十三話「ダンスマカブル」
天使病の一件が終わって三日が経った。
魔界都市の様子は特に変わらない。
ロンドンで百万人以上の犠牲者が出たのにも関わらず、だ。
デスシティの中央区で。
七色のネオンが煌めく。
住人たちは足早に通りを行き交っていた。
大衆酒場ゲートのカウンター席で、大和は美味そうにラムを飲んでいる。
ネメアは彼に聞いた。
「どうだった?」
「よかったと思うぜ。俺は最後まで裏方だった」
「ほう」
ネメアは顎を擦ると、新聞の記事を見る。
「今回の一件、黄金祭壇が処理したようだ。世界に対する幻術……何時もの手口だな」
規模が大きい時によく使われる手法だ。
世界は幾度も滅亡の危機を迎えた。
その度に暗躍し、回避する者たちがいた。
「まぁ、一件落着ってことでいいんじゃねぇの?」
世界を救い慣れた男は何知らぬ顔で酒を飲む。
そして今、あの二人は──
◆◆
同時刻、アイルランドのとある田舎町で。
月明かりが男女のペアを映し出した。
漆黒の美青年と青い死美人。
美青年、斬魔は肩を落とす。
「ああクソッ、今になって後悔してるぜ」
「何を?」
死美人、えりあが聞く。
斬魔は茶髪を掻き上げた。
「デスシティの娼館に行けなかったことさ。マジで後悔してる。事前にガイドブックを買ってシュミレーションしてたのによぉ。……ああ、猫娘のチェルシーちゃん。君との熱い夜、楽しみだった」
真月を仰ぐ。
その頬に銃口が突き付けられた。
世界最大級の拳銃、デザートイーグルより尚大きい。
対天使病拳銃「Danse Macabre」。
「何か言ったかしら?」
「何も言ってません、マジで。神に誓う」
「はぁ」
呆れながら、もう一丁の拳銃を取り出す。
廃墟と化した教会を突き破り、化け物が姿を現した。
目、口、腕、脚。
あらゆる生物の部位が不規則に混ざった醜悪な怪物。
天使病──その患者。
最早性別すらわからない患者は、幾つもの口から悲鳴を上げて臨戦態勢に入った。
えりあは言う。
「行くわよ」
「おう」
濃紺と漆黒のロングコートが靡く。
斬魔は鉄鞘から刀身を抜き放つと、勢いよく地に付けた。
「さぁ、ダンスマカブルだ! 楽しもうぜ!」
羽落としの乱れ刃が焔のように煌めく。
患者の絶叫をBGMに、彼らの戦いは再び幕を開けた。
《完》
お疲れ様でした。
次回から大和メインの短編に戻ります。
感想、高評価お待ちしています。




