表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〜Past Glory〜  作者: パイナップルの妖精
外伝「天使伝」
31/58

四話「魔女狩り」


 その頃、大和は暇を持て余していた。


「長いな」


 何本目かわからない煙草に火をつける。

 ふと、背後から艶やかな声がかけられた。


「そんなに暇なら助けに行けばいいじゃないか。兄弟子殿なら余裕じゃろう?」


 大和はため息を吐く。


「助けに行ってもいいんだがな」

「なるほど、安易に助けるのもよくないか」


 大和の前に現れる女性。

 驚くほどの美女だった。


 容姿的年齢は二十代前半ほど。

 美しさとあどけなさを両立した顔立ち。

 赤眼でタレ目。片眼鏡をかけており、艶がかかった黄金色のショートヘアが目を引く。


 バストは110センチはあろう。男を悩殺する破壊的なスタイルを誇っている。


 服装は胸元を大きく開けた黒いライダースーツ、その上から赤いファーコート。

 背中には二つの巨大な大鎌(デスサイズ)を背負っていた。


 背に広がるのは先端が赤毛の九本の狐の尾。

 頭の上からは同色の耳がひょっこりと生えている。


 九尾の狐──それも格の高い存在だ。


 輪廻(りんね)


 魔界都市の殺し屋ランキング8位。

「死神代行」「真紅の魔狐」「不浄狩り」。数多の二つ名で恐れられる妖狐の超越者。

 大和とは同じ師の元で研鑽を積んだ旧知の間柄である。


 彼女は告げる。


「黄金祭壇じゃ、兄弟子殿。奴等は天使殺戮士を信じておらん」

「そういうことか」


 大和は納得すると同時に忌々しい過去を思い出す。


 魔女狩り。


 16世紀に行われた魔術士の大虐殺。


 当時、ローマ聖教が最盛期を迎える傍ら、天使病の患者も爆発的に増えていた。

 当時のローマ聖教のトップ、ローマ聖王はこれを「魔女による呪いだ」と結論付け、世界規模で魔女たちの拷問と処刑を行った。


 当時のローマ聖教の関係者は知らなかった。

 天使病が「七つの大罪」を犯した者から発症する人類に対する呪いだということを……

 魔女が信者を呪っているのではなく、七つの大罪を犯した信者が呪われているのだと。


 当時から魔女の代表格だったエリザベスは、魔女狩りを即刻やめるようローマ聖王に直訴した。

 しかし無駄だった。


 神の信者とは名ばかりの醜悪な人間たち。

 止まるどころか勢いを増す魔女狩り。


 エリザベスは絶望した。

 抑えていた力が開放され、■■■に至りかけた。


 最悪の事態になる前に大和が皆殺しにした。

 その時の怒りようがあまりにも凄まじく、「東洋の黒き鬼」と畏れられるほどだった。


 結果、ローマ聖教は崩壊。大規模な宗教改革が行われた。

 当時異教徒として監禁、拷問されていた男が新たに「カトリック」を設立し、初代ローマ教皇となった。

 プロテスタントもこの時期に設立されている。

 天使殺戮士が生まれたのもこのあたりだ。


 輪廻は大和の顔を見て申し訳なさそうにする。


「伝えておかねばと思っての。……余計なお世話じゃったか?」


 狐耳をしおらしく畳む輪廻。

 大和は首を横に振った。


「なんでお前が謝る。むしろありがとうな。伝えてくれて」

「っ」


 心が締め付けられる。

 輪廻は誤魔化すように大和に言った。


「私にも声をかけるくらいじゃ、相当嫌がっとるのぅ」

「だろうな」

「どうする? 助けに行くなら力を貸すぞ」


 輪廻の提案に、大和は首を横に振った。


「いいや、もう暫く待つ」

「いいのか?」

「ああ、これくらい乗り越えてもらわねぇと困る」


 煙草がすぐになくなる。

 大和はフィルターまで焼き切った吸い殻を足元に落とした。


 

 ◆◆



 同時刻。

 斬魔の前に一人の男が立ち塞がった。


 容姿的年齢は二十歳後半ほど。絶世の美男だ。えりあに似た冷たい美貌をしている。

 肩までかかる程度の漆黒のミディアムヘア。前髪が長いため十字架形の銀の髪留めでとめている。瞳の色は青紫。

 長身痩躯。限界まで絞られた肉体は百戦錬磨の武術家の如く。

 服装は黒のロングコートとスーツ、赤いシャツ。頭には漆黒のテンガロンハットを、首元には紅いマフラーが巻いている。

 黒革のロングブーツの踵で銀の拍車が輝いた。

 背中には鎖で縛られた巨大な金属製の棺桶を背負っている。


「はじめまして。現代の天使殺戮士」

「おいおい、マジかよ……」


 斬魔の口元からニヒルな笑みが消える。

 はじめて動揺しているところを見せた。


「俺の名はダンテ。ワケあって貴公の実力を試すことになった」

 ダンテ。

 デスシティ殺し屋ランキング7位。

「死神代行」「悪魔殺し」「ヴィランダスト」。数多の二つ名で恐れられる超越者。

 神話の時代で唯一神に直接仕えていた聖人。

 魔導書(グリモワール)「神曲」の作者。

 ダンテ・アリギエーリその人だ。


 彼は魔改造を施した大口径リボルバーを抜き、斬魔に銃口を向ける。


「さぁ、見せてくれ。天使殺戮士の実力を……不足なら、ここが墓場になるぞ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 前作よりキャラの様子がわかって個人的には読みやすい [一言] 最高に面白い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ