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〜Past Glory〜  作者: パイナップルの妖精
第五章「色男伝」
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一話「色男」



 分厚い曇天が広がる。

 喧騒、銃声、悲鳴が織りなす合奏曲(オーケストラ)は、今は奏でられていない。


 魔界都市が賑わうのは夜からだ。

 日中は殆どの者が眠っている。


 青宮霊園にある噴水広場の前で、細身のオークが立っていた。

 黒いバンダナと実戦重視の戦闘服(ツナギ)を着た青年である。

 この種族は不衛生で有名だが、彼はきっちりと身なりを整えていた。


 オークの青年──ラースは頭を下げる。

 歩いてきたのは純白のスーツとサングラスが似合う伊達男。

 右之助だ。


 彼は缶コーヒーをラースに渡すと、適当に座るよう促した。


「サンキューな、仕事を手伝ってくれて」

「いえ、右之助さんには色々助けてもらってるんで。お安い御用ですよ」


 ラースの声音は優しかった。

 とてもオークとは思えない。


 右之助は笑いながら言う。


「貸し一つだな」

「そんな、別にいいですよ」

「馬鹿野郎。知り合いでも、そのへんはきっちりしねぇとな」


 右之助に限らず、魔界都市の住民は貸し借りを重んじる傾向にある。

 金では返しきれない恩を「貸し」にするのだ。


 ラースは腕を組んだ後、右之助に言う。


「ならその貸し、早速使わせて貰ってもいいですか?」

「いいぜ、何だ?」


 ラースは恥ずかしそうに言う。


「俺に、色男の秘訣を伝授して欲しいんです」

「……ハァ?」


 思わず首を傾げた右之助に、ラースは興奮気味に語り始めた。


「だって右之助さん滅茶苦茶モテるじゃないですか! 男の俺から見てもカッコイイですし! 是非、その秘訣を教えて欲しいなと思って!」

「あー……なんだ、そんなんでいいのか?」

「はい! お願いします!」


 深々と頭を下げるラースに右之助は苦笑しながら頷く。


「いいぜ」

「本当ですか!」

「なら今夜でも話そう。おでん屋「源ちゃん」って知ってるか?」

「知ってます!」

「21時にそこに集合だ。楽しみにしててくれ」

「はい!」


 何故か「むふふ」と笑う右之助。

 彼には妙案があった。



 ◆◆



 おでん屋「源ちゃん」は中央区の路地裏で営業している。

 危険な場所だが、店主の腕っぷしが半端ではないため普通に営業できていた。


 暖簾越しに座っている右之助とラース。


「もうそろそろ来る筈だぜ」

「え? 誰がですか?」


 首を傾げるラースに、右之助は笑う。


「スペシャルゲストだ。デスシティで「色男」と言えばアイツしかいねぇ」

「そうですねぇ」


 右之助と源次郎はニヤニヤと笑う。

 ラースはハッと唇を戦慄かせた。


「その人って、まさか……!」

「そぅら、来たぞ」


 右之助は振り返る。

 暖簾が上がり、褐色肌の美丈夫が顔を見せた。

 

「よう、集まってんな。で、コイツが……」

「ああ。色男の秘訣を教えてやってほしい」


 予期せぬゲストの登場に、ラースは腰を抜かしかけた。


「や、やや、大和さん!!?」


 ラースはまさか、あの大和が来るとは思ってもいなかった。

 



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