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〜Past Glory〜  作者: パイナップルの妖精
第五章「色男伝」
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二話「色男講座」



 大和はラースにとって羨望の的だった。


「大ファンです! 会えて光栄です!」


 立ち上がり力強く握手するラース。

 大和はカラカラと笑う。


「敬われるのは悪い気がしねぇな」

「まさかこんなに喜んでくれるとは思ってなかったぜ」


 右之助も笑う。

 ラースは早口に語り始めた。


「何言ってるんですか右之助さん! 魔界都市の、特に人外から圧倒的な人気を誇っているんですよ!? ファッション雑誌で特集が組まれれば即日完売! 魔界都市の抱かれたい男ランキングでは男女共に堂々の一位! 有り体に言えばスターですよ! 大スター!」

「お、おう……」


 興奮気味に語るラースに右之助は若干引く。

 当の大和はというと……


「ハッハッハ、そうなのか」


 カラカラと笑っていた。

 右之助は「流石だな」と肩を竦める。


 源次郎は微笑みながら大和に聞く。


「旦那、まずは何にしましょう?」

「ああ、そうだな。おすすめの盛り合わせと焼酎を頼む」

「わかりやした」


 源次郎はてきぱきと準備を始める。

 大和はカウンターに座り、ラースの目を見た。


「それじゃあ、始めるか。色男講座」

「は、はい! よろしくお願いします!」


 ラースは深く頭を下げると、懐からメモ帳を取り出した。



 ◆◆



 大和はラースを引き寄せる。

 首筋、襟元の匂いを嗅ぎ、髪を触る。


「!!? !!?」


 驚いて固まるラースに、大和は満足そうに頷いた。


「合格だ」

「何がですか!?」


 ラースは顔を真っ赤にして叫ぶ。

 大和は笑いながら肩を叩いた。


「女の子みてぇな反応すんなよ」

「いきなり密着されたら驚きますし、恥ずかしいですよ!」


 ラースは自分を抱きしめながら叫ぶ。

 大和は頬杖を付いた。


「とりあえず、第一段階は合格だ」

「第一段階?」


 ラースは首を傾げる。


「身だしなみは良好。きたねぇ野郎に女は寄り付かねぇ」

「!!」

「だが服装はダメだ。戦士職だから汚れてもいいようにしてるんだろうが、勿体ねぇぞ」

「っ」

「素材はいいんだ。きっちり仕上げろ」

「は、はいっ」


 ラースは盛大に照れながら頷く。


「次は第二段階だ」

「はい!」

「第二段階は、ようは男磨きだ。己を知り、長所を磨いていく……第一段階が基礎なら、第二段階は応用だな」


 大和は顎を擦る。


「動作、言動、佇まい……全てにおいて磨く要素がある。鍛錬や学問と一緒だ、怠るなよ」

「はい!!」

「つぅわけで、これ」


 大和は手帳を数冊出す。

 どれも表紙が擦り切れていて、かなり使い込まれているようだった。


「俺が男磨きの時に使ってたメモ帳だ。やるよ」

「い、いいんですか!?」

「参考になるかわからねぇけどな」

「あ、ありがとうございますッ!! 家宝にしますッ!!」

「大袈裟だっての」


 大和は苦笑いすると、もう一度懐に手を入れる。


「丁度良い。見せてやるよ」


 大和が取り出したのはオイルライターだった。

 慣れた手付きで煙草を取り出し、火を点ける。


 たったそれだけの動作なのに、ラースは見惚れてしまった。


 一つ一つの動作がキマっている。

 端的に言ってカッコいい。


 大和は秘密を明かす。


「利き手じゃないほう。俺の場合左手だが、そっちでする動作はセクシーに見えるんだよ。他にもオイルライターの出し方や煙草の咥え方……工夫しようと思えばいくらでもできる。鏡と睨めっこして、自分だけの型を見つけてみな」

「……はい!! 頑張ります!!」


 ラースは笑顔で頷く。

 大和は紫煙を吐き出しながら言った。


「いい感じだし、行くか」

「おう、それがいい」


 大和と右之助は目の前の皿を食べ切り酒を呷る。

 ラースは聞いた。


「あの、これからどうするんですか?」

「基礎、応用も重要だが、実践が一番だ」

「東区に行くぞ、ラース」


 右之助に肩を組まれ、屋台から出る。

 源次郎の粋の良い声が背中を打った。


 東区──通称「裏世界の吉原遊郭」。

 古今東西、ありとあらゆる美女美少女が集う夜の都だ。


「ええええ!!? 今から行くんですかァ!?」

「そうだ」

「逃がさねぇぞ」


 慌てているラースを、二人は無理矢理連れて行った。




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