとは思えず、その間に避難が出来ていればいいのだが、大人数をいかにして誘導するかが課題となっていた。
「にしても、ちょっと怖いのは、テロリストが潜伏している可能性がある事ですよね」
左翼活動家らがついにテロを起こし、偵察用に飛ばした那覇消防局のドローンを落とした事であった。
活動家からすれば国家への戦闘行為であるため、下手に偵察されては困るとドローンを落として破壊したと見られる。
そのドローンが撃墜されたと思われる牧志駅前に着くと警察官らが警棒を取り出して警戒しながら拠点の設営を始める。
牧志公園が最適と考え、すぐに消防車両を横付けして準備をし始めようとした。
「おい、お前らは何だ?」
逃げ遅れたのか、酔っ払いが救急隊員らに絡んできた。
「ここは今から災害拠点としてテントの設営を行います」
「は?何で?」
「先ほどのテロによって多くの負傷者が出ています。その救護のための拠点を・・・」
「だったらわったーはどこで呑んだらいいか?」
「は、え?・・・」
酔っ払い達に絡まれ、設営作業がストップした。
そこに自衛隊も到着し、すぐにテントの設営を始めた。
「危険ですのでここから避難して下さい」
自衛官らは酔っ払い達に避難するように促す。
「あ?税金泥棒が何か?エラソーに」
「ここからは動かんよ」
自衛官らに絡み始めた酔っ払い達は頑としてここから動くつもりはないようだ。
「はぁ・・・」と思わずため息が出た後に酔っ払い達を何とか誘導しようと足を前へ踏み出した。
瞬間、何かプラスチックのようなものを踏みつけたような音がした。
足元を見るとそれはドローンの羽であった。
「これ・・・消防のドローンじゃないですか?」
「何でこれが?・・・まさか・・・!」
このドローンを落としたのが目の前にいる酔っ払い達の可能性が出てきた。
ドローンの近くにビール瓶が落ちており、ビール瓶は一本だけではなく、何本も割れたであろう破片が落ちており、恐らくは何本もビール瓶を投げてドローンを落としたのだろうと推測出来る。
「鬱陶しいから落とした。あんた達のだったのか」
牧志公園で酒盛りをしていた酔っ払い達がドローンを落とした事を認めた事でこのテロによる犯人が左翼活動家ではない可能性が出てきた。
「現地対策本部。こちら、救急隊。牧志公園での拠点の設営に酔っ払いによる妨害での遅延が発生中。先ほどの偵察用ドローンも酔っ払いによる妨害である事も認めている」
『こちら現地対策本部。警察官を派遣し、公務執行妨害での逮捕を強行し、強制的に避難させる』
ドローンを撃墜したことを認めたために現地対策本部としては公務執行妨害として逮捕し、強制的に避難させる口実が出来たのだった。
ほどなくモノレールで警察官が到着し、酔っ払い達を取り囲む。
「おい、税金泥棒!何しやがる!」
警察官らが到着した事が気に食わないのか、今まで以上に反抗し始める。
だが、逮捕権を持たない消防や自衛隊と違い、警察官らはすぐに「公務執行妨害で逮捕します」と取り押さえ、モノレールで連行する事になった。
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沖縄県那覇市
沖縄県庁
展望室
現地対策本部
ドローンを撃墜したのが左翼活動家らではない事が判明した事、爆弾を作ったのが工学知識のある素人である可能性が高い事から完全にテロリストの正体の洗い出しは振り出しに戻っていた。
そんな中、解析を行なっていた公安調査庁から1つの情報が舞い込んだ。
「知事、ファミメ泊1丁目店の爆破事件と同一犯の可能性が高いです」
根間知事にファミメ泊1丁目店の事件の報告書と国際通りのスリーセブンに現れたテロリストと思われる人物の画像が渡され、根間知事はそれに目を通す。
それは沖縄県警の方にもすでに共有されており、すぐに科捜研から報告が挙がった。
「データベースから補導歴のある少年1人が出てきました」
木谷本部長が刷りたての報告書を持ってきて根間知事に見せた。
その報告書にあったのは、補導歴のある17歳の少年だった。―――――




