振替輸送~言葉の限界~
沖縄県那覇市
ゆいレール沖縄県庁前駅
沖縄都市モノレールからチャーターした車両から医療センターやモノレール沿線の医療施設から集められた医師らが県庁の県民広場に設置された臨時の医療拠点へと向かい始めた。
一時的に県庁前駅から医療センター駅の区間を運休とし、また、モノレールの駅の沿線にある医療施設の医師らは救護目的という名目であれば県庁前駅まで無償で乗車できるように措置が取られた。
「市立那覇中央医療センターの塩川です。これより、モノレールによる搬送を行います」
「那覇中央医療センターの与那覇です。程度の重い方から搬送を行います。医師や看護師の指示に従ってください」
塩川や奨太郎らはすぐに避難してきた人たちに付けられているトリアージタグを見て誘導を開始した。
また、不足していたトリアージタグも中央医療センターからの支援物資として渡され、増え続ける患者に対応できるようになった。
奨太郎がトリアージタグを見て軽傷だった年配の避難者を「では、こちらで待機してください」と案内するも、それを全く聞き入れずにモノレールの駅へと向かっていた。
「ちょっと!ちょっと!あなたはここで待機してください。私達は程度の重い方を案内しているんです」
「我们能从这里撤离吗?(ここから避難できるんじゃないですか?)」
相手は中国人で全く日本語が通じず、奨太郎の制止を振り切ってモノレールの駅へと向かおうとしていたところで、奨太郎が「I'm sorry. Your injuries are minor, so please wait here.(申し訳ございません。あなたは軽傷ですのでここで待機してください。)」と英語で言うも、「我是台湾人,我不懂英语(私は台湾人です。英語はわかりません)」と返ってきたのだった。
それを見ていたオラオラ系の日本人の観光客が「どけ!」と無理矢理、台湾人の観光客をはがすと我先にとモノレールの駅へ向かおうとしていた。
そのオラオラ系の観光客のトリアージタグは軽傷であった。
「あなたも県民広場に待機してください。軽傷ですよね」
「あ?これで病院行けるんだろ?だったら乗せろよ」
「私達は程度の重い方から優先的に・・・」
「知らねーよ!!」
騒ぎを聞きつけた警察官と自衛官が現れ、事情を説明すると勝手に駅へと向かおうとしている2人を止める。
台湾人の観光客も少しばかり感情的になってきたところで警察官は応援として中国語がわかる警察官をよこそうとしていた。
対して、すでにボルテージが上がったオラオラ系の観光客が自衛官に掴みかかろうとした。
だが、すぐに自衛隊式の徒手格闘で制圧され、「いてぇな!!何すんだよ!こっちはケガ人だぞ!!あああぁン?!」と吠えるオラオラ系の観光客はその場で公務執行妨害罪で逮捕されたのだった。
「助かりました・・・まさか、英語が通じないとは・・・」
奨太郎は駆け付けた警察官と自衛官に礼を言うと、「さっきからこういうのばっかりなんです。特に中国人や台湾人は言語も通じないので齟齬が生まれているようです」と実は頻発している事が告げられた。
――――――――――――――――――――
沖縄県那覇市
おもろまち駅
バスプール
沖縄モノレールは県庁前駅から医療センター駅までの区間を運休したことで振り替え輸送が必要となり、バスターミナルがある旭橋駅や大きなバスプールのあるおもろまち駅、始発である那覇空港駅と終点である浦添の浦西駅は人でごった返していた。
上りの路線の浦西駅方面を運休にし、県庁前駅と医療センター駅を行き来するのみにした事や拠点を4つにした事である程度は分散化が図られていた。
沖縄の鉄道事情として、本土の鉄道会社のように自社でバスを持っている訳ではないので、既存のバス会社と連携して振り替え輸送を行う事になっていた。
しかし、近年、モノレールが出来た事や元々の根強い車社会により、バスの需要が少なくなったため、便数自体が少なく、運転手の数も足りていなかった。
おもろまち駅のバスプールには次々とバスが止まり、他の振り替え輸送の拠点同様、乗客で混雑していた。
「浦西方面はこちらとなっています」
「那覇空港方面は運行中です。そちらの方をご利用ください」
そんな中、割り込む形でバスに乗ろうとした観光客がいたため、すぐに駅員が止めに入った。
「すいません。こちら、振り替え輸送便ですが、行き先はどちらですか?」
「那是什么?(何でしょうか?)」
「あー・・・Where are you going?(行き先はどちら?)」
「图片?」
駅員やモノレールやバスの本社から派遣されて来た社員によって整理が行われているが、やはり観光立県である以上、避けられない問題として外国人観光客の誘導であった。
交通機関とは言え、外国語が不得意な職員は多く、ここでも日本語どころか英語が通じない外国人に苦戦していた。




